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私の選んだアジアの本
「アジアの本の会・全点リスト」1997年から2013年まで
(あいうえお順、敬称略、肩書き・著作は掲載当時のものです)
■年度版「私の選んだアジアの本
李泳采(い よんちぇ) 恵泉女学園大学准教授
著書:『韓流が伝える現代韓国―「初恋」からノ・ムヒョンの死まで』(梨の木舎)、『なるほど!これが韓国か』(朝日選書)ほか

@『花に水をやってくれないかい?―日本軍「慰安婦」にされたファン・グムジュの物語』 イ・ギュヒ著、保田千世訳(梨の木舎)
韓国の子どもは日本軍「慰安婦」問題をどうみているだろうか。いまだに続いている女性への性暴力問題を少女の視点から取り上げる。
A『天が崩れ落ちても生き残れる穴はある ―二つの祖国と日本に生きて』 李貞順著(梨の木舎)
つまり、人々の往来が歴史と文化を作ってきた。古代から近代への朝鮮と日本を語る最終章は我々の認識を新たにする。
B『写真と絵でみる北朝鮮現代史』キム・ソンボ他著、李泳采監訳(コモンズ)
C『制裁論を超えて―朝鮮半島と日本の〈平和〉を紡ぐ』中野憲志編(新評論)
D『ぼくが歩いた東南アジア−島と海と森と』村井吉敬著(コモンズ)

内田聖子(うちだ しょうこ)NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長
著書:『活動家一丁あがり! 社会にモノ言うはじめの一歩』(共著、NHK出版)  

@『放射能に克つ農の営み―ふくしまから希望の復興へ』菅野正寿・長谷川浩編著(コモンズ)
福島で放射能汚染最小化に励む有機農業者の苦悩と希望が綴られた作。都市生活者・消費者にこそ読んでほしい。
A『徹底検証ニッポンのODA』村井吉敬編著(コモンズ)
最近あまり報道されなくなったが日本のODA(政府開発援助)は問題が多い。抜本的改革を提言する好著。
B『3・11後の日本とアジア―震災から見えてきたもの』早稲田大学アジア研究機構編(めこん)
C『福島と生きる―国際NGOと市民運動の新たな挑戦』藤岡美恵子・中野憲志編(新評論)
D『ラオス 豊かさと「貧しさ」のあいだ―現場で考えた国際協力とNGOの意義』新井綾香著(コモンズ)

加納啓良(かのう ひろよし)東京大学名誉教授
著書:『東大講義 東南アジア近現代史』(めこん)『現代インドネシア経済史論―輸出経済と農業問題』(東京大学出版会)『インドネシアを齧る』(めこん)ほか

@『脱植民地化とナショナリズム―英領北ボルネオにおける民族形成』山本博之著(東京大学出版会)
強固な単一の「民族」が形成されることのなかった旧英領北ボルネオにおけるナショナリズムの形成と脱植民地化の過程を詳細に跡づけており、「民族」とナショナリズムの関係について示唆に富む。
A『バンコクバス物語』水谷光一著(めこん)
市内を走る8つの路線を中心に、バンコクのバス事情を体験にもとづき詳細に記述。興味深い内容で、写真が豊富なのも楽しい。バスという切り口からタイ庶民の生活ぶりがよく伝わって来る。
B『ミャンマーの国と民―日緬比較村落社会論の試み』煖エ昭雄著(明石書店)
C『インドネシア検定―ASEAN検定シリーズインドネシア検定公式テキスト』加納啓良監修(めこん)
D『マックス・ハーフェラール―もしくはオランダ商事会社のコーヒー競売』ムルタトゥーリ著、佐藤弘幸訳(めこん)

鎌澤久也(かまざわきゅうや)写真家
著書:『雲南 西南中国の人びと』(平河出版社)『玄奘の道・シルクロード』(東方出版)『シーサンパンナと貴州の旅』(めこん)『メコン街道』(水曜社)『メコン 源流をもとめて』(福音館書店)ほか

@『虹と雲―王妃の父が生きたブータン現代史』ドルジ・ワンモ・ワンチュック著、鈴木佐知子ほか訳(平河出版社)
「国民幸福度ナンバーワン」といわれて久しいブータン、王妃が父君ヤブ・ウギャン・ドジルの体験した事実を書き留めたもの。貴重な写真やタブーにも踏み込み、研究者にとっても必読の書である。
A『風景のない国・チャンパ王国―遺された末裔を追って』樋口英夫著(平河出版社)
192年〜1832年までベトナム中部沿海地方に存在した国。独自の文化を育んでいるチャンパ王国の民(チャム人)に焦点を当て、精力的に取材したドキュメント本である。
B『ミャンマー憧憬―祈り篤き人々の素顔』加藤敬著(平河出版社)
C『ベトナム検定―ASEAN検定シリーズベトナム検定公式テキスト』小高泰監修(めこん)
D『仏の里・ラオス―太田亨写真集』太田亨著(東方出版)

川瀬俊治(かわせ しゅんじ)ジャーナリスト
著書:『夜間中学設立運動―奈良からの報告』(たいまつ社)、『もう1つの現代史序説―朝鮮人労働者と「大日本帝国」(ブレーンセンター)翻訳:『言論改革』(孫錫春著、みずのわ出版)ほか

@『「いのち」の政治へ―国会体当たり奮闘記』服部良一著(東方出版)
未解決の戦後補償問題と沖縄の基地問題、脱原発に取り組んできた前衆議院議員の著。現代政治の実相と国のアジア外交のあり方を問う。
A『金大中事件最後のスクープ』古野喜政著(東方出版)
金大中事件の解明を40年近く追い求めてきた著者が、事件に関わる事実を実名を出し書き下ろした。題名どおり誰もなしえなかった「最後のスクープ」だろう。
B『渡来の原郷―白山・巫女(ムダン)・秦氏の謎を追って』前田速夫・前田憲二・川上隆志(現代書館)
C『第四版 観光コースでない 沖縄―戦跡・基地・産業・自然・先島』新崎盛暉、謝花 直美ほか(高文研)
D『玄界灘を越えた朝鮮外交官 李芸―室町時代の朝鮮通信使』嶋村初吉編著・訳(明石書店)

趙 博(ちょう ばく) 歌劇派芸人
著書:『僕は在日関西人』(解放出版社)『パギやんの大阪案内 ぐるっと一周[環状線]の旅』(高文研)

@『日本ファシズムと優性思想』藤野豊著(かもがわ出版)
「存在に値する生命、値しない生命」「優生保護法」…生命の選別や序列化の現状に本書は警鐘を打ち鳴らす。
A『新崎盛暉が説く構造的沖縄差別』新崎盛暉著(高文研)
民族差別? 人種差別? 地域差別? いや、「構造的沖縄差別」なのである。日本に住む全ての人間が読むべき本。
B『イサム・オン・ザ・ロード』秋野亥左牟著(梨の木舎)
C『にんにく・しょうが・たまねぎ・とうがらしの薬膳レシピ』パン・ウェイ著(農山漁村文化協会)
D『9条「解釈改憲」から密約まで―対米従属の正体』末浪靖司著(高文研)


林史樹(はやしふみき)神田外語大学外国語学部准教授
著書・訳書:『韓国がわかる60の風景』(明石書店)、『韓国サーカスの生活誌―移動の人類学への招待』(風響社)

@『ベトナム戦争を考える―戦争と平和の関係』遠藤聡著(明石書店)
1人の著者が1つの対象だけを追って書いた本は面白い。戦争の記憶の諸相を通して平和を問いかけた苦心作。
A『看護婦たちの南方戦線―帝国の落日を背負って』大谷渡著(東方出版)
川島繁子(黄玉緞)をはじめ、祖国でない祖国を愛して裏切られた看護婦らの生きた世界を丁寧に描いた作品。
B『赤紙と徴兵―105歳 最後の兵事係の証言から』吉田敏浩著(彩流社)
C『タブー―パキスタンの買春街で生きる女性たち』フォージア・サイード著、太田まさこ監訳(コモンズ)
D『ムラの国際結婚再考―結婚移住女性と農村の社会変容』武田里子著(めこん)

前田憲二(まえだけんじ)映画監督。NPO法人ハヌルハウス代表理事

著書:『渡来の祭り、渡来の芸能』(岩波書店)、『日本のまつり―どろんこ取材記』(造形社)『渡来の原郷―白山・巫女(ムダン)・秦氏の謎を追って』共著(現代書館)他。

@『江戸の金山奉行 大久保長安の謎』川上隆志著(現代書館)
秦氏の末裔、大久保長安。その豪放磊落で波瀾に満ちた人生をミステリアスにスピーディに抉り出す。
A『母たちの済州島―姜萬保写真集』姜萬保・写真/任栽賢・文(東方出版)
島民たちの暮らしを根底から支えてきたオモニそしてハルモニたち。その人々を愛で包み込む。
B『ある弁護士のユーモア』韓勝憲著/舘野ス訳(東方出版)
C『司馬遼太郎の歴史観―その「朝鮮観」と「明治栄光論」を問う』中塚明著(高文研)
D『ろうそくデモを越えて―韓国社会はどこに行くのか』川瀬俊治・文京洙編(東方出版)

松竹伸幸(まつたけ のぶゆき)日本平和学会会員(専門は日本外交論)
著書:『これならわかる日本の領土紛争』(大月書店)『靖国問題と日本のアジア外交』(大月書店)

@『拉致2―左右の垣根を超える対話集』蓮池透・鈴木邦男ほか(かもがわ出版)
「制裁より対話を」と声をあげた被害者家族会前事務局長の勇気の意味が立場の違いを超えた対話で浮き彫りに。
A『重慶爆撃とは何だったのか―もうひとつの日中戦争』戦争と空爆問題研究会編(高文研)
日本が世界最初に行った無差別爆撃の本質が明らかに。現在の米軍アフガン作戦に継承され今日的な意味がある。
B『新装版 世界の子ども兵』R・ブレッド/M・マカリン著、渡井理佳子訳(新評論)
C『イラクで私は泣いて笑う―NGOとして、ひとりの人間として』酒井啓子編著(めこん)
D『世界へ翔ぶ―国連機関をめざすあなたへ』玉城英彦著(彩流社)

丸川知雄(まるかわ・ともお) 東京大学社会科学研究所教授
著書・訳書:『現代中国の産業』(中央公論新社)、『「中国なし」で生活できるか』(PHP研究所)

@『現代中国の歴史―両岸三地100年のあゆみ』久保亨・高田幸男・井上久士・土田哲夫(東京大学出版会)
過去30年ほどの間に近現代の中国像も大きく変わった。昔のことを学ぶための教科書は新しいほうがいい。
A『火の料理 水の料理―食に見る日本と中国』木村春子著(農山漁村文化協会)
中国料理の調理法から料理にまつわる言語まで、日本と比較しながら、豊富な写真を交えて紹介する。
B『史料集 関東大震災下の中国人虐殺事件』今井清一監修・仁木ふみ子編(明石書店)
C『日中関係史1972-2012T政治』高原明生・服部龍二編(東京大学出版会)
D『中国の経済発展と資源配分1860-2004』袁堂軍著(東京大学出版会)

村田 武(むらたたけし)愛媛大学社会連携推進機構教授
著書:『食料主権のグランドデザイン』(農山漁村文化協会)、『脱原発・再生可能エネルギーとふるさと再生』(筑波書房)

@『条件不利地域農業 日本と韓国』品川優著(筑波書房)
条件不利地域農業の担い手問題と直接支払制度について、日本と韓国との優れた比較研究。
A『TPPと日本の選択―「投資立国」化と「歴史的円高」の中で考える』三島徳三著(筑波書房)
健全な国民主義を基礎に、反TPPの幅広い国民戦線の形式を提言した学習テキスト。
B『台湾の農村協同組合』梁連文・朴紅著(筑波書房)
C『恐怖の契約 米韓FTA―TPPで日本もこうなる』宋基昊著(農山漁村文化協会)
D『TPPと日本の論点』農文協編(農山漁村文化協会)

吉田敏浩(よしだ としひろ)ジャーナリスト
著書:『赤紙と徴兵』(彩流社)『ダイドー・ブガ 北ビルマ、カチン州の天地人原景』(彩流社)ほか

@『ビルマ独立への道―バモオ博士とアウンサン将軍』根本敬著(彩流社)
ビルマの近・現代史に刻まれた政治家二人の足跡を丹念に辿り、日本と関わる歴史の深部へと考察を導く書。
A『いつかロロサエの森で―東ティモール・ゼロからの出発』南風島渉著(コモンズ)
独立を求めて苦闘した東ティモールの人びとの生と死と希望を、彫りの深い表現の文と写真で記した「紙碑」。
B『瀾滄江怒江伝』黄光成著/大澤香織訳(めこん)
C『ゾウと巡る季節―ミャンマーの森に息づく巨獣と人びとの営み』大西信吾著(彩流社)
D『サラワクの風―ボルネオ・熱帯雨林に暮らす人びと』内田道雄著(現代書館)

廖赤陽(りょう せきよう)武蔵野美術大学教授
著書:『大潮涌動:改革開放与留学日本』(主編、社会科学文献出版社)、『気功で読み解く老子』(春秋社)ほか

@『身体感覚で『論語』を読みなおす。古代中国の文字から』安田登著(春秋社)
生きるための生きた論語体験。心身の実践で受け取る東アジア共通の文化因子。
A『都市的世界/コミュニティ/エスニシティ―ポストメトロポ リス期の都市エスノグラフィ集成』 渡戸一郎・広田康生・田嶋淳子編著(明石書店)
在日外国人をはじめとする東アジアにおけるトランスナショナル的な移動と交流の実態を描き出す一冊。
B『創造する東アジア 文明・文化・ニヒリズム』小倉紀蔵著(春秋社)
C『中国問題 キ−ワードで読み解く』毛里和子・園田茂人編(東京大学出版会)
D『気・修行・身体』湯浅泰雄著(平河出版社)

ロイチョウドゥーリ・ジョイ&邦子(くにこ) インド料理研究家・カレー店主
著書:『インド家庭料理入門 アーユルヴェーダで食べる朝昼夕晩』(農山漁村文化協会)、『奇跡のスパイス ターメリック料理レシピ集』(アスペクト)ほか

@『インドの生命科学―アーユルヴェーダ』上馬場和夫・西川眞知子著(農山漁村文化協会)
自然との共生を説く生命観や死生観は、時代を越えて胸に迫る。伝統医学の実践法がこの一冊に凝縮されている。
A『アジア周縁から見たアメリカ 1850〜1950年』林義勝、寺内威太郎他(彩流社)
同じアジアで暮らす人間として、記憶に留めておかねばならない歴史。
B『テロの帝国 アメリカ―海賊と帝王』ノーム・チョムスキー著、海輪由香子ほか訳(明石書店)
C『インドのごはん(絵本世界の食事2)』銀城康子著(農山漁村文化協会)
D『世界の食文化8インド』小磯千尋・小磯学著(農山漁村文化協会)

●渡辺龍也(わたなべ たつや)東京経済大学現代法学部教授
著書:『フェアトレード学―私たちが創る新経済秩序』(新評論)、『「南」からの国際協力―バングラデシュ・グラミン銀行の挑戦』(岩波書店)ほか

@『99%のための経済学【教養編】誰もが共生できる社会へ』佐野誠著(新評論)
99%の人々を反目させあい暴走する新自由主義。洗脳・分断を拒み連帯して共生社会を創る必要を平易に説く。
A『脱グローバル化―新しい世界経済体制の構築へ向けて』ウォールデン・ベロー著、戸田清訳(明石書店)
南の視点に立って米国主導のグローバリゼーションを糺明し、地域と多様性に立脚した脱グローバル化を訴える。
B『貧富・公正貿易・NGO―WTOに挑む国際NGOオックスファムの戦略』オックスファム・インターナショナル著、渡辺龍也訳(新評論)
C『安ければ、それでいいのか!?』山下惣一編著(コモンズ)
D『TPPと日本の論点』農文協編(農山漁村文化協会)
■年度版「私の選んだアジアの本
【2012年】私の選んだアジアの本

●赤木攻(あかぎ おさむ)大阪外国語大学名誉教授
著書:『続・タイ農村の構造と変動――15年の軌跡』(共著、勁草書房)、『〈復刻版〉タイの政治文化――剛と柔』(エヌ・エヌ・エー)ほか

@『タイのしきたり』中島マリン(めこん)
タイ人の生活の中の考えや慣習を、日本のそれと比較しながらこれほどまでにみごとに説明した本があっただろうか。必読。
A『地図がつくったタイ――国民国家誕生の歴史』トンチャイ・ウィニッチャクン(明石書店)
タイという国の概念を考える上で一度は読んでおくべき書。
B『タイ事典』日本タイ学会編(めこん)
C『イサーンの旅』梶原俊夫(めこん)
D『タイ・黄衣のゆらぎ――戒律の知恵』樋口英夫写真、杉江幸彦文(平河出版社)

●亜洲奈みづほ(あすな みづほ)アジア系女流作家
著書:『現代台湾を知るための60章〈第2版〉』(明石書店)、『「アジアンの世紀」――新世代が創る越境文化』(中央公論新社)ほか

@『韓国の歴史〈新版第2版〉――国定韓国高等学校歴史教科書』大槻健・君島和彦・申奎燮訳(明石書店)[在庫僅少]
歴史認識とは、こんなにも隣国と違うものなのだ――日韓の歴史問題を読みとくうえで必見の、韓国の国定歴史教科書。隣国の見る植民地時代というものを日本人も知っておきたい。
A『台湾――分裂国家と民主化』若林正丈(東京大学出版会)
これぞ台湾現代政治史の定本。かつて東京大学の台湾政治の講義でテキストになったこともある。台湾のみならず東アジアの民主化プロセスを理解するうえでも役だつ1冊。
B『シンガポールを知るための62章〈第2版〉』田村慶子編著(明石書店)
C『パキスタンを知るための60章』広瀬崇子・山根聡・小田尚也編著(明石書店)
D『未来をひらく歴史――東アジア3国の近現代史〈第2版〉』日中韓3国共通歴史教材委員会編(高文研)

●安倍泰夫(あべ やすお)NGOカトマンドゥ代表
著書:『ネパールの山よ緑になれ』(春秋社)

@『虹色の空――〈カンボジア虐殺〉を超えて 1975−2009』久郷ポンナレット(春秋社)
ポル・ポト派によってプノンペンから10歳で農村へ追放、両親家族6人を亡くすも「色のない空」を生き抜く手記。
A『ネパールの政治と人権――王政と民主主義のはざまで』マンジュシュリ・タパ著、萩原律子・河村真宏監訳(明石書店)
1996年から始まった毛沢東派との内戦や、01年の王族虐殺事件。激動の時代をネパール知識人の眼で書く。
B『マハーバーラタの世界』前川輝光(めこん)
C『ネパールの少女買春――女性NGOからのレポート』ABCネパール編、矢野好子訳(明石書店)
D『ダライ・ラマ宗教を語る』ダライ・ラマ14世テンジン・ギャツォ著、三浦順子訳(春秋社)

