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    アジアの本を売る
  @外国にある書店で日本語の本を売ること・・・・
      紀伊國屋書店シンガポール本店      河合勇佑 


  A文化の翼を広げよう−和書輸出の道に布石する
       ●潟gーハン海外営業グループ 朱 剛 

外国にある書店で日本語の本を売ること

 
●紀伊國屋書店シンガポール本店
     河合勇佑 
Department Manager,
Japanese Book Merchandising Department

  「バンコクに行かない?」唐突な上司からの問いかけから7年近くたち、私はバンコクを経由して、今シンガポールで働いています。バンコクでは和書売り場の管理、シンガポールではシンガポールの商品管理と、アジア諸国にある弊社店舗の和書販売のお手伝いをしています。学生の頃は映画に文学、いわゆる西洋かぶれでした。ところが、興味の範囲外であったアジアが、今ではとても居心地が良くなっています。タイのパクチー(香草)も、シンガポールの人たちのつっけんどんな物言いも、住んだ当初はインパクトがありましたが、今となっては欠かさざる生活のスパイスです。
 帰国するのは年に1・2回、いつもはばたばたと駆け回っていて、テレビを見る時間がなかなか取れませんでした。つい最近(2014年3月)、長めの一時帰国中にテレビをぼーっと眺めていたら、外国そのものではなく、外国の人に関連する番組が増えていることに気づきました。歌を歌わせたり、空港で捕まえた人に取材をしたり。私が日本を出たときはここまでではなかったように思います。日本人の興味が外国という大きなくくりにとどまらず、人にまで目を向けている様子が垣間見られ、それがたとえ親日というわかりやすい鍵を介在しているとしても、うれしく感じました。なぜなら、(私は東南アジアを知るのみで、それ以外の国は聞き読みかじったものからの予想なのですが)世界の人たちはずっと日本と日本人のことを良く見ているからです。タイでもシンガポールでも、この冊子を手に取られている人でしたらご存知かと思われますが、日本文化は深いところで受容されています。アニメを代表とするポップカルチャーしかり、道端のバス停でかっぱえびせんの広告を見たり、スーパーマーケットの菓子売り場では日本製品が一大人気コーナーだったり。  

 また、旅行中に外国の人が操る意外な片言の日本語に、驚かされた経験をお持ちの方も多いように思います。相手のことを知ろうとする努力のわかりやすい形が、言語習得だと思います。言葉を勉強することはすなわち、その背後にある文化をそのまま体に入れることにつながるからです。最近は他の国の言葉に押されているところもありますが、日本語学習意欲は依然高く、私たちの店舗でも日本語学習書は重要な分野となっています。彼らの動機は仕事のため、アニメのため、様々です。書籍を紹介することで、その勉強をお手伝いを出来ることは、書店員として大きな喜びです。
 外国で働いていると、どきりとする瞬間もあります。シンガポールに赴任して間もない2011年の12月ごろ、シンガポール人のボスから、「日本がシンガポールに進駐して70年だから、何かフェアをやれ」という指令が下りました。勉強不足と油断から、目を白黒させてしまい、咄嗟に反応が出来ませんでした。当時、当店はシンガポールに店を構えて30年近くの歴史があり、関連書を常に意識して揃え、在庫していたので、小さいながらもフェア開催することが出来ました。今でもあの息を呑んだ時のことは忘れられません。日本で生まれたものとして、忘れてはならない(つまり勉強しておかなければならない)歴史というものが、やはりあるのです。ここで、フェアでならべた本の一部をご紹介します。「残夜行」、「チョプスイ」(以上、めこん)、「シンガポール華僑粛清」(高文研)、「シンガポールを知るための65章」(明石書店)、「日本のシンガポール占領」(凱風社)。現在の親日というイメージの背後にある、歴史の一部をご覧いただけるかと思われます。
 最近、東南アジア諸国のことをマンガで説明するといったような、手軽に各国事情を学べる本が多く出ています。簡単に読めることもあり、ビジネスパーソンを中心に弊社シンガポールの各店でも人気です。ただ、ここ一番で役に立つ知識は、お手軽本で学んだことで足を止めずに、迂遠に見えても、テーマに絞った本を読むことで身につけられるように感じます。私のタイ在住は4年間だったのですが、「仏都バンコクを歩く」(彩流社)はガイドブックとは違った町歩きの魅力を引き出してくれました。また、タイ人の知人との話では、「タイのしきたり」・「バンコクバス物語」(めこん)は、なんでそんなことまで知っているの!? という反応から話題が広がったり、「赤VS黄」・「バンコク燃ゆ」(めこん)は、当時の、そして現在に続く騒乱の理解ににとても役立ちました。この冊子に載っている本の内容を語ることが出来れば、現地の人たちの懐に飛び込む原資になります。アジアの旅行、住む際には、1冊でも結構ですので読んでおけば良い準備になると思います。また、そのような本を店頭で陳列し、出会う機会をお客様にご用意するのが、私たち海外に店舗を構える書店の役割と自任しております。そして、「アジアの本の会」各社から出版されている本が、棚を構成する重要な役割を担っていることは言うまでもありません。是非、書店に寄られる際には、アジア書の棚に足をお運びください。お役立ち本が、皆様をお待ちしております。


Kinokuniya Book Stores of Singapore Pte. Ltd.
HPアドレス
http://www.kinokuniya.com.sg/

住所
Singapore Main Store(シンガポール本店)
391 Orchard Road Ngee Ann City #03-09/10/15 Takashimaya Shopping Centre
Singapore 238872
Tel: (65)6737-5021
Fax: (65)6738-0487

Liang Court Store(リャンコート店)
177 River Valley Road #03-50 Liang Court
Singapore 179030
Tel: (65)6337-1300
Fax: (65)6338-1278

Bugis Junction Store(ブギスジャンクション店)
200 Victoria Street #03-09/12 Bugis Junction

Singapore 188021
Tel: (65)6339-1790
Fax: (65)6339-1792

Jurong Store(ジュロン店)
50 Jurong Gateway Road #04-23 JEM
Singapore 608549
Tel: (65)6430-0868
Fax: (65)6339-2868


文化の翼を広げよう
     −和書輸出の道に布石する


  ●潟gーハン海外営業グループ 朱 剛 
  
  
一昨年「アジアの本の会」の皆様と出会い、その後色々な活動を通して皆様と親しくお付き合いさせていただくことになりました。そして「中国和書巡回展示即売会」を機に、「会」の皆様の刊行物の拡販に力を入れてまいりました。
 私の仕事は主に和書を中国へ輸出することです。成長著しい中国市場の中でも、和書の販売増進に取組むことで、着実に成果を上げ喜ばしい成績を刻んできました。中国では、書籍輸入にライセンス制を採っているため、自由参入は事実上不可能です。しかも、輸入ライセンスを持っている数十社のうち、書籍の輸入をメイン業務としているのは僅か数社にしぼられます。そのため、それらの企業の特徴と企業文化を把握することが、和書の輸出に繋がっていきます。数年間の実践で、そのことが徐々に明らかとなりました。輸出拡大のためには、数少ない書籍輸入会社との密接なコミュニケーションと情報の共有に基づく連携作りが大事です。それを我われの業務に結び付けていく作業が重要であると実感させられました。この書籍輸入企業との関係構築がうまくいかないと、なかなか拡販には結びつきません。各書籍輸入会社と親密な人的関係、良好なビジネス関係を保ち、お互いに良い成績を積上げたいと思います。しかし、日本には再販制というものが存在しているため、中国の輸入業者が和書を仕入れる価格が洋書の約2割増しとなってしまいます。企業利益を最大限に求める輸入業者にとって、同じ販売努力ですむならば、利幅の薄い和書の販売に力を入れるより、洋書の方に力を傾けていくのは当然です。この現状を打開するには、新たな対策を考えることが必要となります。
 次に中国の和書市場について簡単に触れたいと思います。中国では、和書市場は店頭売りと図書館市場とに分かれています。店頭売りは北京と上海を中心に展開されており、当初在留邦人を対象とした販売が主でした。しかし、昨今は現地人の購買欲の高まりから販売対象が拡大し、現在では売上の8割超が現地中国人顧客となっています。数年前から店頭の商品構成を大幅に変え、それによって安定した成長市場へ繋がりました。さらに大都市から周辺エリアへと放射状に展開していくための布石が大事で、これからの仕事となります。
 一方の図書館市場については、「拡販成功に至るまでの道のりは遠い」というのが率直な感想でした。広大なエリアと、異なる地域の文化により、一律の対応ではうまくゆかず、それぞれの地域・特徴に合わせた多様な取り組み、対応が求められていたのです。まずは発注を誘導する条件を整えるというところからの環境整備が必要だと思われました。現地の輸入業者は図書館入札に追われ、落札されることが優先されます。過度なサービス要求に応じたことにより企業の収益が圧迫され、販売促進にかける費用も人員も不足しがちになっています。このような現状に鑑み、和書に少しでも関心を寄せてもらえるよう、業者と良好な人間関係を築き、業者に働きかけていくことがキーとなると考た訳です。そこで、読者の声と図書館の現状を把握し、サービスの質をニーズに合わせ、戦略的なステップで取り組みました。
 最重要課題を「『輸入業者による能動的な和書の拡販』に誘導する環境の整備」に置き、和書の受注を拡大するため、受発注しやすい環境の構築をファーストステップとしました。前述のように、中国の輸入業者にとって和書の取扱いは利幅が薄いため、これまで以上に彼らに期待をするより、自ら打開策を考えた方が現実的でした。数年前から次のような方法で、拡販に繋げてきました。先ず実施したのは現状調査でした。約20の大学と公共図書館を訪問し、書庫と閲覧室を見学させてもらいました。大学の図書館はどこも和書の蔵書に乏しく、また驚くほど古く、所蔵和書の殆どが古本屋の本のように黄ばみ、茶色に変色したりしていました。一部日本の団体からの寄贈が有ったり、少し新書が入ったりしている程度の研究所や図書館はかなりマシな方です。方々で色々なお話を聞き、調査を行い、輸入業者の協力を得ながら、図書館が発注しやすい環境づくりに踏み出したのでした。