●今田真人(いまだ まさと)フリーの経済ジャーナリスト
著書:『円高と円安の経済学――産業空洞化の隠された原因に迫る』(かもがわ出版)

@『朝鮮王妃殺害と日本人――誰が仕組んで、誰が実行したのか』金文子(高文研)
日本帝国主義の朝鮮侵略・植民地化の象徴的事件、「朝鮮王妃殺害事件」の史料に基づく最新の分析書。
A『私が愛した東京電力――福島第一原発の保守管理者として』蓮池透(かもがわ出版)
2009年まで東京電力の原発関係幹部社員であった著者による原発関連部門業務の内部告発。
B『これだけは知っておきたい日露戦争の真実――日本陸海軍の〈成功〉と〈失敗〉』山田朗(高文研)
C『朝鮮人軍隊慰安婦――韓国女性からの告発』金文淑(明石書店)
D『TPP反対の大義』農文協編(農山漁村文化協会)

●大谷渡(おおや わたる)関西大学文学部教授
著書:『台湾と日本――激動の時代を生きた人びと』(東方出版)、『看護婦たちの南方戦線――帝国の落日を背負って』(東方出版)ほか

@『日台関係史――1945−2008』川島真・清水麗・松田康博・楊永明(東京大学出版会)
敗戦から63年間、日本の立ち位地と素顔が台湾の内政・外交との関係から浮かび上がる。戦後日台関係の基本書。
A『明日を紡ぐラオスの女性――暮らしの実態と変化のゆくえ』風野寿美子(めこん)
穏やかなラオスの人びと。母系社会のラオスの女性。首都と田舎の暮らしの変化を追う視点で描いた旅行記。
B『中国・海南島――焼畑農耕の終焉』篠原徹編(東京大学出版会)
C『韓国の働く女性たち』島本みどり・水谷啓子・森田園子・油谷純子(東方出版)
D『武器を持たない戦士たち――国際赤十字』H.M.エンツェンスベルガー編、小山千早訳(新評論)

●川村湊(かわむら みなと)文芸評論家、法政大学教授
著書:『福島原発人災記――安全神話を騙った人々』(現代書館)、『原発と原爆――「核」の戦後精神史』(河出書房新社)ほか

@『渡来の原郷――白山・巫女・秦氏の謎を追って』前田速夫・前田憲二・川上隆志(現代書館)
「アジアの本」というより、アジアとしての日本の本。日本民俗学の欠落部分を補う。
A『すべての民族の子(上・下)』プラムディヤ・アナンタ・トゥール著、押川典昭訳(めこん)
インドネシアのことはプラムディヤから始めるべきである。
B『道教(1〜3)』福井康順・山崎宏・木村英一・酒井忠夫監修(平河出版社)
C『金洙暎全詩集』金洙暎著、韓龍茂・尹大辰訳(彩流社)
D『中国語圏文学史』藤井省三(東京大学出版会)

●久保田義喜(くぼた よしき)前明治大学教授
訳書:『インドの酪農開発――果てしなき夢』ヴェルガーゼ・クーリエン(筑波書房)、『アジア農村発展の課題――台頭する四カ国一地域』(編著、筑波書房)ほか

@『経済自由化のゆくえ』絵所秀紀編(東京大学出版会)
1990年代初頭にインドにおいて本格化した経済自由化の動きを12名の研究者が多角的視点から解明した。
A『インド社会・文化史論――「伝統」社会から植民地的近代へ』小谷汪之(明石書店)
インドの社会・文化がイギリス植民地支配のもとで変容して行った過程を法制・司法関係文書から解明した。
B『FTAと食料――評価の論理と分析枠組』鈴木宣弘編(筑波書房)
C『里地里山文化論(上)――循環型社会の基層と形成』養父志乃夫(農山漁村文化協会)
D『環境・人口問題と食料生産――調和の途をアジアから探る』渡部忠世・海田能宏編著(農山漁村文化協会)
●小池洋一(こいけ よういち)立命館大学経済学部教員
著書:『地域経済はよみがえるか――ラテン・アメリカの産業クラスターに学ぶ』(共編、新評論)、『現代ラテンアメリカ経済論』(共編著、ミネルヴァ書房)ほか

@『「交流の時」を迎える中越国境地域――中国広西チワン族自治区の北部湾開発』関満博・池部亮編(新評論)
中国開発の前線は「辺境」の広西チワン族自治区にまで及んでいる。産業化と国際化を開発の現場から描く。
A『ラオス 豊かさと「貧しさ」のあいだ』新井綾香(コモンズ)
開発の波は後発国ラオスにも押し寄せているが、NGO活動の経験から開発が貧困の根源になっている点を批判。
B『アジア市場を拓く――小売国際化の100年と市場グローバル化』川端基夫(新評論)
C『中国―ASEAN経済圏のゆくえ――汎北部湾経済協力の視点から』細川大輔(明石書店)
D『ミャンマー概説』伊東利勝編(めこん)

●佐藤大介(さとう だいすけ)共同通信社(元ソウル支局記者)

@『韓国ワーキングプア 88万ウォン世代』禹ル熏・朴権一著、金友子ほか訳(明石書店)
韓国の「競争社会」の現状と、若者たちの「労働疎外」を広く知らしめた一冊。非正規職の平均月収からとった「88万ウォン世代」は、韓国で流行語にもなった。韓国社会の現状を知る上での基礎的な必読書。
A『朝鮮王妃殺害と日本人――誰が仕組んで、誰が実行したのか』金文子(高文研)
明成皇后殺害とは、どういった背景で起きたのか。歴史的資料を丹念に読み込み、取材を重ねた筆者が、朝鮮の植民地支配を進める日本の意図を解き明かしていく。日韓の近代史関連の名著。
B『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』中塚明(高文研)
C『マルセ太郎 記憶は弱者にあり――喜劇・人権・日本を語る』森正編著(明石書店)
D『検証 日朝関係60年史』和田春樹・高崎宗司(明石書店)

●鈴木晶(すずき あきら)高校教諭・大学非常勤講師
著書:『旅行ガイドにないアジアを歩く マレーシア』(共著、梨の木舎)、『神奈川県の戦争遺跡』(共著、大月書店)

@『福澤諭吉のアジア認識――日本近代史像をとらえ返す』安川寿之輔(高文研)
脱亜論という魔術が解けない現代日本には、「歴史神話」への再検証が不可欠。
A『わたしは、とても美しい場所に住んでいます――暮らしの隣ですすむ軍事化』基地にNO!アジア・女たちの会編(梨の木舎)
人間らしく生きるためにも、不可視化する足元の軍事化をはじめ政治的な「場所」に気づく感覚を養いたい。
B『からゆきさんと経済進出――世界経済の中のシンガポール―日本関係史』清水洋・平川均(コモンズ)
C『アジア・ヒューマンライツ――アジア人権基金の歩み』土井たか子・村井吉敬・アジア人権基金編(梨の木舎)
D『写真で見る在日コリアンの100年――在日韓人歴史資料館図録』在日韓人歴史資料館編著(明石書店)

●津田邦宏(つだ くにひろ)朝日新聞元アジア総局長
著書:『香港返還』(杉山書店)、『観光コースでない香港――歴史と社会・日本との関係史』(高文研)ほか

@『血と涙のナガランド――語ることを許されなかった民族の物語』カカ・D・イラル著、木村真希子・南風島渉訳(コモンズ)
インドとビルマの「国境」に生きるナガ民族の歴史と独立への希求は、国境、国家とは何かを問いかけてくる。
A『ぼくが歩いた東南アジア−島と海と森と』村井吉敬(コモンズ)
著者の33年間の写真326枚に人々の暮らしがあった。「いまなお夢うつつのなか」のアジアを想う文が重なる。
B『観光コースでない台湾――歩いて見る歴史と風土』片倉佳史(高文研)
C『観光コースでないソウル――歴史の息吹を感じる旅』佐藤大介(高文研)
D『植民地主義の暴力――「ことばの檻」から』徐京植(高文研)

●出口一幸(でぐち かずゆき)コンサルタント・翻訳者
訳書:『異域 中国共産党に挑んだ男たちの物語』柏楊(第三書館)

@『写真集ビルマの子供たち』山本宗輔(第三書館)
示唆に富む数々の写真が、この国に住む心優しき人々に襲いかかる現実を、深く、立体的に訴えかけてくる。
A『観光コースでない台湾――歩いて見る歴史と風土』片倉佳史(高文研)
身近な「国」、台湾と日本との関わり、つい見過ごしてしまう小さな史実を、綿密な調査で拾い上げた力作。
B『忘れられた人々――中国精神病人的生存状況』馬小虎撮影・文、張大克文、李丹訳(第三書館)
C『負けるな!在日ビルマ人』シュエバ・田辺寿夫(梨の木舎)
D『タイ鉄道旅行』岡本和之(めこん)

●パン・ウェイ(ぱん うぇい)料理家・中国食養生研究家
著書:『にんにく・しょうが・ねぎ・とうがらしの薬膳レシピ』(農山漁村文化協会)、『女のからだには、薬膳が効く。』(マガジンハウス)、『元気とキレイの薬膳的暮らし』(PHP研究所)、『食養生読本――中国三千年??(ナイナイ)の知恵』(講談社)ほか

@『中国農村改革の父 杜潤生自述――集団農業から家族経営による発展へ』杜潤生著、白石和良・菅沼圭輔・浜口義曠訳(農山漁村文化協会)
農村部の安定を抜きにして13億の人口を抱える中国に未来は無い。農村解放に尽くした著者の言葉は重い。
A『北の彩時記――アイヌの世界へ』計良光範(コモンズ)
豊かな土地に根ざしながら繋がれてきたことばと文化。その伝承がか細くなっているのは本当に切ない。
B『創造する東アジア――文明・文化・ニヒリズム』小倉紀蔵(春秋社)
C『漢字の文明 仮名の文化――文字からみた東アジア』石川九楊(農山漁村文化協会)
D『中国少数民族 農と食の知恵』大石惇・森誠編著(明石書店)

●広中一成(ひろなか いっせい)三重大学非常勤講師
著書:『「華中特務工作」秘蔵写真帖――陸軍曹長 梶野渡の日中戦争』(梶野渡語り、彩流社)

@『日中歴史認識――「田中上奏文」をめぐる相剋 1927−2010』服部龍二(東京大学出版会)
日中関係を揺るがした「田中上奏文」問題を学術的に論じた一冊。これを読まずして「田中上奏文」は語れない。
A『赤紙と徴兵――105歳 最後の兵事係の証言から』吉田敏浩(彩流社)
一兵事係が残した書類と証言から、日本の徴兵制の一端を解明した書。我々はこの事実に目を背けてはならない。
B『盧溝橋事件の研究』秦郁彦(東京大学出版会)
C『中国の歴史を知るための60章』並木頼壽・杉山文彦編著(明石書店)
D『満洲分村移民の昭和史――残留者なしの引揚げ 大分県大鶴開拓団』渡辺雅子(彩流社)

■年度版「私の選んだアジアの本
【2011年】私の選んだアジアの本

李泳采(イ ヨンチェ)恵泉女学園大学教員
著書:『韓流がつたえる現代韓国』(梨の木舎)、『なるほど!これが韓国か』(共著、朝日新聞社)ほか
@『旅行ガイドにないアジアを歩く――マレーシア』高嶋伸欣・関口竜一・鈴木晶(梨の木舎)
日本とマレーシアをつなげるガイドブック。過去と現在は人々の生活空間のなかで、連続的に記憶されている。
A『写真と絵で見る北朝鮮現代史』金聖甫・奇光舒・李信K著、韓興鉄訳(コモンズ)
いま北朝鮮で何が起きているのか。北朝鮮の樹立過程から金正恩登場以降の行方がわかりやすく理解できる。
B『朝鮮開化思想とナショナリズム――近代朝鮮の形成』月脚達彦(東京大学出版会)
C『東アジア冷戦と韓米日関係』李鍾元(東京大学出版会)
D『北朝鮮の日常風景』石任生撮影、安海龍文、韓興鉄訳(コモンズ)

内海愛子(うつみ あいこ)大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員教授
著書:『日本軍の捕虜政策』(青木書店)、『キムはなぜ裁かれたのか』(朝日新聞出版)ほか
@『写真と絵で見る北朝鮮現代史』金聖甫・奇光舒・李信K著、韓興鉄訳(コモンズ)
A『北朝鮮の日常風景』石任生撮影、安海龍文・韓興鉄訳(コモンズ)
報道では見えない、伝わらない、情報が制限された国・北朝鮮についての想像力をかきたてられる写真集。
B『ぼくの歩いた東南アジア――島と海と森と』村井吉敬(コモンズ)
破壊された街並み、朽ち果てた碑など激しく変化していく東南アジアを30年以上にわたって記録した写真集。
C『写真で見る在日コリアンの100年――在日韓人歴史資料館図録』在日韓人歴史資料館編(明石書店)
D『韓流がつたえる現代韓国――「初恋」からノ・ムヒョンの死まで』イ・ヨンチェ(梨の木舎)

小泰(おだか たい)拓殖大学言語文化研究所講師(専門はベトナム地域研究)
著書:『ベトナム人民軍隊』(暁印書館)、『ベトナム検定公式テキスト』(監修、めこん)ほか

@『ブラザー・エネミー――サイゴン陥落後のインドシナ』ナヤン・チャンダ著、友田錫・滝川広水訳(めこん)
インドシナ地域で交錯する国際関係と国益をめぐる思惑、民族主義がリアルかつ詳細に記録されている。
A『ベトナムの食えない面々』 木村聡(めこん)
ドイモイが庶民生活に浸透した90年代半ばのベトナムの実情がカメラとペンを通じて手に取るように感じられる。
B『ビルマ民主化運動1988』田辺寿夫(梨の木舎)
C『日本のインドネシア人社会――国際移動と共生の課題』奥島美夏編著(明石書店)
D『戦争遺跡は語る』戦争遺跡保存全国ネットワーク編(かもがわ出版)

北出俊昭(きたで としあき)前明治大学農学教授
著書:『日本農政の50年』(日本経済評論社)、『コメから見た日本の食料事情』(筑波書房)ほか

@『市場経済下ベトナムの農業と農村』長憲次(筑波書房)
ドイモイ改革後の農業と農村の変化と実態が、発展的側面と停滞的側面から地帯的に究明されている。
A『WTOと中国農業』阮蔚(筑波書房)
WTO加盟に伴う農産物貿易と食料市場の変化および農業労働力と労働生産性など競争力強化策を検討する。
B『日本帝国主義下の朝鮮経済』金洛年(東京大学出版会)
C『アジア農村発展の課題――台頭する四カ国一地域』久保田義喜編著(筑波書房)
D『TPP反対の大義』農文協編」(農山漁村文化協会)

権香淑(クォン ヒャンスク)早稲田大学アジア研究機構客員研究員
著書:『移動する朝鮮族』(彩流社)、『アジア学のすすめ〈第2巻〉アジア社会・文化論』(共著、弘文堂)

@『満洲分村移民の昭和史――残留者なしの引揚げ 大分県大鶴開拓団』渡辺雅子(彩流社)
満洲分村移民としての経験を当事者のライフヒストリーから丹念に描き、昭和史の一端を浮き彫りにした良書。
A『韓流がつたえる現代韓国――「初恋」からノ・ムヒョンの死まで』イ・ヨンチェ(梨の木舎)
現実そのものがドラマだと言われる韓国現代史。その真っ只中に生きた人々の息づかいが行間から溢れる一冊。
B『沖縄・戦後子ども生活史』野本三吉(現代書館)
C『漫画に描かれた日本帝国――「韓国併合」とアジア認識』韓相一・韓程善著、神谷丹路訳(明石書店)
D『フェアトレード学――私たちが創る新経済秩序』渡辺龍也(新評論)

高秀美(コ スミ)編集者・インタビュアー
著書:『韓国併合100年の現在(いま)』(共著、東方出版)

@『「在日」民族教育の夜明け――1945年10月〜48年10月』李殷直(高文研)
現在、朝鮮高校は無償化から除外されている。民族教育の原点とともに、その弾圧の歴史が浮き彫りに。
A『ろうそくデモを越えて――韓国社会はどこへ行くのか』川瀬俊治・文京洙編(東方出版)
2008年にソウル市庁前をうめつくした100万人ろうそくデモ。その背景となった韓国社会の底流には何があるのか。
B『死刑台から見えた二つの国』内海愛子・BC級戦犯を支える会編(梨の木舎)
C『朝鮮王妃殺害と日本人――誰が仕組んで、誰が実行したのか』金文子(高文研)
D『NHKドラマ「坂の上の雲」の歴史認識を問う――日清戦争の虚構と真実』中塚明・安川寿之輔・醍醐聰(高文研)

神藤雅子(しんとう まさこ)ナーデルマン・ハープ奏者、ハープ・セラピスト
訳書:『ハープ・セラピー』ステラ・ベンソン(春秋社)、CD:『よみがえるナーデルマン・ハープ』(コジマ録音 ALM Records)

@『心が安らぐチベット瞑想入門』ラマ・クリスティー・マクナリー著、桶谷省吾訳(春秋社)
米国人尼僧によるチベット瞑想への道案内。指針となる教えを説きながら、様々な瞑想法を実践に即して提示。
A『音の神秘――生命は音楽を奏でる』ハズラト・イナーヤト・ハーン著、土取利行訳(平河出版社)
類いないヴィーナ奏者でもあったスーフィーの伝道師が、あらゆる生命の背後に潜む「宇宙の調和の法則」を語る。
B『小説ブッダ――いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン著、池田久代訳(春秋社)
C『ダライ・ラマ 愛と非暴力〈普及版〉』ダライ・ラマ14世テンジン・ギャツォ著、三浦順子訳(春秋社)
D『東の太陽、西の新月――日本・トルコ友好秘話「エルトゥールル号」事件』山田邦紀・坂本俊夫(現代書館)

徐京植(ソ キョンシュク)作家、東京経済大学教員
著書:『ディアスポラ紀行』(岩波書店)、『〈評論集〉植民地主義の暴力』(高文研)ほか

@『梶村秀樹著作集』(全6巻+別巻)梶村秀樹(明石書店)
「梶村さんが存命だったら……」と今も考える。日朝両民族がいかに向かい合うべきか――日本人必読の文献。
A『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』中塚明(高文研)
平易な記述で教科書に最適の入門書。右派だけでなく自称リベラル派が好きな司馬史観も根本的に批判する名著。
B『ディアスポラから世界を読む――離散を架橋するために』臼杵陽監修、赤尾光春・早尾貴紀編著(明石書店)
C『金洙暎全詩集』韓龍茂・尹大辰訳(彩流社)
D『日本軍「慰安婦」関係資料集成』鈴木裕子・山下英愛・外村大編(明石書店)