 a.直接図書館を訪問
 出版社と共同で中国の大学図書館を訪問し、日本の出版事情を紹介し、価格への理解を求めてきた。数年間続けた結果、図書館司書は日本の出版の状況を理解し、価格への過度な要求を多少ではあるが和らげてきました。
b. トーハンより直接に新刊情報を送信
 ネット社会のお陰で書誌情報の入手が大幅に改善されたものの、今日でも洋書と比べて和書の書誌情報はなく、殆どは仕入れ先で作成した受注用目録を利用していました。目録に収録されたものは受注の確率は高いが、一方で選択者の見解による所が大きく、充実する分野とそうでない分野との差が生じやすいのです。そのため、研究者と司書の両者ともに、新刊の全データを受け取れるよう日本の出版社に協力を戴きながら、トーハンより直接新刊情報を送信することにしました。
 c. カタログ送付と展示即売
 長年の殆ど空白に等しい和書販売促進に一石を投じたのは、大学図書館・研究者・読者に直接商品を見せる、昨年の展示即売の企画でした。同時に出品カタログも作成し、各図書館、各研究室機関、読者へ送付いたしました。それにより購買状況が大幅に改善されました。
 中国の業者は、十数年前から既に洋書の販促に、展示即売という手法を用いて実績を上げていました。しかし、和書については相変わらず目録により受注を受け、それから海外へ発注するという方式を採っていたのです。その状況を改善するためには、書誌情報の伝達とともに、和書の実物展示即売も有効な方法であると考え、数年前から少量で試験的に実施してきました。去年は6400冊の展示即売を実施しましたが、今年は参加出版社を増やし、出展の冊数も3割増、中国約33か所で実施することが出来ました。以上の実践により、図書館側から見た発注環境は大幅に改善され、業者も受身の受注から販促へと転じ、専門の担当者または部署を設けてくれた会社も出てきています。
 d.図書館の蔵書ポリシーに合わせて、テーマ別に刊行物を紹介
 鎖国的だった中国の大学図書館においては、系統立った和書の所蔵がありません。そこで、学問体系や系統に則った買い求めに応じるため、既刊本について出版社ごとの刊行データを入手し、品切れが有った場合は古本屋で商品調達をするなどしました。納品率を優先させ、受注の100%に近い納品率を確保したことでニーズが更に高まり、一括受注が頻繁となっていきました。このように、納品先である図書館の状況を把握し、蔵書ポリシーを見極め、各学問・分野における研究の最前線の動向を出来るだけ調べ、ニーズに合ったサービスを提供したことは図書館より大いに歓迎されました。
 司書が発注に要する時間の短縮は、「発注しやすい環境づくり」の重要な要素でもあります。それを実現するためには、図書館学、書誌学など書物の判断技能のほか、セールスポイント、バイイングポイントと合致したマーケティングなども身につける必要があります。コレクション性の高いものと実用性の高いものとを識別して、図書館に商品を推薦し、受注率を高め、仕事の効率をアップさせるのです。

 現在、日中間には難問が度々起こっていますが、このような時こそ我々が立ち上がって民間での文化交流を促進すべきだと強く思います。今だからこそ、私たちの行動が求められるのだとも思います。これからも和書の輸出に力を尽くし、日中の民間の文化交流に身を投じて頑張っていこうと、改めて決意する次第です。
 文化の翼を広げ、未来へと繋げよう!



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