友寄英隆(ともより ひでたか)前『経済』編集長
著書:『変革の時代、その経済的基礎』(光陽出版社)、『「国際競争力」とは何か』(かもがわ出版)

@『中東・北アフリカのディアスポラ』駒井洋監修、宮治美江子編著(明石書店)
世界のディアスポラ(離散民)についての画期的な叢書の第三巻。グローバルなヒトの移動の多様な実態を解明。
A『幻想の抑止力――沖縄に海兵隊はいらない』松竹伸幸(かもがわ出版)
鳩山前首相が変心の口実にした「抑止力論」を基礎から解説。それに代わる北東アジア集団安全保障構想も提起。
B『東アジアにおける少子高齢化と持続可能な発展――日中韓3国の比較研究』駄田井正・原田康平・王橋編(新評論)
C『沖縄・ハワイ コンタクト・ゾーンとしての島嶼』石原昌英、喜納育江、山城新編(彩流社)
D『TPP反対の大義』農文協編(農文協)

中島成久(なかしま なりひさ)法政大学国際文化学部教授
著書:『言挙げする農民たち――インドネシアの土地紛争』(創成社)、『森の開発と神々の闘争〈改訂増補版〉』(明石書店)

@『東南・南アジアのディアスポラ』駒井洋監修、首藤もと子編著(明石書店)
「ディアスポラ」を考える上での必読文献のシリーズだが、ディアスポラとは何かという根本問題はやや散漫。
A『スハルト体制のインドネシア――個人支配の変容と一九九八年政変』増原綾子(東京大学出版会)
東南アジアで最も民主化の進んだ国といわれるインドネシアは、スハルト体制を克服したのか、しなかったのか。
B『フェアトレード学――私たちが創る新経済秩序』渡辺龍也(新評論)
C『チャイニーズネスとトランスナショナルアイデンティティ――グローバリゼーションと東アジア社会の新構想』永野武編著(明石書店)
D『多民族化社会・日本――〈多文化共生〉の社会的リアリティを問い直す』渡戸一郎・井沢泰樹編著(明石書店)

野田峯雄(のだ みねお)ジャーナリスト
著書:『破壊工作〈増補・新版〉』(宝島社)、『「プリンセス・マサコ」の真実』(第三書館)ほか

@『テロの帝国アメリカ――海賊と帝王』ノーム・チョムスキー著、海輪由香子ほか訳(明石書店)
揺れるアラブ。そこに連綿とコミットする超大国アメリカ。両者を対照しつつ「テロ」なる言葉の虚妄を剥ぐ。
A『マフフーズ・文学・イスラム――エジプト知性の閃き』八木久美子(第三書館)
イスラムの伝統と近代化の相克をみつめたノーベル賞作家マフフーズの作品を解析し、今日のアラブを示唆。
B『日朝条約への市民提言――歴史的責任の清算と平和のために』石坂浩一・田中宏・山田昭次(明石書店)
C『イスラーム原理主義の「道しるべ」――発禁“アルカイダの教本”全訳+解説』サイイド・クトゥブ著、岡島稔・座喜純訳・解説(第三書館)
D『アジアからみた「大東亜共栄圏」〈増補版〉』内海愛子・田辺寿夫編著(梨の木舎)

真崎克彦(まさき かつひこ)清泉女子大学地球市民学科准教授
著書:『支援・発想転換・NGO』(新評論)、『東南アジア・ 南アジア 開発の人類学』(共編著、明石書店)ほか

@『国家・社会変革・NGO――政治への視線/NGO運動はどこへ向かうべきか』藤岡美恵子・越田清和・中野憲志編(新評論)
社会変革志向から離れ、現状維持に手を貸しかねない国際協力NGOに自省を促す。
A『〈評論集〉植民地主義の暴力――「ことばの檻」から』徐京植(高文研)
植民地主義は過ぎ去ってないことを、日本や韓国での生活体験を通して明らかにする。
B『貧富・公正貿易・NGO――WTOに挑む国際NGOオックスファムの戦略』オックスファム・インターナショナル著、渡辺龍也訳(新評論)
C『国際協力専門員――技術と人々を結ぶファシリテータたちの軌跡』林俊行編(新評論)
D『NGOの選択――グローバリゼーションと対テロ戦争の時代』日本国際ボランティアセンター(JVC)(めこん)

山内宥厳(やまのうち ゆうげん)楽健法研究会主宰、東光寺住職
著書:『二人ヨーガ楽健法』(楽健法研究会本部発行、農文協発売)、『楽健寺酵母でパンを焼く』(農文協)

@『東洋思想の現代的意義』黄心川著、本間史訳(農文協)
東洋思想は現代の混迷に一筋の道を示す。人間が返るべき初心が東洋思想に見いだせる。
A『チベットを知るための50章』石濱裕美子編著(明石書店)
中国の干渉しなかったチベットはいまでは取り返すすべはないが、そこにあった何かは知らねばならない。
B『沖縄・戦後子ども生活史』野本三吉(現代書館)
C『日本神道の現代的意義』王守華著、本間史訳(農文協)
D『金洙暎全詩集』金洙暎著、韓龍茂・尹大辰訳(彩流社)

米田綱路(よねだ こうじ)図書新聞スタッフライター
著書:『モスクワの孤独』(現代書館)、『ジャーナリズム考』(凱風社)、『抵抗者たち』(編、講談社)ほか

@『暴かれた真実 NHK番組改ざん事件――女性国際戦犯法廷と政治介入』「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)編、西野瑠美子・東海林路得子責任編集(現代書館)
ジャーナリズム史に残る改竄事件を関係者や弁護士、研究者ら二十数人が検証。報道の自由の意味を問う。
A『評伝 尹奉吉――その思想と足跡』金学俊著、李e恒編、朴淳仁訳(彩流社)
上海で日本軍に投弾し、金沢で銃殺された抗日運動の闘士の生涯。植民地支配の無意識を内破する真の歴史書。
B『金大中事件の政治決着――主権放棄した日本政府』古野喜政(東方出版)
C『終わりなき戦後を問う』橘川俊忠(明石書店)
D『米軍政下の沖縄 アメリカ世の記憶』森口豁(高文研)

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■年度版「私の選んだアジアの本


【2010年版】
私の選んだアジアの本

●宇田有三(うだ ゆうぞう)フォトジャーナリスト
著書:『閉ざされた国ビルマ』(高文研)
@『司馬遼太郎の歴史観』中塚明(高文研)
作られた司馬遼太郎の歴史観を改めて読者に問いかける。分かり易い朝鮮史は何度も読み返してしまう。
A『南北アメリカ華民と近代中国』園田節子(東京大学出版会)
現代中国のダイナミズムの出所を知るため、華人による南北アメリカ大陸への移民史を読み直す。
B『南北アジア・南アジア 開発の人類学』信田敏宏・真崎克彦編著(明石書店)
C『モンスーンの風に吹かれて』柳沢正(彩流社)
D『拉致―左右の垣根を越えた戦いへ』蓮池透(かもがわ出版)

●柿崎一郎(かきざき いちろう)横浜市立大学国際総合科学部准教授
著書:『鉄道と道路の政治経済学』(京都大学学術出版会)、『物語 タイの歴史』(中央公論新社)、『母なるメコン、その豊かさを蝕む開発(共訳、めこん)
@『タイ事典』日本タイ学会編(めこん)
タイを知るための必読書。歴史や伝統文化のみならず、政治対立など最新の情報をも満載した「読む事典」。
A『バンコクバス物語』水谷光一(めこん)
アジアのバスに関する本としては唯一の存在。庶民の足としてのバンコクのバスの何気ない情景が好ましい。
B『カンボジア史再考』北川香子(連合出版)
C『タムノップ:タイ・カンボジアの消えつつある堰灌漑』福井捷朗・星川圭介(めこん)
D『コミンテルン・システムとインドシナ共産党』栗原浩英(東京大学出版会)

●金丸知好(なかまる ともよし)自由文筆業・航海作家
著書:『ブブゼラ!―90分でわかる南アフリカ&ワールドカップ』(共著、第三書館)、『「超実践的」クルーズ入門』(中央公論新社)、『コリア!』(現代企画室)ほか
@『写真集 北方四島』山本将文(第三書館)
帰属問題ばかりがクローズアップされる「北方領土」に暮らす人々の素顔と生活がイキイキと描写されている。
A『ぼくが歩いた東南アジア』村井吉敬(コモンズ)
東南アジアを30年以上にわたって歩き続ける著者が厳選した写真と文章に、当地への愛情があふれている。
B『世界の領土・境界紛争と国際裁判 第2版』金子利喜男(明石書店)
C『日中を結んだ仏教僧』頼富本宏(農山漁村文化協会)
D『写真集 忘れられた人々』馬小虎撮影・文、李丹訳(第三書館)

●川上隆志(かわかみ たかし)専修大学文学部教授
著書:『編集者』(千倉書房)、『渡来の民と日本文化』(共著、現代書館)、『佐渡の風土と被差別民』(共著、現代書館)
@『ぼくが歩いた東南アジア』村井吉敬(コモンズ)
著者は30年以上にわたってアジア各地を歩き、そこで出会った人々たちの視点から開発経済や独裁政治を批判してきた。この間の歩みをたどり、自分で撮った写真を豊富に掲載する、万感の思いのこもった一冊。
A『中国コメ紀行』松本絋宇(現代書館)
「くさいはうまい」の原点ともいえる、なれずしの故郷を中国に追って20年。すしの故郷と稲のルートを歩いた苦闘の軌跡である。ニューヨークで最初のすし屋を開業した著者の執念である。
B『海が見えるアジア』門田修(めこん)
C『ガイサンシーとその姉妹たち』班忠義(梨の木舎)
D『月のしずくが輝く夜に』チカップ美恵子(現代書館)

●金容権(キム ヨングォン)著述・翻訳業
著書:『朝鮮韓国近現代史事典』(共編著、日本評論社)、『朝鮮事情』(訳、ダレ著、平凡社)
@『評伝、尹奉吉(ユンボンギル)』金学俊著、李e恒編、河田宏監修、朴淳仁訳(彩流社)
日本では単なるテロリストと見られがちな尹奉吉の知られざる実像、学ぶべき思想を明らかにした好著。
A『アジアの経済発展と環境問題』伊藤達雄・戒能通編(明石書店)
世界第一線の研究者が結集した学会の記録。ホットな現場報告と激論に「開発と環境の両立」の道が見える。
B『キムチの文化史』佐々木道雄(福村出版)
C『キーワード30で読む中国の現代史』田村宏嗣(高文研)
D『ダライ・マラ 実践の書』ダライ・マラ14世著、J.ホプキンス編、宮坂宥洪訳(春秋社)

●銀城康子(ぎんじょう やすこ)管理栄養士
著書:『モンゴルのごはん』(農山漁村文化協会)、『インドネシアのごはん』(農山漁村文化協会)ほか
@『やすらぎのタイ食卓』ラッカナー・パンウィチャイ・藤田渡ほか(めこん)
料理の特徴やレシピの記述がていねいであり、日本の食材でも作りやすい工夫がなされ、きめ細かく親切。
A『インド家庭料理入門』ロイチョウドゥーリ・ジョイ/ロイチョウドゥーリ・邦子(農山漁村文化協会)
医食同源の視点からのスパイス使い、日本女性とインド家庭料理との出会いなど、読み物として興味深い。
B『おいしいインドネシア料理』榎本直子・村上百合(めこん)
C『中国コメ紀行』松本絋宇(現代書館)
D『キムチの文化史』佐々木道雄(福村出版)

●佐々木道雄(ささき みちお)東アジア食文化研究家
著書:『キムチの文化史』(福村出版)、『焼肉の文化史』(明石書店)、『韓国の文化史』(明石書店)
@『朝鮮王朝時代の世界観と日本認識』河宇鳳著、金両基監訳、小幡倫裕訳(明石書店)
民族に底流する世界観が歴史を動かし、隣国認識が対外関係を隅取りする。そんなことを自覚させてくれる好書。
A『写真で見る在日コリアンの100年』在日韓人歴史資料館編著(明石書店)
よくもまあこれほど集めたものだ。日本人が目をそむけてはならない近・現代史の一面がいっぱい詰まっている。
B『火の料理 水の料理』木村春子(農山漁村文化協会)
C『韓国がわかる60の風景』林史樹(明石書店)
D『アジア動物誌』渡辺弘之(めこん)

●下澤 嶽(しもざわ たけし)静岡文化芸術大学文化政策学部准教授
著書:『開発NGOとパートナーシップ』(コモンズ)
@『ぼくが歩いた東南アジア』村井吉敬(コモンズ)
人々の思い、軍の抑圧。取材した著者の想いと、326点の写真が東南アジアの姿を浮き彫りにする。
A『アジアに架ける橋』新石正弘(コモンズ)
ミャンマーの地で難民や少数民族の自立支援や職業訓練に生涯を捧げたNGOのリーダの遺稿集。
B『新装版 世界の子ども兵』R・ブレット/M・マカリン著、渡井理佳子訳(新評論)
C『イラクで私は泣いて笑う』酒井啓子編著(めこん)
D『バングラデシュの歴史』堀口松城(明石書店)

●西川重則(にしかわ しげのり)「平和遺族会全国連絡会」代表、「靖国神社国営化反対福音 主義キリスト者の集い」代表ほか
著書:『わたしたちの憲法』(いちのことば社)『有事法制化の靖国神社』(梨の木舎)ほか
@『それでもぼくは生き抜いた』シャーウィン裕子(梨の木舎)
日本軍の捕虜をどう考えるのか。憎しみ合う戦争における生き証人の告白について、感動的な叙述と優れた解説
A『アボジが帰るその日まで』李熙子、竹見智恵子(梨の木舎)
なぜひとりの韓国女性が、靖国神社に父が合祀されているのを問い続けているのか、その悼みの秘密を解き明かす。
B『歓声のなかの警鐘 東アジアの歴史認識と歴史教育の省察』柳繿ラ(ユ・ヨンテ)著、岩方久彦訳(明石書店)
C『沖縄「自立」への道を求めて』宮里政玄・新崎盛輝ほか編著(高文研)
D『NSC 国家安全保障会議』松田康博編著(彩流社)

●羽鳥操(はとり みさを)野口体操の会主宰、立教大学・明治大学非常勤講師
著書:『野口体操入門』(岩波書店)、『マッサージから始める野口体操』(朝日新聞出版)、『DVDブック アーカイブス野口体操』(共著、春秋社)ほか
@『連塾 方法日本U 侘び・数奇・余白』松岡正剛(春秋社)
光悦の面影を宿す著者が、バラバラなもの・ことを’編集’という技法でしたたかに語る稀有な日本文化講演録。
A『身体感覚で「論語」を読みなおす。』安田登(春秋社)
「命と心」を中心軸に古代文字学から真の意味に迫り、能楽師・ロルファーの身体感覚で現代に『論語』を活かす良書。
B『ブータンにみる開発の概念』上田晶子(明石書店)
C『21世紀後半の世界の言語はどうなるのか』「二一世紀後半の言語」シンポジウム企画班編(明石書店)
D『シルクロードと世界の楽器』坪内栄夫(現代書館)

●林俊行(はやし としゆき)(独)国際協力機構(JACA)国際協力専門員
著書:『国際協力専門員』(編、新評論)、『市民・政府・NGO』(J・フリードマン著、共訳、新評論)
@『北東アジアの未来像』福井県立大学北東アジア研究会編(新評論)
「表日本」主導の東京一極集中経済に代わる「裏日本」主導の環日本海国際地域経済という新しい経済モデルを展望する。
A『地域から描くこれからの開発教育』山西優二・上條直美ほか編(新評論)
総論と多くの事例が、政府開発援助は日本の地域社会とどう関係を持つべきか、またその逆の関係性を考えさせる。
B『日本のインドネシア人社会』奥島美夏編著(明石書店)
C『沖縄「自立」への道を求めて』宮里政玄・新崎盛輝ほか編著(高文研)
D『司馬遼太郎の歴史観』中塚明(高文研)

前田耕作(まえだ こうさく)和光大学名誉教授、アフガニスタン文化研究所所長
著書:「巨像の風景」(中公新書)「宗祖ゾロアスター」改訂版(ちくま学芸文庫)「アフガニスタンの仏教遺跡バーミヤン」(晶文社)「アジア原像」(NHK出版)など多数
@『東アジアの歴史 その構築』ラインハルト・ツェルナー著、植原久美子訳(明石書店)
近代国家の枠組みを越え、東アジアのいう多様な文化域の独自の構造を照射し、日本の関与の歴史には学ぶところが多い。
A『ゾロアスター教』岡田明憲(平河出版社)
アジアの古宗教ゾロアスター今日の入門書としてもっとも適切な書である。重要な箇所の翻訳がきわめて有益。
B『韓国近現代史』池明観(明石書店)
C『オリエンタリストの憂鬱』藤原貞則(めこん)
D『日本・アフガニスタン関係全史』前田耕作監修、関根正男編(明石書店)

●松竹伸幸(まつたけ のぶゆき)日本平和学会会員(専門は日本外交論)
著書:マルクスはどんな憲法をめざしたのか』(大月書店)、『靖国問題と日本のアジア外交』(大月書店)
@『拉致A―左右の垣根を越える対話集』蓮池透・鈴木邦男ほか(かもがわ出版)
「制裁より対話を」と声をあげた被害者家族会前事務局長の勇気の意味が立場の違いを越えた対話で浮き彫りに。
A『重慶爆発とは何だったのか』戦争と空爆問題研究会編(高文研)
日本が世界最初に行った無差別爆撃の本質が明らかに。現在の米軍アフガン作戦に継承され今日的な意味がある。
B『新装版 世界の子ども兵』R・ブレット/M・マカリン著、渡井理佳子訳(新評論)
C『イラクで私は泣いて笑う』酒井啓子編著(めこん)
D『世界へ翔ぶ 国連機関をめざすあなたへ』玉城英彦(彩流社)


●山本博史(やまもとひろし)東洋大学国際地域学部前講師
著書:『現代たべもの事情』(岩波新書)、『FTAとタイ農業・農村』(筑波書房)、
『いま日本の米に何が起きているのか』(岩波ブックレット)

@『現代東アジア農業をどうみるか』村田武(筑波書房)
WTO体制下の農産物貿易自由化とアグリビジネスの支配がアジア農業に与えている影響を考察。
A『アジアの工業化と農業・食糧・環境の変化』山本博史(筑波書房)
タイを事例に工業化・経済発展と農業・食糧・環境への影響を分析、農業協同組合の歴史と現状・課題も。
B『タイ事典』日本タイ学会編(めこん)
C『緊迫アジアの米――相次ぐ輸出規制』山田優(筑波書房)
D『イーサンの百姓たち−NGO東北対活動』松尾康範著(めこん
)

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■年度版「私の選んだアジアの本

【2009年度
私の選んだアジアの本

●赤木 攻(あかぎ おさむ)東京外国語大学特任教授、大阪外国語大学名誉教授
著書:『復刻版 タイの政治文化 ―剛と柔―』(潟Gヌ・エヌ・エー)、『東アジア政治のダイナミズム』(共編著、青木書店)
@『現代タイ動向 2006-2008』日本タイ協会編(めこん)
 ここのところの尋常ではないタイ政治・社会の「揺れ」に多様な分析メスを入れ、タイの個性を抉り出した好著。
A『オリエンタリストの憂鬱』藤原貞朗(めこん)
 新進気鋭の学者が、緻密な考証により、アンコール考古学をめぐるフランス植民地政策の功罪を鋭く問い詰める。
B『分岐する現代中国家族』首藤明和他(明石書店)
C『バンコクバス物語』水谷光一(めこん)
D『台湾の政治:中華民国台湾化の戦後史』若林正丈(東京大学出版会)

●阿良田麻里子(あらた まりこ)国立民族学博物館外来研究員、摂南大学・阪南大学非常勤講師
著書:『世界の食文化6 インドネシア』(農文協)、『くらべてみよう! 日本と世界の食べ物と文化』(共著・講談社)
@『時間の旅、空間の旅』加藤剛(めこん)
 異文化の地でフィールド調査をすることの意味や、調査地の人々との関わりについて、深く考えさせてくれる。
A『ヤシの実のアジア学』鶴見良行・宮内泰介編著(コモンズ)
 身近な生活用品の原料から、異国に生きる人々の暮らしまで、ヤシをめぐる市民研究の成果。
B『ジャワの音風景』風間純子(めこん)
C『インドネシアを知るための50章』村井吉敬/佐伯奈津子編著(明石書店)
D『インドネシアの紛争地を行く』小松邦康(めこん)

●岡島 稔(おかじま みのる)元日本経済新聞カイロ支局長
著訳書:『イスラーム原理主義の「道しるべ」』(サイイド・クトゥブ、共訳、第三書館)、『円の挑戦』(共著、日本経済新聞社)
@『福沢諭吉のアジア認識』安川寿之輔(高文研)
 文明開化の指導者が隣国に「特別の会釈に及ばず」と考えたならば、侵略戦争は必然であったろう。
A『グローバル時代の宗教とテロリズム』M・ユルゲンスマイヤー(明石書店)
 アメリカ国家の非世俗性を理解する参考文献の一つ。
B『テロの帝国 アメリカ』N・チョムスキー(明石書店)
C『アラブの人々の歴史』A・ホーラーニー(第三書館)
D『ユダヤ人の歴史』A・L・ザハル(明石書店)


●岡田弥生(おかだ やよい)歯科医
著書:『むし歯ってみがけばとまるんだヨ』(梨の木舎)
@『資料集 日本軍にみる性管理と性暴力―フィリピン1941〜45年』戦地性暴力を調査する会:編(梨の木舎)
 女性への人権侵害は、ともすればなかったことにされやすい。丹念に編集された資料には圧倒的な存在感がある。
A『朝鮮近代史を駆けぬけた女性たち32人』呉香淑(オ・ヒャンスク)著(梨の木舎)
 殆んど始めて知った女性たちだったが、日本の先達と同じだと感じた。親しみと共に深い尊敬を覚えた。
B『イラク占領と核汚染』森住 卓=写真・文(高文研)
C『テロの帝国アメリカ―海賊と帝王』ノーム・チョムスキー(明石書店)
D『ことばの力 平和の力―近代日本文学と日本国憲法』小森陽一(かもがわ出版)

●櫻井秀子(さくらい ひでこ)中央大学総合政策学部教授
著書:『イスラーム金融:贈与と交換、その共存のシステムを解く』(新評論)、『イラク戦争への百年』(共著、書肆心水)
@『ブラック・アテナ』マーティン・バナール、片岡幸彦/監訳(新評論)
 西欧近代文明に関する通説の反証に挑戦。近代文明の転換を迫られる今、その方向性を探る上で重要な示唆に富む。
A『マハッラの実像』ティムール・ダダバエフ(東京大学出版会)
 ウズベキスタンの伝統的共同体マハッラ。ソ連体制下でも消滅せず、今日に続く庶民の生活基盤の実証的研究。
B『スパイスが変えた世界史』E&F・B・ユイグ、藤野邦夫/訳(新評論)
C『シルクロードと世界の楽器』坪内栄夫(現代書館)
D『いちじくの木がたおれ、ぼくの村が消えた』ジャミル・シェイクリー著、野坂悦子・津田櫓冬/訳(梨の木舎)

●末浪靖司(すえなみ やすし)日中友好協会常任理事
訳書:『中国は民主主義に向かう』(兪可平著、かもがわ出版)
@『憲法・古典・言葉』加藤周一対話集6(かもがわ出版)
 憲法問題でも日本のおかれた状況をふまえた加藤さんの話は説得力がある。9条と中国の関係はタイムリーだ。
A『雲夢沢の思い出』陳白塵著 中島咲子訳(凱風社)
 『人民文学』元副編集長が「文革」下の人間関係を巧みな筆致で描いている。今の中国を見る上でも欠かせない。
B『戦略爆撃の思想』前田哲男著(凱風社)
C『日中の経済関係はこう変わった』関山健著(高文研)
D『中国のWTO加入と法整備』高木喜孝、兪浪瓊著(明石書店)

●瀬川正仁(せがわ まさひと)映像ジャーナリスト・作家
著書:『ヌサトゥンガラ島々紀行』(凱風社)、『ビルマとミャンマーのあいだ』(凱風社)、『老いて男はアジアをめざす』(バジリコ)
@:『負けるな! 在日ビルマ人』シュエバ・田辺寿夫(梨の木舎)
 十年ものあいだビルマ民主化運動を支え、誰よりも深く在日ビルマ人を知る著者が、その熱き思いを語っている。
A『オリエンタリストの憂鬱』藤原貞則(めこん)
 コメント:文字による記録が少ない熱帯アジアの歴史。フランスの極東学院はその宝庫だ。その資料から読み解く貴重な歴史。
B『写真で見る在日コリアンの100年』在日韓人歴史資料館編(明石書店)
C『漢字文化の回路』李相哲(凱風社)
D『南海の軍閥 甘志遠』蒲豊彦(凱風社)

●瀧井宏臣(たきい ひろおみ)ルポライター
著書:『食卓に毒菜がやってきた』(コモンズ)、『風人たちの夏』(八月書館)、『農のある人生』(中公新書)、『こどもたちのライフハザード』(岩波書店)など。
@『北の彩時記』計良光範著(コモンズ)
 季節の移ろいに応じて変わるアイヌの豊穣な生活文化が美しい文体で描かれ、現代文明の貧しさを逆照射する。
A『北ビルマ、いのちの根をたずねて』吉田敏浩著(めこん)
 北ビルマの山の民の生き死にと生活世界の記録。珠玉の文体から、いのちの原イメージが鮮やかに浮き上がる。
B『有機農業と国際協力●有機農業研究年報Vol.8』日本有機農業学会編(コモンズ)
C『自衛隊ではなく、9条を世界へ』高田健著(梨の木舎)
D『アジアの子どもたち』萩野矢慶記写真集(東方出版)

●土橋泰子(どばし やすこ)外務省研修所ミャンマー語講師(非常勤)
訳書:『ビルマの民衆文化』(ルードゥ・ドー・アマー著、新宿書房)、『ビルマ商人の日本訪問記』(ウ・フラ著、連合出版)
@『怒りの河』李佳炯(連合出版)
悲劇のビルマ戦線を朝鮮人学徒志願兵の目で冷静客観的にとらえた秀逸の戦記。『破れ狼』と併読をお勧めする。
A『道は、ひらける』石井米雄(めこん)
 東南アジア研究の碩学が自らタイ研究の五十年を述べたもの。その広い視野、知的好奇心、高い教養に敬服する。
B『破れ狼』福谷正典(連合出版)
C『北ビルマ、いのちの根をたずねて』吉田敏浩(めこん)
D『カシュガール滞在記』マカートニ夫人著/金子民雄訳(連合出版)

●長坂寿久(ながさか としひさ)拓殖大学国際学部教授
著書:『日本のフェアトレード』、『NGO発、「市民社会力」−新しい世界モデルへ』、『オランダを知るための60章』『映画で読む21世紀』(いずれも明石書店)、『オランダモデル』(日経新聞社)等。
@『わがシネマの旅』扈 賢賛(凱風社)
 韓国映画の本格的紹介書。『トーキングコリアンシネマ』石坂浩一(凱風社)もお勧め。
A『福沢諭吉と朝鮮』杵淵信雄(彩流社)
 福沢諭吉の朝鮮論が脱亜入欧論の原点。明治思想の転換点を知る。
B『東アジアの歴史政策』近藤孝弘編著(明石書店)
C『日本の国際協力に武力はどこまで必要か』伊勢崎賢治(高文研)
D『ブータンの歴史――ブータン小・中学校歴史教科書』ブータン王国教育省(明石書店)

●樋口英夫(ひぐち ひでお)写真家
著書:『風景のない国・チャンパ王国』(平河出版社)、『雲南・北ラオスの旅』(めこん)
@『ブータンのツェチュ祭』永橋和雄・今枝由郎(平河出版社)
 写真の原点は記録。自分の驚きや興味を丹念に記録する。そこから新たな世界が見えだし、読者にも伝わる。
A『ミャンマー東西南北・辺境の旅』伊藤京子(めこん)
 技や見せかけの写真だけでは読者の心を惹かない。写真に現れる著者の心優しさを感じながら頁を繰る。
B『下北・神仏との出会いの里』加藤 敬(平河出版社)
C『ネパール仏教』田中公明(春秋社)
D『緑色の野帖』桜井由躬雄(めこん)

●藤原千尋(ふじわら ちひろ)執筆業
著書:『ちょこボラ!』(アメーバブックス)、『フェアトレード@ライフ』(春秋社)
@『増補版 インティファーダの女たち』古居みずえ(彩流社)
コメント:パレスチナの女性たちの強さをひしひしと実感。彼女たちと、著者自身にもエールを送らずにはいられない。
A『かわいいぶつぞう ふしぎなチカラ』井筒信隆/峯村冨一(春秋社)
コメント:カワイイ仏像たちのイラストがベリーキュート。仏像に親しみつつ巻末の解説で知識も学べるおトクな一冊。
B『日本のフェアトレード』長坂寿久(明石書店)
C『小説ブッダ』ティク・ナット・ハン(春秋社)
D『チベット問題とは何か』大西 広(かもがわ出版)

●前田哲男(まえだ てつお)ジャーナリスト(軍事・核・太平洋問題)
著書:『戦略爆撃の思想』(凱風社)、『9条で政治を変える〈平和基本法〉』(共著、高文研)他多数。
@『マーシャル諸島ハンドブック』中原聖乃/竹峰誠一郎(凱風社)
「ビキニ事件」の現場を歩き、現況を訪ねながら、赤道直下の環礁国にいざなってくれるガイドブックでもある。
A『重慶爆撃とは何だったのか』荒井信一ほか(高文研)
 日中戦争を空爆の視点から、「ゲルニカ」のあと、そして「対日戦略爆撃」の先行行為として歴史に位置づける。
B『ビキニ事件の表と裏』大石又七(かもがわ出版)
C『アメリカの化学戦犯罪』北村 元(梨の木舎)
D『アフガニスタンの歴史』マーティン・ユアーズ/金子民雄監修(明石書店)

●村田誠吾(むらた せいご)大賀郷中学校非常勤講師
著書:『ジャグラー算数教師のネパール奮闘記』(彩流社)
@『ネパールを知るための60章』(社)日本ネパール協会(明石書店)
 ネパールの自然、政治、民族、医療、教育、農業・・・・・・。各執筆者がそれぞれの経験から、深く考察している。
A『キレイになるバリ絵本』平田恵子(彩流社)
 バリ島を舞台に描いたイラストがとても良い。人生を豊かに生きるうえで大切にしたい感覚を教えてくれる。
B『ネパールの少女売春』ABCネパール(明石書店)
C『ブータンに図書館をつくる』石田孝夫(明石書店)
D『ネパールの山よ緑になれ』安倍泰夫(春秋社)

●村田 武(むらた たけし)愛媛大学社会連携推進機構特命教授
著書:『現代東アジア農業をどうみるか』(筑波書房)、『再編下の家族農業経営と農協』(編著:筑波書房)
@『FTAとタイ農業・農村』山本博(筑波書房)
 FTAが途上国に必ずしもメリットをもたらすものではないことをタイの農業・農村の現場から告発する。
A『市場経済化ベトナムの農業と農村』長憲次(筑波書房)
 ドイモイ(刷新)政策のもとで動き出したベトナムの農業と農村の新展開を現地調査を踏まえて分析。
B『日本のフェアトレード 世界を変える希望の貿易』長坂寿久編著(明石書店)
C『FTAと食料 評価の論理と分析枠組』鈴木亘弘編(筑波書房)
D『経済の総合依存と北東アジア農業 地域経済圏形成下の競争と協調』八木宏典編(東京大学出版会)

●山田邦紀(やまだ くにき)フリーライター
著書:『東の太陽、西の新月』、『明治の快男児トルコへ跳ぶ』(ともに共著、現代書館)、『明治時代の人生相談』(幻冬舎文庫)
@『北京のスターバックスで怒られた話』相原茂(現代書館)
 NHKテレビで中国語講座を担当して人気だった著者が、中国語の楽しい学び方を教える好エッセイ集。
A『久保山愛吉物語』飯塚利弘(かもがわ出版)
 1954年、アメリカの水爆実験で被爆、原水爆禁止を訴えて死んだ第五福竜丸・久保山愛吉の生涯。
B『ヒロシマ』林順治(彩流社)
C『七三一部隊のはなし』西野瑠美子(明石書店)
D『アジアからみた「大東亜共栄圏」増補版』内海愛子・田辺寿夫(梨の木舎)

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■年度版「私の選んだアジアの本

【2008年度】
私の選んだアジアの本

●上田信(うえだ まこと)立教大学教授
著書:『海と帝国』(講談社)、『風水という名の環境学』(農文協)
@『裁判と歴史学』松村高夫・矢野久(現代書館)
 日本軍は731部隊が開発した細菌兵器を実戦で使用した。国を被告とする裁判から、歴史学とは何かを問う。
A『辺縁のアジア』阿部年晴ほか(明石書店)
 ケガレという文化的事象に、気鋭の人類学者・宗教学者が切り込む。台湾・タイなどの多様な事例が語られる。
B『タタールのくびき』栗生沢猛夫(東大出版会)
C『「天下」を目指して―中国多民族国家の歩み』王柯(農文協)
D『沖縄・読谷村 憲法力がつくりだす平和と自治』山内徳信(明石書店)

●内野克美(うちの かつみ)日本写真家協会会員
著書:『神の国 ネパール ヒマラヤ』(第三書館)
@『アジアの子ども』アジア保健研修財団(明石書店)
 子どもたち一人一人が身近に思えてくるような、生活感・自然に満ちあふれている。
A『アジアの子どもがいる風景』大西剛(東方出版)
 子どもの姿を通してアジアの現実を見つめ、振り返ってわが日本を思う。
B『シルクロード路上の900日』大村一郎(めこん)
C『21世紀アジア家族』落合恵美子、上野加代子(明石書店)
D『海が見えるアジア』門田修(めこん)

●押川典昭(おしかわ のりあき)翻訳家・大東文化大学国際関係学部教授
著書・訳書:訳書プラムディヤ・アナンタ・トゥール『人間の大地』『すべての民族の子』『足跡』『ガラスの家』(めこん)、共著『東南アジア文学への招待』(段々社)
@『挫折しないタイ文字レッスン』中島マリン(めこん)
 アジアの言語を学ぶ初心者にとって文字のハードルは高い。こんな楽しい教則本が他の言語でも欲しい。
A『いのちの近代史』藤野豊(かもがわ出版)
 近代日本が光を際立たせるために何を闇に沈めてきたか。一貫してハンセン病を扱ってきた歴史家の一著。
B『はるか遠い日』レ・リュー著、加藤則夫訳(めこん)
C『マックス・ハーフェラール』ムルタトゥーリ著、佐藤弘幸訳(めこん)
D『脱植民地化とナショナリズム』山本博之(東京大学出版会)

●鎌澤久也(かまざわ きゅうや)写真家、駒沢女子大学非常勤講師
著書:『雲南・カイラス4000キロ』(平河出版社)、『シルクロード全4道の旅』(めこん)、『玄奘の道・シルクロード』(東方出版)、『メコン街道』(水曜社)など
@『ミャンマー憧憬』加藤敬(平河出版社)
 軍事政権化で自由を束縛されながらも、ひたむきに生き続ける仏教徒ミャンマー人を、祭りを通して日常の生活を表現した一冊。
A『香港・広東で働く』須藤みか(めこん)
 海外で働くシリーズもので、実際にその地で働いている人々にインタビューするなど、海外生活しようとする人たちの必携本。
B『仏の里・ラオス』太田亨(東方出版)
C『海の狩人』樋口英夫(平河出版社)
D『椎葉神楽』渡辺良正(平河出版社)

●川瀬貴也(かわせ たかや)京都府立大学文学部准教授
著書:『国家と宗教』(共著、法蔵館、近刊)
@『『マンガ嫌韓流』のここがデタラメ』太田修・朴一ほか(コモンズ)
 誤解と偏見に満ちた件の書に対し、一つ一つ的確に反論した本。「ネタ」に対する「ベタ」の強さを再確認。
A『コリアン・ディアスポラ』ソニア・リャン(明石書店)
 在日朝鮮人として生まれた著者が、異国の地で自らと同胞たちの体に刻まれたディアスポラ性に思いを馳せる。
B『韓国の教育と社会階層』有田伸(東京大学出版会)
C『「集団自決」を心に刻んで』金城重明(高文研)
D『マフフーズ・文学・イスラム』八木久美子(第三書館)

●木村茂光(きむら しげみつ)東京学芸大学 教授
著書:『日本初期中世社会の研究』(校倉書房) 編著:『日韓歴史共通教材 日韓交流の歴史−先史から現代まで』(明石書店)
@歴史教育研究会・歴史教科書研究会編 『日韓歴史共通教材
 日韓交流の歴史−先史から現代まで』(明石書店)  日韓両国の研究者・教育者が10年間の歳月と15回のシンポを通じて作成した初めての日韓交流の「通史」
A中塚明『現代日本の歴史認識−その自覚せざる欠落を問う』(高文研)
 日朝関係史研究の泰斗が「明治栄光論」の「常識」を批判し、それによって隠蔽された歴史の真実を析出する。
B神戸女学院大学石川康宏ゼミナール編『「慰安婦」と心はひとつ−女子大生はたたかう』(かもがわ出版)
C金貴玉著/永谷ゆき子訳『朝鮮半島の分断と離散家族』(明石書店)
D高橋哲哉他編『法と暴力の記憶−東アジアの歴史経験』(東京大学出版会)

●齋藤一晴(さいとう かずはる)都留文科大学・関東学院大学・法政大学第二高等学校・非常勤講師
著書:『アジアの人々とともに「戦争の記憶」を継承する』(共著、平和文化)
@『日本人と戦争責任』斎藤貴男・森達也(高文研)
 戦争を始めるのも、防ぐのも、継承していくのも人間。今を生きる私たちに何ができるのかを考えるための一冊。
A『シンガポール華僑粛清』林博史(高文研)
 シンガポールで日本軍が行った華僑粛清の実態を明らかにすることで、私たちの東南アジアへの歴史認識を問う。
B『東アジア市民社会と民主化』西川潤・蕭新煌編(明石書店)
C『台湾における脱植民地化と祖国化』丸川哲史(明石書店)
D『東アジア歴史対話 国境と世代を越えて』三谷博・金泰昌編(東京大学出版会)

●関 満博(せき みつひろ)一橋大学大学院商学研究科教授(経済学博士)
著書:『メイド・イン・チャイナ』『地域産業振興の人材育成塾』『中国の産学連携』『地方圏の産業振興と中山間地域』(以上編著、新評論)、『現場主義の人材育成法』(ちくま新書)ほか編著書多数。
@『大連・空白の六百日』富永孝子(新評論)
 終戦後の大連を克明に追った歴史的証言。私たち日本人にとっての中国の意味を考えていくための不可欠の書。
A『中国近郊農村の発展戦略』今村奈良臣ほか(農文協)
 この30年で中国の農村は劇的に変わってきた。ただし、その実情伝わって来ない。そうした課題に対する基本図書。
B『構造調整下の中国農村経済』田島俊雄編(東京大学出版会)
C『アジア市場のコンテキスト【東南アジア編】』川端基夫(新評論)
D『近代アジアのグローバリゼーション』M・カプリオ編(明石書店)

●高野秀行(たかの ひでゆき) 作家 著書:『アヘン王国潜入記』、『ミャンマーの柳生一族』(以上、集英社文庫)、『アジア新聞屋台村』(集英社)、『極楽タイ暮らし』(ワニ文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』『怪獣記』(以上、講談社)など多数。
@『タイの象』桜田育夫(めこん)
 タイだけでなく、アジアのゾウについてこれだけ包括的に書かれた本は他にないのではないか。
A『ビルマ商人の日本訪問記』ウ・フラ著/土橋泰子訳(連合出版)
 戦前の日本をアジア人の目から活写した貴重な記録。
B『宇宙樹の森』吉田敏治(現代書館)
C『支那四億のお客さま』カール・クロウ著/山田侑平・新保民八訳(連合出版)
D『タイの森林消失』倉島孝行(明石書店)

●中村尚司(なかむら ひさし)龍谷大学研究フェロー
著書:『人びとのアジア』(岩波書店)、『地域自立の経済学』(日本評論社)
@『北朝鮮の日常風景』石任生・撮影 安海龍・文 韓興鉄・訳 (コモンズ)
 特異な政治体制が過剰に強調され、人びとの暮らしぶりの報道が少ない北朝鮮社会の実情を伝える優れた写真集。
A『グローバル時代の日本社会と国籍』李洙任・田中宏共著(明石書店)
 戸籍制度によって日本に住むアジア人の差別を行ってきた戦後日本社会の排外体質を具体的に明らかにしている。
B『NGOが変える南アジア』斎藤千宏編著(コモンズ)
C『インド・スリランカ上座仏教史』R・ゴンブリッジ著(春秋社)
D『風水という名の環境学』上田信著(農文協)

●野本三吉(のもと さんきち)沖縄大学人文学部子ども文化学科教授
著書:『海と島の思想』『子ども観の戦後史』(現代書館)、『未完の放浪者』(新宿書房)、『公的扶助の戦後史』(明石書店)
@『東の太陽、西の新月』山田利邦紀・坂本俊夫(現代書館)
 巨大トルコ艦の紀伊大島での遭難。村民による無私無欲の救援活動から生まれた真の国際友好の感動の記録。
A『沖縄、読谷村―憲法がつくりだす平和』山内徳信(明石書店)
 憲法の精神を現実生活に活用し、基地の街沖縄で村民と共に基本的人権、伝統文化を守り抜いた村長の実践。
B『「集団自決」心に刻んで』金城重明(高文研)
C『9条がこの国を守ってきた』高田健(梨の木舎)
D『カンボジアの子どもたち』遠藤俊介(連合出版)

●波佐場清(はさば きよし)元朝日新聞編集委員(元ソウル支局長)
著書:『コリア閑話』(東方出版)、訳書:『金大中 平和統一論』(朝日新聞社)
@『現代日本の歴史認識』中塚明(高文研)
 日清戦争は日本軍の朝鮮王宮占領で始まり、朝鮮半島が戦場となった。「明治栄光論」からの脱却を。
A『コリア閑話』波佐場清(東方出版)
 「嫌韓流」「『坂の上の雲』の陰」「パッチギ!」「核・拉致」…。コリアの心と日本人のコリア観の深層。
B『観光コースでない「満州」』小林慶二(高文研)
C『ある弁護士のユーモア』韓勝憲/舘野皙訳(東方出版)
D『創氏改名』宮田節子、金英達、梁泰昊(明石書店)

●長谷川潮(はせがわ うしお)児童文学評論家 著書:『子どもの本に描かれたアジア・太平洋』(梨の木舎)、 『児童文学の中の障害者』(ぶどう社)
@『ガイサンシーとその姉妹たち』班忠義(梨の木舎)
 山西省での日本軍の暴虐な性暴力にかかわる事実と人間の生死を、日本在住の中国人が追及した強烈な記録だ。
A『カンボジアの子どもたち』遠藤俊介(連合出版)
 現地に通いつめて生まれた写真集。喜びと生命力を爆発させている子どもたちが、見る者の心を強く輝かす。
B『日韓交流の歴史』歴史教育研究会他編(明石書店)
C『「軍事植民地」沖縄』吉田健生(高文研)
D『台湾の「大東亜戦争」』藤井省三他編(東京大学出版会)

●吉村澄代(よしむら すみよ)同志社大学嘱託講師、人民日報「人民網」翻訳スタッフ
著書:『素顔の中国−街と人と暮らし55話』(かもがわ出版)、『大学財政−世界の経験と中国の選択』(共訳・東信堂) 
@『中国の衝撃』溝口雄三(東京大学出版会)
 現代中国の変化の深層に流れるものを、中国思想史を繙きつつ、従来とは異なる歴史的視座と角度から分析し吟味している書。
A『中国外交の新思考』王逸舟、天児慧・青山瑠妙編訳(東京大学出版会)
 現政権の中国外交の展開について、責任ある大国への意欲と柔軟な思考で解説している。中国への旧来のイメージを更新させる書。
B『ガイサンシーとその姉妹たち』班忠義(梨の木舎) 
C『「慰安婦」と心はひとつ 女子大生たたかう』神戸女学院大
学石川康宏ゼミナール(かもがわ出版)
D『アジアでどんな戦争があったのか』別府三奈子(めこん)


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■年度版「私の選んだアジアの本

【2007年度】私の選んだアジアの本

●青山和佳(あおやま わか)日本大学生物資源科学部助教授
著書:『貧困の民族誌―フィリピン・ダバオ市のサマの生活』(東京大学出版会、2006年)
@『ハポン』(大野俊、第三書館)
 20世紀初頭以来多くの日本人移民がフィリピンへ向かった。本書は、日本軍占領期に強力を強いられた日系2世・日本人孤児たちの戦後史ルポであり、過去に照らして現代の日比関係を異なる角度から見せる、貴重な著作である。
A『新版・入門東南アジア研究 』(上智大学アジア文化研究所、めこん)
 東南アジアで生じている現象から出発し、重層性、多様性をもつ「地域」の文脈に照らしながら東南アジア地域の固有性を提示する果敢な取り組み。
B『フィリピンで働く』(日刊マニラ新聞、めこん)
C『東南アジアの美術』(フィリップ・ローソン、めこん)
D『変容する東南アジア』(加藤剛編、めこん)

●大富 亮(おおとみ あきら)チェチェンニュース発行人
著書:『チェチェンで何が起こっているのか』(高文研、共著)、『チェチェン紛争』(東洋書店)
@『コーカサスを知るための60章』(北川誠一他、明石書店)
 1991年から続くロシア軍のチェチェンへの侵攻によって、カスピ海と黒海のはざまにあるコーカサス地方への関心が高まっている。この本は優秀な研究集団が足しげく現地に通い、豊富な地図と写真で解説する稀有な一冊。
A『イラク 占領と核汚染』(森住卓、高文研)
 国連の経済封鎖が続いていたイラクに対する2003年以降の戦争で、放射性物質を弾頭とし、使用された地域に重大な健康被害をもたらすとされる劣化ウラン弾兵器の問題を追う気鋭のジャーナリストの報告。「原因不明」の苦痛に顔をゆがめる乳幼児の写真に胸が締めつけられる。
B『慰安婦問題Q&A』(アジア女性資料センター、明石書店)
C『天皇の神社「靖国」増補版』(西川重則、梨の木舎)
D『通化事件』(佐藤和明、新評論)

●加藤敬(かとう たかし)写真家
著書:『マンダラ―西チベットの仏教美術』(毎日新聞社)、『マンダラ蓮華―アルチ寺の仏教宇宙』(平河出版社)、『遠野―民話の神・仏に出逢う里』(学習研究社)など
@『仏の里・ラオス』(太田亨、東方出版)
 仏を信じ精霊とともに生きる人々が暮らす国、ラオス。ここでの時は、メコンの流れのように悠久に過ぎゆき、人々はその流れに逆らうことなく暮らす。そんな穏やかな時の流れと、メコンの心地よい川風が感じられる佳品。
A『バリ・華花の舞う島』(古屋均、平河出版社)
 少女たちが舞う、神々への奉納舞踏。ガムランが鳴り響く仮面舞踏や古典劇。再生のための儀礼である火葬。豊かな自然と人々の日常生活。バリ島のハレとケが再現される。
B『シルクロード全4街道の旅』(鎌澤久也、めこん)
C『ブータン・風の祈り』(田淵曉+今枝由郎、平河出版社)
D『道教事典』(野口鐵郎他編、平河出版社)

●北川香子(きたがわ たかこ)日本学術振興会特別研究員(RPD)・博士(文学)
著書:『カンボジア史再考』(連合出版)
@『アンコール・ワットを読む』(石澤良昭編、連合出版)
 アンコール学の最先端が日本であることを実感させてくれる本。特に若手による実証的な研究が頼もしい。
A『緑色の野帖−東南アジアの歴史を歩く』(桜井由躬雄、めこん)
 文学博士、農学博士、ベトナム国家大学名誉博士である歴史地域学者のフィールドワーク。風景が目に浮かぶ歴史書。
B『西欧が見たアンコール』(ベルナール.Ph.グロリエ著、石澤良昭・中島節子訳、連合出版)
C『ハノイの憂鬱』(桜井由躬雄、めこん)
D『アンコール遺跡』(ジョルジュ・セデス著、三宅一郎訳、連合出版)

●小磯千尋(こいそ ちひろ)宮城学院女子大学非常勤講師
著書:『世界の食文化 第8巻 インド』(小磯学と共著、農文協)
@『アジア・映画の都』(松岡環、めこん)
 長年地道にインド映画の紹介に努めた著者が視点をアジア全般に広げ、その交流にも着目した意欲作。
A『ごちそうはバナナの葉の上に』(渡辺玲、出帆新社)
 一流のインド料理人としての腕ももつ著者の秘伝のレシピの数々。料理や食材、人にまつわるエピソードも楽しい。
B『罪の文化』(小谷汪之、東京大学出版会)
C『ジャグモーハンの死』現代インド文学選集(モハシェタ・デビ、めこん)
D『肉食文化と魚食文化』(長崎福三、農文協)

●越田清和(こしだ きよかず)NPO法人さっぽろ自由学校「遊」理事
著書:『国家・社会変革・NGO』(共編、新評論)、『徹底検証ニッポンのODA』(共著、コモンズ)、『「改憲」異論3 民衆の安全保障と九条』(共著、現代企画室)
@『越境と抵抗―海のフィールドワーク再考』(小川徹太郎、新評論)
 人間と社会を海からの視点でとらえかえそうとする本。読む者を深いところから揺さぶる「ことば」「語り」にぶつかり、ハッとさせられる。
A『地域の自立・シマの力(上・下)』(新崎盛暉・比嘉正夫・家中茂編、コモンズ)
B『平和・人権・NGO』(三好亜矢子、若井晋・孤崎知己・池住義憲編、新評論)
C『徹底検証ニッポンのODA』(村井吉敬編、コモンズ)
D『ネグロス・マイラブ』(大橋成子、めこん)

●斎藤千宏(さいとう ちひろ)日本福祉大学教授
編著書:『NGOが変える南アジア』(コモンズ)、『NGO大国インド』(明石書店)他、訳書:『市民・政府・NGO』(新評論)
@『地域の自立シマの力―沖縄から何を見るか沖縄に何を見るか』(下)(新崎盛暉他編、コモンズ)
 シンポジウム「方法としての沖縄研究」の記録、好評だった上巻の続き。
A『KULA(クラ)―貝の首飾りを探して南海をゆく』(市岡康子、コモンズ)
 「すばらしい世界旅行」のプロデューサーによるニューギニアで行なわれている装飾品交換儀礼の取材記録。
B『貧富・公正貿易・NGO』(オックスファム・インターナショナル著、渡辺龍也訳、新評論)
C『バングラデシュ民衆社会のムスリム意識の変動』(高田峰夫、明石書店)
D『刺繍 イラン女性が語る恋愛と結婚』(マルジャン・サトラピ著、山岸智子他訳、明石書店)

●高嶋伸欣(たかしま のぶよし)琉球大学教育学部教授
著書:『教育勅語と学校教育』(岩波ブックレット)『教科書はこう書き直された』(講談社)『拉致問題で歪む日本の民主主義』(スペース伽耶)
@『福沢諭吉の戦争論と天皇制論』安川寿之輔(高文研)
 戦後の日本社会で増幅された福沢諭吉美化の思想状況を丸山真男批判と結合させながら差別的アジア認識に切り込んだ安川氏への反論に再反論を展開。痛快な書。
A『アメリカの教科書に書かれた日本の戦争』越田稜編・著(梨の木舎)
 1982に歴史教科書検定が外交問題化し、一気に海外の教科書での戦争記述に対する関心が高まった流れを継承。
B『開発教育のすすめ』西岡尚也(かもがわ出版)
C『消され、ゆがめられた歴史教科書』久保井規夫(明石書店)
D『ジェンダーの視点からみる日韓近現代史』日韓「女性」共同歴史教材編纂委員会編(梨の木舎)

●武吉次朗(たけよし じろう)日本国際貿易促進協会相談役、元摂南大学教授
著書:『新版 現代中国30章』(共著、大修館書店)訳書:『大破産 中国の国有企業改革』(東方書店)、『中国の歴史教科書問題』(日本僑報社)
@『未来をひらく歴史』(日中韓3国共通歴史教材委員会編、高文研)
 近現代史をめぐる三国それぞれの視点が、他国の硬直した史観を刺激し啓発する。本書はその嚆矢。
A『毛沢東のベトナム戦争』(朱建栄、東大出版会)
 ベトナム戦争を軸に中国の国際情勢判断と対応を克明に追って、小説やTVドキュメンタリーより興味深い。
B『証言・日中合弁』(園田茂人、大修館書店)
C『日中相互理解のための中国ナショナリズムとメディア分析』(高井潔司、明石書店)
D『中国語新語ビジネス用語辞典』(塚本慶一編、大修館書店)

●平山修一 (ひらやま しゅういち)CSJ調査企画部研究員、JICA専門家(タイ)、GNH研究所代表幹事
著書:『現代ブータンを知るための60章」(明石書店)
@『仏教・開発・NGO』(西川潤・野田真里、新評論)
 現在のタイにおける真の開発の意義を問う本。新しい内発的発展の道しるべのようである。
A 『虹と雲』(ドルジ・ワンモ・ワンチュック、平河出版社)
 現役の皇太后による書で、近代ブータン史の理解を促進する貴重な一次資料。当時のブータン人の周辺諸国との距離感が非常に良く理解できる。
B 『稀少資源のポリティクス』(佐藤仁、東京大学出版会)
C『地図がつくったタイ―国民国家誕生の歴史』(トンチャイ ウィニッチャクン、明石書店)
D 『タイ人と働く』(ヘンリー・ホームズ&スチャダー・タントンタウィー、めこん)

●古野喜政(ふるの よしまさ)元毎日新聞ソウル特派員
著書:『ジャーナリズムのいま』(みずのわ出版)、『金大中事件の政治決着』(東方出版)
@『現代中国のマスメディア・IT革命』(林暁光、明石書店)
 言論の自由をどうするか。経済大国中国の泣き所。メディア(IT)と社会主義は共存できるのか。日本留学経験をもとにした中国人による入門書。
A『金大中事件の政治決着 主権放棄した目本政府』(古野喜政、東方出版)
 金大中拉致はKCIAの犯行と知りながら日本政府は主権を放棄、政治決着した。当時ソウル特派員だった著者が“追跡33年”あぶり出した真実。
B『韓国フェミニズムの潮流』(チャン・ピルファ他、明石書店)
C『日本帝国主義下の朝鮮経済」(金洛年、東京大学出版会)
D『韓国、愛と思想の旅」(小倉紀蔵、大修館書店)

●別府三奈子(べっぷ みなこ)日本大学助教授、アジア戦跡情報館(サイバーアーカイブス)館主
著書:『アジアでどんな戦争があったのか』(めこん)、『ジャーナリズムの起源』(世界思想社)他
@『ヤスクニとむきあう』(中野晃一+上智大学21世紀COEプログラム編、めこん)
 混乱している「靖国問題」の本質を、政治、経済、外交、歴史、アジア地域文化など、多角的なアカデミズムの叡智を駆使して、解き明かしている。
A『アジアの新聞が報じた自衛隊の「海外派兵」と長野発言・桜井発言』(中村ふじゑ他、梨の木舎) 
 変わらぬ[日本を見る目]と急変する日本のムードが明らかになる。
B『カンボジア−僕の戦場日記』(後藤勝、めこん)
C『ラオスは戦場だった』(竹内正右、めこん)
D『観光コースでない韓国(新装版)』(小林慶二、高文研)

●安田 登(やすだ のぼる)下掛宝生流ワキ方能楽師、ロルフィングの施術者、朝日カルチャーセンター講師
著書:『ワキから見る能世界』(NHK出版)、『疲れない体をつくる「和」の身体作法』(祥伝社)、『日本語を生かすメリハリ読み』(春秋社)他多数。
@『空海の夢』(松岡正剛、春秋社)
 空海が偉大なる人であることは間違いない。が、その著作に挑戦しようとするとすぐに溺れてしまう。大海に出るには浮き輪が必要だ。空海という大海に遊ぶための頼りになる浮き輪が本書である。
A『中国思想史』(東京大学中国哲学研究室編、東大出版会)
 中国思想史を扱った類書は多いが、周公旦をこれほどしっかり扱った書は少ない。思想史の概観だけでなく碩学たちの熱さも感じられる好著。
B『中国文化叢書 第二巻 思想概論』 (赤塚忠他編、 大修館書店)
C『中国の夢判断』(劉文英著/湯浅邦弘訳、東方書店)
D『天台小止観――仏教の瞑想法』(新田雅章、春秋社)

●吉田康彦 (よしだ やすひこ)大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員教授
著書:『動き出した朝鮮半島』(共著、日本評論社)、『現代アジア最新事情』(大阪経済法科大学出版部)、『21世紀の平和学』(編著、明石書店)、『「北朝鮮核実験」に続くもの』(第三書館)
@『北朝鮮とアメリカ』(ブルース・カミングズ、明石書店)
 北朝鮮の核・ミサイル開発が体制維持をかた長期戦略に基づいていることが史実と証言で裏づけられている。米国で最も権威ある北朝鮮研究者の最新作。
A『テロの帝国アメリカ』(ノーム・チョムスキー、明石書店)
 これぞアメリカの良心。チョムスキーの発言が許されているかぎり、アメリカの民主主義は健在だ。
B『イランを知るための65章』(岡田恵美子他、明石書店)
C『中東軍事紛争史』 T〜W巻(鳥井順、第三書館)
D『核の闇市場』(レンセラー・W・リー、連合出版)

●和賀正樹(わが まさき)編集者・アジア庶民アナリスト
著書:『大道商人のアジア』(小学館)、『ダムで沈む村を歩く・中国山地の民俗誌』(はる書房)
@『横浜コトブキ・フィリピーノ』(レイ・ベントゥーラ著、森本麻衣子訳、現代書館)
 比共産党員で日雇い労働者だった「ぼく」が描くドヤ街の『夫婦善哉』。人生を祝福したくなる好著。人種も国境も国籍も、みな溶けよ。映画化を企てる勲血漢はいないか。
A『クメール語入門』(ペン・セタリン、連合出版)
 ペンは救民の女傑。孤立するポル・ポトの愛嬢に手を差し伸べ、タイの銀行に眠るポ氏の資産を故国の小学校建設に廻そうと著者と画策中。愛嬢の心を溶かす男はいないか。
B『海が見えるアジア』(門田修、めこん)
C『宇宙樹の森』(吉田敏浩、現代書館)

D『奄美の四季』(原井一郎、農文協)

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■年度版「私の選んだアジアの本

【2006年度】私の選んだアジアの本

●赤木 攻(あかぎ おさむ)日本学生支援機構参与(国際交流担当、東京国際交流館長)大阪外語大学名誉教授
著書:『タイの政治文化』(勁草書房)、『タイの永住日本人』(めこん)、『タイ:工業化と地域社会の変動』(共編著、法律文化社)
@『ベトナム戦争の「戦後」』中野亜里編(めこん)
 日本人のベトナム戦争へのイメージの中に存在する「二重の神話」から離脱し、ベトナムの現代史を理解したいものだ。
A『国民の形成』野津隆志(明石書店)
 タイ東北地方の国語、仏教、国王に関する小学校教育のフィールドから、国民国家のゆっくりした形成を教えてくれる。
B『道は、ひらける』石井米雄(めこん)
C『間違いだらけのタイ語』中島マリン、吉川由佳(めこん)
D『タイ・黄衣のゆらぎ』樋口英夫、杉江幸彦(平河出版社)

●岩崎雅美(いわさき まさみ)奈良女子大学教授・アジア・ジェンダー文化学研究センター長
著書:『中国・シルクロードの女性と生活』(東方出版、編著)、『生活文化学の愉しみ―ライフスタイル・こころ・もの・からだ』(昭和堂、編著)
@『アフガニスタンの歴史―旧石器時代から現在まで―』マーティン・ユアンズ著(明石書店)
 荒涼たる自然の中で繰り広げられる多民族の生活とイスラム教の関係がわかりやすく紹介されている。
A『奈良のなかの朝鮮』朴鐘鳴(明石書店)
 5〜9世紀、奈良における朝鮮三国(高句麗、百済、新羅、伽耶)の服飾や仏教等との関係がわかりやすい。
B『韓国の手仕事』田代俊一郎(晩聲杜)
C『玄装三蔵のシルクロード ガンダーラ編』安田暎胤(東方出版)
D『シルクロード ニヤ遺跡の謎』中井真孝ほか(東方出版)

●内橋克人(うちはし かつと)経済評論家
著書:『匠の時代』(12巻 講談社文庫)、『内橋克人 同時代への発言』(8巻 岩波書店)、『不安社会を生きる』(文藝春秋)、『共生の大地』(岩波新書)、『ラテン・アメリカは警告する』(新評論、共編)ほか
@『世界文明における技術の千年史』アーノルド・パーシー(新評論)
 技術とは何か。長い人類の歴史と文化の水脈は、狭い「生産技術」でなく「生存技術」にある。技術を比較文明論のなかに据えた新しい視座と豊かさに感動する。
A『グローバリゼーションと発展途上国』吾郷健二(コモンズ)
 21世紀型危機(資本収支危機)に追い込まれたアジアの救済をIMF、世銀は20世紀的ビッグバンアプローチをもってした。真の危機に迫る学究の迫力に打たれる。
B『戦争と医療』莇昭三(かもがわ出版)
C『文明の中の水』湯浅赳男(新評論)
D『世界の児童労働』OECD編著(明石書店)

●内海愛子(うつみ あいこ)恵泉女学園大学教員
著書:『戦後補償から考える日本とアジア』(山川出版社)、『スガモプリズン――戦犯たちの平和運動』(吉川弘文館)、『日本軍の捕虜政策』(青木書店)ほか
@『歩く学問ナマコの思想』鶴見俊輔ほか(コモンズ)
 アジアとくにインドネシアを歩くなかで問題意識が次々にうまれ、視野が広がった鶴見良行の学問を俎上に、自由闊達に論じた本。
A『カツオとかつお節の同時代史』藤林泰・宮内泰介編著、『地域漁業の社会と生態』北窓時男(ともにコモンズ)
 同じく鶴見良行とアジアを歩いた仲間が書いた、イメージがふくらむ本。よく歩き、よく調べて、まとめられている。
B『泰緬鉄道と日本の戦争責任』内海愛子、G.マコーマック、H.ネルソン編(明石書店)
C『オーストラリア日系人強制収容の記録――知られざる太平洋戦争』永田由利子(高文研)
D『忘れられた人びと――日本軍に抑留された女たち・子どもたち』S.F.ヒューイ(梨の木舎)
★アジア太平洋戦争を考えるとき、オーストラリアをぬかすことはできない。戦争・モノとヒトの移動、住民の証言の記録をオーストラリアもふくめて考えたいという問題意識から選んだ。

●笠原十九司(かさはら とくし)都留文科大学教授
著書:『南京事件』(岩波新書)、『南京難民区の百日』(岩波現代文庫)、『日中全面戦争と海軍』(青木書店)、『南京事件と三光作戦』(大月書店)、『南京事件と日本人』(柏書房)、『体験者27人が語る南京事件』(高文研)
@『観光コースでないベトナム』伊藤千尋(高文研)
 大学の授業「Study tour in Vietnam」でテキストに使う。ベトナム戦争を考える旅と学習に最適。ルポとしても面白く読める。
A『沖縄修学旅行(第3版)』新崎盛暉他(高文研)
 沖縄戦の歴史を現地で学び、基地の島・沖縄の現実を知り、沖縄の自然と歴史と暮らしと文化に親しみ、何よりも沖縄が好きになる本。
B『旅行ガイドにないアジアを歩く 韓国』君島和彦他(梨の木舎)
C『〈国民的記憶〉を問う(加藤周一対話集3)』加藤周一(かもがわ出版)
D『ここまでひどい!「つくる会」歴史・公民教科書』VAW-NET ジャパン(明石書店)

●鎌澤久也(かまざわ きゅうや)写真家
著書:『雲南』『藍の里』『南詔往郷』『雲南・カラス・・・4000キロ』(以上平河出版社)、『雲南最深部への旅』『シーサンパンナと貴州の旅』(以上めこん)、『玄装の道シルクロード』(東方出版)
@『シルクロード全4道の旅』鎌澤久也(めこん)
 古都西安から始まり、蘭州を経由して河西回廊、天山北路、天山南路、西域南路を写真と旅行記で綴った本。現地情報も満載。
A『中国伝統版画集成―TU』加藤敬他(平河出版社)
 潘元石氏所蔵の中国の版画を『招福厄除』『吉祥祈願』の2冊本にし、意味などを解説した貴重な版画写真集で見応え十分。
B『絶望のなかのほほえみ』後藤勝(めこん)
C『虹と雲―王妃の父が生きたブータン現代史』ドルジ・ワンモ・ワンチュック(平河出版社)
D『神像の呪符『甲馬子』集成』川野辺正(東方出版)

●越田 稜(こしだ たかし)学習院大学非常勤講師
著書:『アジアの教科書に書かれた日本の戦争〈東アジア編・東南アジア編〉』『ヨーロッパの教科書にに書かれた日本の戦争』『アメリカの教科書に書かれた日本の戦争』(以上、梨の木舎)ほか
@『アメリカの化学戦争犯罪―ベトナム戦争枯れ葉剤被害者の証言』北村元(梨の木舎)
 ベトナム戦争におけるアメリカの化学戦争犯罪・枯れ葉作戦は40数年経っても全くの未清算。米軍犯罪による夥しい被害をくまなく究め、かつ支援活動を続ける一ジャーナリストの告発はアメリカの「いま」をも訴えている。
A『ジェンダーの視点からみる日韓近現代史』日韓「女性」共同歴史教材編纂委員会編(梨の木舎)
 韓国と日本の女性たちがはじめて共につくった近現代史の力作。韓国の女性たちが、日本の植民地時代・朝鮮戦争下をどのように生き抜き、独裁政権のもとでどのように闘ってきたかを知らされる。
B『未来をひらく歴史―東アジア3国の近現代史』日中韓3国共通歴史教材委員会編(高文研)
C『北朝鮮を知るための51章』石坂浩一編著(明石書店)
D『アチェの声―戦争・日常・津波』佐伯奈津子著(コモンズ)

●小長谷有紀(こながや ゆき)国立民族学博物館教授
著書:『世界の食文化第3巻 モンゴル』(農文協)、『モンゴル草原の生活世界』(朝日選書)、『アジア読本モンゴル』(河出書房新杜)など
@『モンゴル医薬学の世界』徳力格爾(出帆新社)
 モンゴル医学の理論と歴史についてはすでに邦訳もあるが、その処方による薬学に関しては本邦初の基礎的資料として重要である。
A『世界の食文化第1巻 韓国』朝倉敏夫(農文協)
 『食は韓国にあり』などすでに韓国を食文化から研究する第一人者による最新作。現地の人びとの声を聞くことができる。
B『ミクロネシアを知るための58章』印東道子(明石書店)
C『南太平洋における土地・観光・文化』白川千尋(明石書店)
D『歩く学問 ナマコの思想』鶴見俊輔ほか(コモンズ)

●舘野 あきら(たての あきら)自由寄稿家(韓国・アジア・出版)
著者:『ある弁護士のユーモア』(東方出版、訳書)、『36人の日本人、韓国、朝鮮へのまなざし』『韓国・朝鮮と向き合った36人の日本人』(明石書店、編著)、『韓国式発想法』(NHK生活人新書)
@『ジェンダーの視点からみる日韓近現代史』日韓「女性」共同歴史教材編纂委員会編(梨の木舎)
 日韓の女性たちの手になる初めての近現代史。盛り沢山な内容で、一瞬逡巡させられるが、一本の確かな線が貫通している。だから読み進めるのがこころよい。
A『在日の原風景』崔碩義(明石書店)
 日頃、目に付かない雑誌に発表された論考・エッセイなどを一冊にしたもの。文章は著者の飾らない人柄をよく表現している。とくに身辺雑記が秀逸。
B『コリアン・ディアスポラ』ソニア・リャン(明石書店)
C『無所有』法頂(東方出版)
D『劇画・霧社事件』邸若龍(現代書館)

●鳥居千代香(とりい ちよか)帝京大学・帝京大学短期大学助教授
著書:『インド女性学入門』(新水社)、訳書:『ダウリーと戦い続けて〜インドの女性と結婚持参金』(つげ書房新社)ほかインド、アラブ関係など訳書を多数出している。
@『デーヴダース 魅惑のインド』S.チョットパッドヤーイ(出帆新社)
 インド映画史上最も高価な(約13億円)映画で、インドで大成功を収め世界的にも高い評価を得た映画の原作。
A『インドの女性問題とジェンダー』マラ・セン(明石書店)
 経済発展する今日のインドで最も重要な三つの問題、寡婦殉死・ダウリー問題・女児問題に焦点をあてている。
B『マザー・テレサ 最後の愛のことば』ホセ・ルイス・ゴンザレス・バラード(明石書店)
C『沈黙の向こう側』ウルワシー・ブターリア(明石書店)
D『イラクとともに三〇年』阿部政雄(出帆新社)

●波田野直樹 (はたの なおき)ウェブサイト『アンコール遺跡群フォトギャラリー』主宰(http://www.angkor-ruins.com)
著書:『アンコール遺跡を楽しむ』(連合出版)、『テレワークで仕事が変わる・会社が変わる!』(日本実業出版)ほか。
@『アンコール・ワットを読む』石澤良昭編(連合出版)
 アンコール遺跡をより詳しく理解するための恰好の解説書。やや専門的ではあるが、若手研究者による最新の研究報告は新鮮である。
A『ブラザー・エネミー』ナヤン・チャンダ(めこん)
 主に1970年代から80年代にかけてのインドシナをめぐる国際関係を詳細に描いて、当時のカンボジアをめぐる国際情勢を理解するための最良の一冊。
B『カンボジアと日本』今川幸雄(連合出版)
C『カンボジアの民話世界』高橋宏明(めこん)
D『カンボジアゼロ年』F・ポンショー(連合出版)

●八木久美子(やぎ くみこ)東京外語大学教授
著書『イスラム教徒へのまなざし』『人種主義の実態と差別撤廃に向けた取り組み』(現代人文社)、『イスラム服の訴えるもの』『地球村の行方』(新評論)、『二つの死に挟まれた死』『現代宗教』(東京堂出版)
@『写真集 イラク戦争下の子供たち』豊田直己(第三書館)
 権力から遠い所にいる子供たちこそが、戦争のむき出しの姿をみているのだということを見せつける。
A『イランを知るための65章』岡田恵美子他編(明石書店)
 イスラムの一言では済ますことのできない、イランの豊かな文化について多面的に知ることができる。
B『イスラームの世界観』青柳かおる(明石書店)
C『チョムスキー』ノーム・チョムスキー(明石書店)
D『テロ死/戦争死』第三書館編集部(第三書館)

●渡辺 悟(わたなべ さとる) ジャーナリスト、カメラマン
著書:『クルド、イラク、窮屈な日々 戦争を必要とする人びと』(現代書館)
@『クルド・国なき民族のいま』勝又郁子 (新評論)
 イラクのクルド民族は、イラク人でありながらアメリカを支持した。なぜか? 悲哀の歴史を現地調査から紐解く。
A『テロ死/戦争死 フォト・ドキュメント』第三書館編集部(第三書館)
 戦争報道から「死」が見えにくくなった。直截なタイトルどおり、あえて死者と向き合わせる。
B『イスラム教』安倍治夫(現代書館)
C『写真集 イラク戦争下の子供たち』豊田直巳(第三書館)
D『イラク 占領と核汚染』森住卓(高文研)

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■年度版「私の選んだアジアの本

【2005年度
私の選んだアジアの本

●市原 基(いちはら もとい)写真家
著書:『南極海』(岩波書店)、『鯨の海・男の海』(ぎょうせい)、『アジア・モンスーン』(朝日新聞社)、『MONSOON』(エディションスティンメル社/英、独版)『貌(かお)三国連太郎』、『アジアから』(ともに第三書館)
@ 『バングラデシュを知るために』 大橋正明・村山真弓編著(明石書店)
長期間に渡るバングラデシュとの関わりから得た大橋氏の豊富な情報量により、現地の姿が読みとれる。
A 『写真集 イラク戦争下の子供たち』豊田直巳(第三書館)
子供の日常生活の中に、戦争とは何かを問う、著者の視線が優しい。
B 『虹と雲』ドルジ・ワンモ・ワンチ(平河出版社)
C 『ラオスは戦場だった』竹内正右(めこん)
D 『多文化共生のジレンマ』加藤秀俊(明石書店)

●伊藤 武(いとう たけし)作家
著書:『身体にやさしいインド』、『図説インド神秘事典』、『全アジアを喰らう』、『秘伝マルマ ツボ刺激ヨーガ』(以上、講談社)、『竜の眠る都』(大栄出版)など
@ 『ヴェールを脱いだインド武術』伊藤武(出帆新社)
 謎につつまれてきたインド武術の思想、歴史、技術、身体観を日本で初めて紹介。
A 『アジア・美の様式 上下』オフィス・ド・リーフ(連合出版)
 詳細な図説によるアジア美術史概観。南アジア、東南アジア、中央アジアのコレクションは貴重である。
B 『アンコール遺跡』G・セデス(連合出版)
C 『タイの花鳥風月』レヌカー・ムシカミン(めこん)
D 『ごちそうはバナナの葉の上に』渡辺玲(出帆新社)

●伊藤哲司(いとう てつじ)茨城大学人文学部助教授
著書:『ベトナム 不思議な魅力の人々―アジアの心理学者 アジアの人々と出会い語らう』(北大路書房)、『ハノイの路地のエスノグラフィー―関わりながら識る異文化の生活世界』(ナカニシヤ出版)、『心理学者が考えた「心のノート」逆活用法』(高文研)、『改訂版・常識を疑ってみる心理学―「世界」を変える知の冒険』(北樹出版)ほか
@ 『観光コースではないベトナム―歴史・戦争・民族を知る旅』伊藤千尋(高文研)
 最近ちょっとしたブームの「ベトナム」。しかしその地を訪れるなら、その戦争等の歴史にもぜひ触れてほしい。
A 『カラー図版 日本の侵略戦争とアジアの子ども』久保井規夫(明石書店)
 戦争への動員は子どもたちへの宣伝も大いに利用された。今の時代の趨勢を見極めるためにも知っておきたい。
B 『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』中塚明(高文研)
C 『はるか遠い日―あるベトナム兵士の回想』レ・リュー(めこん)
D 『北方四島ガイドブック』ピースボート北方四島取材班(第三書館)

●大竹桂子(おおたけ けいこ)エッセイスト、むさしのスカーレット・アジアお話の会でアジアの本を訳し、子どもたちに読み聞かせの活動をしている。
著書:モンゴル民話『みどりの馬』(てらいんく)
@ 『サンサン』曹文軒(てらいんく)
 1962年ごろの中国。少年サンサンを囲む草ぶかい田舎の生活。なつかしく、いとおしい情景がひろがる物語。
A 『満ちてくる湖』細川呉港(平河出版社)
 中国・内モンゴル自治区の大草原。そこにある2つの湖が、砂を噛んで満ちてきているという現地調査のノンフィクション。
B 『アンコール・ワットの青い空の下で』ペン・セタリン(てらいんく)
C 『モンゴル文学への誘い』芝山豊・岡田和行編(明石書店)
D アジアブックス04『不老不死の身体』加藤千恵(大修館書店)

●加藤 剛(かとう つよし)京都大学教授
著書:『時間の旅、空間の旅―インドネシア未完成紀行』(めこん)、『変容する東南アジア社会―民族・宗教・文化の動態』(めこん、編著)
@ 『変容する東南アジア社会 民族・宗教・文化の動態』加藤剛編著(めこん)
 自分の本を選ぶのは勇気がいる。朝日新聞書評担当・野村進氏が「2004年の3冊」に選んでくれたのが心強い。
A 『現代ベトナムを知るための60章』今井昭夫・岩井美佐紀編著(明石書店)
 ご存知のシリーズのひとつ。中堅・若手の日本人ベトナム研究者を中心にこのレベルの本を編めるのがすごい。
B 『カツオとかつお節の同時代史』藤林泰・宮内泰介編著(コモンズ)
C 『ラオスは戦場だった』竹内正右(めこん)
D 『写真集イラク戦争下の子供たち』豊田直巳(第三書館)

●川人 博(かわひと ひろし)弁護士、東京大学講師
著書:『過労死自殺』(岩波新書)、『テキストブック現代の人権 第3版』(日本評論社、共著)、『拉致と強制収容所』(朝日新聞社、共著)
@ 『北朝鮮の人権―世界人権宣言に照らして』ミネソタ弁護士会国際人権委員会・アジアウォッチ編(連合出版)
 北朝鮮の人権状況を、アメリカの法律家が国際人権法の視点から体系的・実証的に分析した書の邦訳。いまの北朝鮮問題を語るうえで欠かせないテキスト。
A 『カンボジアと日本』今川幸雄(連合出版)
 元カンボジア大使が明らかにした日本外交のプロセスは、21世紀日本外交の方向性を示している。
B 『7人の女の物語』ロキア・R・カビール(連合出版)
C 『韓国はなぜ北朝鮮に弱いか』田中明(晩聲社)
D 『中国の人権―政治的弾圧と人権侵害の実態』アムネスティ・インターナショナル(明石書店)

●小島康誉(こじま やすたか)中国歴史文化遺産保護サイト理事長
著書:『命燃えて』(プラス)ほか
@ 『玄奘三蔵のシルクロード 中国編』安田暎胤(東方出版)
 玄奘三蔵さまゆかりの薬師寺管主安田暎胤猊下が、その足跡を自らたどり、克明にしるした好著。順惠夫人による写真も臨場感あふれる。
A 『シルクロード ニヤ遺跡の謎』中井真孝ほか編(東方出版)
 国家管理の厳しい中国、その大沙漠で13年にわたりおこなわれた日中共同隊のもようが、300点の写真で生々しく紹介されている。
B 『シルクロード―飛天の舞いに魅せられて』大塚清吾(大修館書店)
C 『シルクロードの風』静慈園(東方出版)
D 『タクラマカン縦断紀行』生島佳代子(連合出版)

●鈴木裕子(すずき ゆうこ)女性史研究者
著書:『フェミニズムと戦争』(マルジュ社)、『フェミニズムと朝鮮』(明石書店)、『従軍慰安婦・内鮮結婚』(未来社)、『天皇制・「慰安婦」・フェミニズム』(インパクト出版会)
@ 『世界の子どもの本から「核と戦争」がみえる』長谷川潮・きどのりこ編著(梨の木舎)
 大変な労作である。これを読んでわたくしもここに紹介されている一つ一つの本を手に取って読んでみたい気持ちにかき立てられた。
A 『山田耕筰さん、あなたたちに戦争責任はないのですか』森脇佐喜子(梨の木舎)
 この本のもとになったのは、著者の大学3年のレポートだという。「仕方がなかった」という「神話」に疑問をいだいて、丁寧に事実をさぐり、跡づけた。著者のような若い世代がこのような姿勢で戦争に向き合うことに希望をみいだす。
B 『チョプスイ―シンガポールの日本兵たち』劉坑(めこん)
C 『母の遺したもの』宮城晴美(高文研)
D 『韓国女性人権運動史』韓国女性ホットライン連合編(明石書店)

●田村志津枝(たむら しづえ)ノンフィクション作家、日本大学講師(映画論)
著書:『若山牧水 さびしかなし』、『悲情城市の人びと』、『台湾人と日本人』(以上、晶文社)、『はじめに映画があった』(中央公論新社)、『台湾発見』(朝日文庫)ほか
@ 『世界客家大会を行く』緒方修(現代書館)
 国家という枠組みなどまるで念頭にないかのように、自在に集まり、情報を交わして助け合い、ネットワークを築く客家の人々。学問的にまとめようとしていないぶん、実態が窺えて面白い。
A 『台湾先住民・山の女たちの「聖戦」』柳本通彦(現代書館)
 日本統治時代末期、台湾の先住少数民族の女性たちに負わされた、筆舌に尽くしがたい苛酷な「任務」。根気よく事実を追った貴重な聞き書きだ。
B 『テロの帝国 アメリカ』ノーム・チョムスキー(明石書店)
C 『上海歴史ガイドマップ』木之内誠(大修館書店)
D 『タンキー(アジア民俗写真叢書3)』加藤敬(平河出版社)

●西里扶甬子(にしさと ふゆこ)ジャーナリスト、外国特派員協会会員、出版ネッツ会員、POW研究会員
著書:『生物戦部隊731―アメリカが免罪した日本軍の戦争犯罪』(草の根出版会)、『七三一部隊の生物兵器とアメリカ―バイオテロの系譜』(かもがわ出版、訳著)
@ 『七三一部隊の生物兵器とアメリカ―バイオテロの系譜』西里扶甬子訳著(かもがわ出版)
 原著は、1989年英国のテレビ番組から生まれた。訳者は当時番組の取材チーム唯一の日本人であり、15年後、9-11以降の世界を見渡し、生物兵器を巡る新たな一章を書き下ろした。
A 『裁かれた七三一部隊』森村誠一編(晩聲社)
B 『加害と赦し』東史朗さんの南京裁判を支える会編(現代書館)
C 『バターン 遠い道のりのさきに』レスター・テニー(梨の木舎)

●西野瑠美子(にしの るみこ)フリー・ジャーナリスト
著書:『戦場の慰安婦』、『従軍慰安婦のはなし』、『エルクラノはなぜ殺されたのか』(以上、明石書店)ほか
@ 『韓国女性人権運動史』韓国女性ホットライン連合編(明石書店)
 韓国社会に内在する女性に対する暴力に取り組んできた韓国女性ホットライン連合が、韓国における女性運動の成果を1980年から1990年代を中心にまとめあげた。
A 『日本軍に棄てられた少女たち』プラムディヤ・アナンタ・トゥール(コモンズ)
 日本軍により「慰安婦」としてブル島に連れて行かれ、置き去りにされた女性たち。記憶からも国家からも忘れ去られた女性たちを棄てたのは誰か?
B 『日本毒ガス作戦の村』石切山英彰(高文研)
C 『どこへ行く(クオ・ヴァディス)?』花崎皋平(コモンズ)
D 『戦場の慰安婦』西野瑠美子(明石書店)

●樋口英夫(ひぐち ひでお)写真家
著書:『黄衣のゆらぎ』、『海の狩人』(平河出版社、共著)、『風景のない国・チャンパ王国』(平河出版社)、『チャンパ』(めこん、共著)、『雲南・北ラオスの旅』(めこん)ほか
@ 『海が見えるアジア』門田修(めこん)
 気持ちよい読後感の本。いくら巧みな写真や文章でもアジアをつまみ食いした本は弱い。著者の姿勢に共鳴する。
A 『虹と雲―王妃の父が生きたブータンの現代史』ドルジ・ワンモ・ワンチュック(平河出版社)
 王妃が克明に綴る父の波瀾な生涯とブータン現代史の暗部。挿入された一族のアルバム写真に写真の力を見る。
B 『ブータンのツッチュ祭(アジア民俗写真叢書12)』永橋和雄・今枝由朗(平河出版社)
C 『カルカッタ(アジア民俗写真叢書8)』廣津秋義(平河出版社)
D 『雲南・カイラース…四〇〇〇キロ』鎌澤久也(平河出版社)

●松枝 到(まつえだ いたる)和光大学表現学部イメージ文化学科教授
著書:『アジアとはなにか』、『アジア言遊記』(ともに大修館書店)、『外のアジアへ、複数のアジアへ』(思潮社)、『密語のゆくえ』(岩波書店)、『奪われぬ声に耳傾けて』(書肆山田)ほか
@ 『アジア・映画の都』松岡環(めこん)
 アジアの「いま」を知るには、映画が絶好。アジア映画の紹介に奔走した著者の歩みから多様なアジアが見える。
A 『東洋学の系譜』江上波夫編(大修館書店)
 近世になって成立したアジア学の学者群像。いかにアジアが語られてきたかを知るために。続編、欧米編もある。
B 『アラブの人々の歴史』A.ホーラーニー(第三書館)
C 『朝鮮通信使とその時代』上田正昭ほか(明石書店)
D 『孔子の見た星空』福島久雄(大修館書店)

●村井吉敬(むらい よしのり)上智大学教員
著書:『エビと日本人』(岩波書店)、『サシとアジアと海世界』(コモンズ)、『インドネシアを知るための50章』(明石書店、共編著)ほか
@ 『カツオとかつお節の同時代史』藤林泰・宮内泰介編著(コモンズ)
 バナナ、エビ、ヤシに次ぐ鶴見良行の市民の歩くアジア学第4話。食卓からソロモン、モルディブまで、戦争までも語られる重厚にして読ませる快著である。
A 『日本軍に棄てられた少女たち』プラムディヤ・アナンタ・トゥ−ル(コモンズ)
 インドネシア・ブル島に政治犯として10年以上抑留されたアジアを代表する文学者がそのブル島で聞き書きした重い内容のドキュメントである。
B 『変容する東南アジア社会』加藤剛編著(めこん)
C 『インドネシアを知るための50章』村井吉敬・佐伯奈津子共編著(明石書店)
D 『徹底解剖100円ショップ』アジア太平洋資料センター編(コモンズ)

●森枝卓士(もりえだ たかし)写真家、ジャーナリスト
著書:『新・食文化入門』(弘文堂、編著)、『考える胃袋』(石毛直道氏との対談。集英社新書)、『世界の食文化 第4巻 ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー』(農文協)ほか
@ 『世界の食文化 第2巻 中国』周達生(農文協)
 アジアを見る視点に食文化は欠かせないし、中国がそのキーでもある。中国食文化研究の第一人者の労作。
A 『水俣・韓国・ベトナム』桑原史成(晩聲社)
 アジアと日本がどう変わったかを知るにも先達の仕事を見ることは欠かせない。安直に絶版にしない出版社も偉い。
B 『スパイスが変えた世界史』E&F・ユイグ(新評論)
C 『世界文明における技術の千年史』アーノルド・パーシー(新評論)
D 『文明の人口史―人類と環境との衝突、一万年史』湯浅赳男(新評論)

●湯本浩之(ゆもと ひろゆき)(特活)開発教育協会事務局長、(特活)国際協力NGOセンター理事
著書:『内発的発展と教育―人間主体の社会変革とNGOの地平』(新評論、共著)
@ 『学び・未来・NGO』若井晋・池住義憲ほか編(新評論)
 NGOは、何のために誰のために存在するのか。経験豊富なNGO関係者らがその存在と課題を深く省察している。
A 『世界の開発教育』オードリー・オスラー編(明石書店)
 60年代に欧米で生まれた開発教育。その後の展開や今後の展望を欧州の事例を交えながら多面的に紹介している。
B 『参加型ワークショップ入門』ロバート・チェンバース(明石書店)
C 『ボランティア未来論』中田豊一(コモンズ)
D 『地球買いモノ白書』どこからどこへ研究会(コモンズ)


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■年度版「私の選んだアジアの本

【2004年度】私の選んだアジアの本

●稲畑耕一郎(いなはた こういちろう)早稲田大学教授
著書:『神と人との交響楽―中国 仮面の世界』(農文協)、『一勺の水―華夷跋渉録』(二玄社)、『中国古代文明の原像』(アジア文化交流協会、共編著)、『万暦十五年(黄仁宇)』(東方書店、共訳)ほか。
@『修訂 地獄変―中国の冥界説』澤田瑞穂(平河出版社) 中国の地獄説を紹介し、それが単に仏教や道教のものではなく、民衆の信仰と渾然一体となっている姿を描き、基層の精神文化に光をあてる。
A『東洋学の系譜〈欧米篇〉』高田時雄編著(大修館書店) ヨーロッパにおける東洋学の開拓者、グラネ、カールグレン、マスペロなどの生涯とその仕事の意義を紹介する。
B『雨がホワホワ―中国語のある風景』相原茂(現代書館)
C『中国広西壮族歌垣調査記録』手塚恵子(大修館書店)
D『中国博物学の世界』小林清市(農文協)

●内田雅敏(うちだ まさとし) 弁護士
著書:『懲戒除名』『敗戦の年に生まれて』(ともに太田出版)、『弁護士・法の現場の仕事人』『「戦後補償」を考える』(ともに講談社) 、『「戦後」の思考』(れんが書房新社)。
@『福沢諭吉のアジア認識』安川寿之輔(高文研) 「脱亜入欧」とはアジアを踏みつけ欧州に近づけであった。福沢諭吉の虚像と実像を完膚なきまでに明らかにし、併せて丸山眞男批判を展開。
A『中国撫順戦犯管理所職員の証言』新井利男資料保存会編(梨の木舎) 撫順での日本人戦犯に対する中国側の好意的な態度については中国帰還者連絡会の証言によって明らかだが、本書もそれを裏付けている。
B『東郷元帥は何をしたか』前田哲男・纐纈厚(高文研)
C『旅行ガイドにないアジアを歩く 香港』和仁廉夫(梨の木舎)
D『国籍条項・心の壁の撤廃まで』横浜市職員採用の国籍条項撤廃をめざす連絡会編(明石書店)

●勝又郁子(かつまた いくこ)ジャーナリスト
著書:『クルド・国なき民族のいま』(新評論)、『イラク わが祖国に帰る日―反体制派の証言』(NHK出版)、『非聖戦』(筑摩書房、共訳)。
@『移民の一万年史』ギ・リシャール(新評論) 人の移動は、飢え、迫害、富への希求といった諸々の要因に突き動かされて、たゆみない。移民の視点から世界史を鳥瞰する壮大な物語。
A『漢字のいい話』阿辻哲次(大修館書店) 今や、語彙の乏しい現代人が漢字を再発見する時代だ。漢字学者の乱れ箱を覗かせてもらったようで、頁を綴るごとに心が踊る。
B『スパイスが変えた世界史』E&F・ユング(新評論)
C『シリア大統領アサドの中東外交』夏目高男(明石書店)
D『イスラム社会のヤクザ』佐藤次高・清水宏祐・八尾師誠・三浦徹(第三書館)

●越田清和(こしだ きよかず)NPO法人アジア太平洋資料センター理事
著書:『アジアの先住民族』(解放出版社)、『かわりゆく農村のくらし』(岩崎書店)ともに共著。
@『どこへ行く(クオ・ヴァディス)?』花崎皋平(コモンズ) 北海道に住む在野の哲学者のエッセイ集。ほのぼのとした文章で書かれており、自分の日常から考えることこそが哲学だと教えてくれる。
A『参加型開発とNGOプロジェクト』伊藤達男・伊藤幸子(明石書店) ベトナムでの実践をもとに書かれている。アジアで農村開発に関わろうとする人にとって、学ぶことが多い。
B『ODAをどう変えればいいのか』藤林泰・長瀬理英編著(コモンズ)
C『中国撫順戦犯管理所職員の証言』新井利男資料保存会(梨の木舎)
D『現代朝鮮の歴史』ブルース・カミングス(明石書店)

●瀬川千秋(せがわ ちあき)翻訳家・フリーライター
著書:『闘蟋─中国のコオロギ文化』(大修館書店)
@『四川省大涼山イ族創世神話調査記録』工藤隆(大修館書店) イ族の創世神話「ネウォテイ」全5680編を収集した労作。『古事記』以前の日本文化最古層を探る上でも貴重な資料だ。
A『中国自然詩の系譜』田部井文雄(大修館書店) 自然詩の成り立ちと展開を、詩経から唐詩にいたる作品群とともに考察する。中国人の自然観が浮き彫りにされ興味深い。
B『日本神道の現代的意義』王守華(農文協)
C『中国古代農業博物誌考』胡道静(農文協)
D『日本深層文化を歩く旅』海原峻(梨の木舎)

●高橋ゆり(たかはし ゆり)ミャンマー語通訳・翻訳者、日本語教育専門家
著書:『変わりゆくのはこの世のことわり─マウン・ルーエイ物語』ティッパン・マウン・ワ(てらいんく、翻訳)
@『ツバメ飛ぶ』グエン・チー・フアン(てらいんく) 遠くなるベトナム戦争の記憶。ベトナム人自身が自らの体験を回想して語り、文学作品にまで昇華。
A『さよなら・再見』黄春明(めこん) 日本と台湾の長くて深い、泣き笑いのおつきあいを象徴する表題作ほか、味のある短編集。再版が待たれる。
B『北ビルマ、いのちの根をたずねて』吉田敏浩(めこん)
C『ドキュメント・ビルマ民主化運動1988』田辺寿夫(梨の木舎)
D『カルティニの風景』土屋健治(めこん)

●辻本久夫(つじもと ひさお)兵庫県在日外国人教育研究協議会事務局長
著書:『兵庫のなかの朝鮮』(明石書店、編著)ほか。
@『移民の居住と生活』駒井洋監修(明石書店) 「グローバル化する日本と移民問題」の第2編として出版され、日本での移民が短期から長期に定住する方向にある現在を、労働、医療など多様な視点からまとめている。
A『日韓の架け橋となった人びと』東アジア学会(明石書店) 日朝交流の基礎を築いた6人(韓国側3人)をとりあげている。李参平から田内千鶴子まで幅広い人物紹介である。
B『華僑のいま』広田寿子(新評論)
C『近代の朝鮮と兵庫』兵庫朝鮮関係研究会編(明石書店)
D『沖縄のハルモニ─大日本売春史』山谷哲夫編著(晩聲社)

●寺田勇文(てらだ たけふみ)上智大学教授
著書:『東南アジアのキリスト教』(めこん)、『現代フィリピンを理解するための60章』(明石書店)ともに編著、ほか。
@『女性が語るフィリピンのムスリム社会』石井正子(明石書店) ミンダナオの地域紛争と女性とのかかわりを、インタビュー資料をもとに描いた労作。平成14年度国際開発研究・大来賞受賞。
A『ラオス概説』ラオス文化研究所(めこん) 現在のところ、ラオスのことを知るのにこれ以上の本はない。
B『沈黙の向こう側』ウルワシー・ブターリア(明石書店)
C『道は、ひらける─タイ研究の五〇年』石井米雄(めこん)
D『漂海民バジャウの物語』H・アルロ・ニモ(現代書館)

●野中章弘(のなか あきひろ)アジアプレス・インターナショナル代表
著書:アジアプレス・インターナショナル『アジア大道曼陀羅』(現代書館)、『メディアが変えるアジア』(岩波書店)、『アジアのビデオジャーナリストたち』(はる書房)いずれも編著、ほか。
@『テロの帝国 アメリカ』ノーム・チョムスキー(明石書店) アメリカは世界をどのように再編しようとしているのか。中東で起きている事態の背景を読む。
A『日本と韓国の歴史共通教材をつくる視点』歴史教育研究会(梨の木舎) 朝鮮半島を知るには歴史から学ぶこと。日韓をへだてているものは何かを考えたい。
B『ホテル・ガンジスビュー』松本榮一(現代書館)
C『道は、ひらける─タイ研究の五〇年』石井米雄(めこん)
D『月のしずくが輝く夜に』チカップ美恵子(現代書館)

●野火杏子(のび きょうこ)舞踊家、演出家
著書:『マサラムービー物語』『インド映画にゾッコン』(ともに出帆新社)、『ライフサイクルと家族の危機』(金子書房、共著)ほか
@『天平勝宝のインド舞踊』河野亮仙(出帆新社) 日常的なエピソードと深淵なる歴史哲学とを縦横無尽につなげる独特の語り口にはめられる。
A『バラタナティアムを踊る』マチコ・ラクシュミー(出帆新社) バラタナティアムは踊っているだけでもよいが、知識のスパイスが味を引き立てる。
B『ごちそうはバナナの葉の上に』渡辺玲(出帆新社)
C『ペシャーワル急行』クリシャン・チャンダル(めこん)
D『カタカリ万華鏡』河野亮仙(平河出版社)

●本田徹(ほんだ とおる) NPO法人 シェア=国際保健協力市民の会代表理事・医師
 著書:『アジア旅行者のための感染症対策』(連合出版)、『小規模社会開発プロジェクト評価―人々の暮らしは良くなっているか』(国際開発ジャーナル社)共に共編著、ほか。
@『アンコール遺跡を楽しむ』(連合出版) アンコール遺跡はカンボジア理解の原点。本書は、具体的・懇切であることに加え、CD-ROMを含む豊富な画像情報で、アンコールへのすばらしい旅へと誘なってくれる。
A『世界は日本・アジアをどう伝えているか』(連合出版) 練達の記者による、海外メディアという鏡に映った<日本の姿>。日本や日本人のあり方が、外の世界との関係性の中ではじめて客観性を得るという、当たり前の真実に迫る。
B『イスラームを知る32章』ルカイヤ・ワリス・マクスウド(明石書店)
C『素顔のイラク』早坂隆(連合出版)
D『多文化社会への道』駒井洋監修(明石書店)

●真鍋祐子(まなべ ゆうこ)国士舘大学助教授
著書:『キャンパスに見る異文化─韓国ぐらしの素描』『烈士の誕生』(ともに平河出版社)、『光州事件で読む現代韓国』(平凡社)
@『ソウル、韓国語世界への旅』鴨良子(明石書店) 80年代韓国の人々の暮らしに溶けこんだ著者の誠実な人柄が、飾らない言葉の行間からにじみ出てくる。 A『アジアの子ども』(財)アジア保健研修財団「アジアの子ども」編集委員会(明石書店)
 歴史的負荷と国際情勢のはざまに生きるアジアの国々の生活風景が、子どもの目を通して生き生きと描かれる。
B『あじあブックス2 朝鮮の物語』野崎充彦(大修館書店)
C『あじあブックス51 弥勒信仰のアジア』菊地章太(大修館書店)
D『巫神との饗宴』加藤敬(平河出版社)

●安川寿之輔(やすかわ じゅのすけ)名古屋大学名誉教授
著書:『福沢諭吉のアジア認識』『福沢諭吉と丸山眞男』(ともに高文研)、『増補・日本近代教育の思想構造』『大学教育の革新と実践』(ともに新評論)、『女性差別はなぜ存続するのか』『日本の近代化と戦争責任』(ともに明石書店)など。
@『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』中塚明(高文研) 日本と朝鮮半島の関係史ではまずこの本から始めることを勧める。平明・簡潔な叙述で本書に述べられている知識・認識が日本市民の「常識」となることを願っている。
A『イラク─湾岸戦争の子どもたち』森住卓(高文研) イラクへの自衛隊の派遣に賛成した人たちに、まずはこの写真を見て欲しい。嘘や言い逃れはもう許されないだろう。
B『上海歴史ガイドマップ』木之内誠(大修館書店)
C『旅行ガイドにないアジアを歩く』シリーズ(梨の木舎)
D『観光コースでない』シリーズ(高文研)

●湯川武(ゆかわ たけし)慶応義塾大学教授
著書:『アラブの人々の歴史』(第三書館、監訳)、『イスラーム国家の理念と現実』(栄光教育文化研究所、編著)、『世界史辞典』(角川書店、共編著)ほか。
@『インティファーダ・石の革命』パレスチナ蜂起統一民族指導部編(第三書館) 第2次インティファーダ(1999年〜)以来今日に至るまでの悲惨で過酷なパレスチナの現状を見るにつけ、インティファーダとはいったい何なのか、パレスチナ民衆のやむにやまれぬ気持ちとはどう表現されうるのか、いろいろと考えさせてくれる。
A『イスラーム世界事典』片倉もとこ編集代表(明石書店) 世界各地のムスリムの生活を知るに格好の事典。
B『イラク─湾岸戦争の子供たち』森住卓(高文研)
C『テロの帝国 アメリカ』ノーム・チョムスキー(明石書店)
D『写真集 イラクの子どもたち』豊田直巳(第三書館)


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■年度版「私の選んだアジアの本

【2003年度】私の選んだアジアの本

●今枝由郎(いまえだ よしろう)フランス国立科学研究センター(CNRS)主任研究員、元ブータン国立図書館顧問
著書:『ブータン─―変貌するヒマラヤの仏教王国』(大東出版社)、『ブータンの民話と伝説』(白水社、共訳)ほか
@『僧侶と哲学者』ルウェル、リカール(新評論)フランスを代表する無神論哲学者と、チベット仏教に出家したフランス人科学者の父子、東西の対話。
A『ブータン・風の祈り』田淵暁・今枝由郎(平河出版社)一村寺での生活・祭りを通してのブータン概説。
B『チベットの僧院生活』小野田俊蔵(平河出版社)
C『虹の階梯』中沢新一(平河出版社)
D『曼荼羅イコノロジー』田中公明(平河出版社)

●内海愛子(うつみ あいこ)恵泉女学園大学教授
著書:『ジャワ・オランダ人少年抑留所』(梨の木舎、共著)『語られなかったアジアの戦後』(梨の木舎、編著)、『講座 世界史8 戦争と民衆』(東大出版会、共著)ほか
@『ヤシの実のアジア学』鶴見良行・宮内泰介編(コモンズ)『エビの向こうにアジアが見える』(学陽書房)と共に、アジアの歩き方を教えてくれる。歩く中で見えてきたもの、それを考え続け、調査するなかでまとめられたこの二冊の本は、いまアジアに関心をもって歩く人には必ず目を通してほしい本。
A 『オーストラリア日系人強制収容の歴史』永田由利子(高文研)オーストラリアの大学で教える永田が日豪での聞き書きを含めてまとめた力作。
B『エビの向こうにアジアが見える』鶴見良行・村井吉敬(学陽書房)
C『ジャワで抑留されたオランダ人女性の記録』ネル・ファン・デ・グラーフ(梨の木舎)
D『ぼくたちは10歳から大人だった』ハンス・L・ズヴィッツアー(梨の木舎)

●小倉紀蔵(おぐら きぞう)東海大学助教授
著書:『韓国、引き裂かれるコスモス』(平凡社)、『韓国は一個の哲学である』(講談社)、『韓国語はじめの一歩』(筑摩書房)ほか
@『姜在彦著作集(1)〜(5)』姜在彦(明石書店)朝鮮の近代や思想を知りたい方は、まず何よりも姜在彦先生の主要著書を読む必要があると信じます。
A『「親日」と「反日」の文化人類学』崔吉城(明石書店)韓国人の精神性を深く抉り出す崔吉城先生は、日本と韓国をバランスよく眺めることのできる希有な学者です。
B『あじあブックス2 朝鮮の物語』野崎充彦(大修館書店)
C『烈士の誕生』真鍋祐子(平河出版社)
D『恨の人類学』崔吉城(平河出版社)

●河野孝之(かわの たかし)児童文学研究者
著書:『児童文学批評・事始め』(てらいんく)、『図説子どもの本・翻訳の歩み事典』(柏書房)ともに共著
@『サンサン』曹文軒(てらいんく)文化大革命前、江南の農村の<草ぶきの学校>。校長の息子サンサンをめぐる人々。児童文学の枠を越えた感動作だ。
A『あじあブックス35・36 中国科学幻想文学館 上・下』武田雅哉・林久之(大修館書店)SFを<驚異の感覚>として捕らえ、中国古典文学から現代までの流れを描いた本邦初の中国SF史に感嘆!
B『カバランの少年』李潼(てらいんく)
C『植民地台湾の児童文化』游珮芸(明石書店)
D『モンシル姉さん』権正生(てらいんく)

●小滝透(こたき とおる)作家
著書:『神の世界史イスラーム教・キリスト教・ユダヤ教(三部作)』(河出書房新社)、『ヒトはなぜ立って歩けるのか』『イスラームの流れといま』(いずれも第三書館)ほか
@『イスラム社会のヤクザ』佐藤次高(第三書館)イスラム世界を表向きに概観するとき、「侠」の徒を見出すのはむずかしい。だがいったんなかに入ったとき、そこには無数の男気を持って事に当たる一団が自ずと浮き彫りにされてくる。この書はその存在に光を当て、外部世界に紹介した貴重なパイオニア・ワークと言えるであろう。
A『ポル・ポト伝』デービッド・チャンドラー(めこん)
B『近代中国のシャーマニズムと道教』志賀市子(勉誠出版)
C『雲南・カイラス…四〇〇〇キロ』鎌澤久也(平河出版社)
D『李登輝の一千日』周玉蒄(連合出版)

●斎藤千宏(さいとう ちひろ)日本福祉大学教授
著書:『NGOが変える南アジア』(コモンズ)、『NGO大国インド』(明石書店)ともに編著
@『開発援助か社会運動か』定松栄一(コモンズ)地域住民と現地NGOとの間で、文字通りの「参加型開発」を試みた著者の思索の記録。ネパールのタライ平野が舞台。
A『イスラーム世界事典』片倉もとこ編集代表(明石書店)事典でありながらコンパクトにまとめられた本書は、写真も多く、なかなか近づきがたいイスラームを身近なものにしてくれる。
B『世界の子ども兵』R・ブレット、M・マカリン(新評論)
C『なぜ、イスラームと衝突するのか』内藤正典(明石書店)
D『イスラーム教徒の言い分』ハッジ・アハマド(めこん)

●佐伯修(さえき おさむ)ライター
著書『上海自然科学研究所─―科学者たちの日中戦争』(宝島社)
@『タイ日大辞典』冨田竹二郎編(めこん)単なる「字引」ではなく、ことばから見たタイの文化、生活史全般にわたる百科全書というべき大労作。
A『漂海民バジャウの物語』H・アルロ・ニモ著、西重人訳(現代書館)バジャウの名は故鶴見良行氏の著作で覚えた。海を「壁」でなく「道」として使う彼らを物語のかたちで活写。
B『上海歴史ガイドマップ』木之内誠(大修館書店)
C『南海の軍閥 甘志遠』甘志遠(凱風社)
D『ジャポンヤ』アブデュルレシト・イブラヒム著、小松香織訳(第三書館)

●下川正晴(しもかわ まさはる)毎日新聞記者
著書:『ドキュメント金正日のすべて』(毎日新聞社)
@『ベトナムと日本』今川幸雄(連合出版)誠実かつ力量あるもと外交官の回顧録。ベトナムとの国交樹立を振り返り「人間のネットワーク」を説く。
A『サンダルの国』高橋敦史(連合出版)元雑誌編集者が写真と文でつづるアジア8カ国探訪記。人々の生の声と優しい笑顔が詰まっている。
B『アジア民族写真叢書1 万神』加藤敬(平河出版社)
C『韓国の小さな村で』神谷丹路(凱風社)
D『カレイスキー』鄭棟柱(東方出版)

●関満博(せき みつひろ)一橋大学教授
著書:『世界の工場/中国華南と日本企業』、『北東アジアの産業連携/中国北方と日韓の企業』『モンゴル/市場経済下の企業改革』共編(いずれも新評論)ほか
@『大連・空白の六百日』富永孝子(新評論)日本の満州時代の報告は数多くあるが、終戦後の混乱状態の具体的な報告は少ない。この本は、ご自分の経験を踏まえて、その混乱期の人々を克明に追跡した貴重な報告として興味深い。
A『モンゴル現代史』Ts・バトバヤル著、芦村京・田中克彦訳(明石書店)日本人のモンゴル観は「大草原」と「遊牧民」に傾斜している。だが、20世紀に入ってから、社会主義、そして市場経済への道を歩んでいる。それらを総合的に理解する数少ない好著である。
B『郷村建設理論』梁漱溟ほか(農文協)
C『北東アジアの未来像』福井県立大学北東アジア研究会(新評論)
D『学び・未来・NGO』若井晋ほか(新評論)

●張競(ちょう きょう)明治大学教授
著書:『天翔るシンボルたち』(農文協)、『近代中国と「恋愛」の発見』(岩波書店)、『美女とは何か─―日中美人の文化史』(晶文社)、『中華料理の文化史』『恋の中国文明史』(ともに筑摩書房)
@『日中文化交流史叢書(1)〜(10)』(大修館書店)日中双方の学者が執筆し、内容は人文、社会、科学など10の分野におよぶ。二カ国語同時出版という形式も画期的。 A『おん目の雫ぬぐはばや』王勇(農文協)史料をよく吟味し、諸説を詳細に検討した上、鑑真和上の伝記的事実を明らかにしたおもしろい研究書。
B『水滸伝と日本人』高島俊男(大修館書店)
C『現代中国人の日本留学』段躍中(明石書店)
D『徳川吉宗と康煕帝』大庭脩(大修館書店)

●仲尾宏(なかお ひろし)京都造形芸術大学客員教授
著書:『朝鮮通信使と徳川幕府』『朝鮮通信使と壬辰倭乱』(いずれも明石書店)、『朝鮮通信使(NHK人間講座)』(日本放送出版協会)ほか
@『韓国・朝鮮と向き合った36人の日本人』舘野あきら編著(明石書店)西郷隆盛、福沢諭吉、伊藤博文から梶村秀樹、梶山季之まで、良きにつけ悪しきにつけ、隣国と対峙した人びとの思想と行動に目を向けよう
A『世界の歴史教科書』石渡延男・越田綾編著(明石書店)世界各国で、子どもたちが自国と世界を、そして日本をどう学んでいるかが一目でわかる本。
B『日本深層文化を歩く旅』海原峻(梨の木舎)
C『朝鮮通信使がみた日本』姜在彦(明石書店)
D『朝鮮義僧将 松雲大師と徳川家康』仲尾宏編著(明石書店)

●中塚明(なかつか あきら)奈良女子大学名誉教授
著書:『日清戦争の研究』(青木書店)、『「蹇蹇録」の世界』(みすず書房)、『歴史の偽造をただす』(高文研)ほか
@『観光コースでない韓国』小林慶二(高文研)韓国を旅する日本人は、年間250万人。もう一歩ふみこんで、観光コースでない韓国各地を訪ねればどれだけ見聞が広がり、相互理解が進むことでしょう。「百聞一見にしかず」です。その案内役をつとめてくれるのがこの本。
A『物語「在日」民族教育の夜明け』李殷直(高文研)日本の敗戦で長年の抑圧から解放された在日朝鮮人(現在の在日韓国・朝鮮人)が、民族として人間として主体性をとりもどす日々を書いた感動の物語。「征韓論」の再来を思わせる昨今だからこそ、あらためて読んでほしい一冊です。
B『創氏改名』宮田節子・金英達・梁泰昊(明石書店)
C『大陸侵略は避け難い道だったのか』岩井忠熊(かもがわ出版)
D『福沢諭吉のアジア認識』安川寿之輔(高文研)

●中野亜里(なかの あり)大学非常勤講師
著書:『ベトナム─―工業化・近代化と人々の暮らし』(三修社)、『現代アジアの統治と共生』(慶応義塾大学出版会、共著)
@『ベトナム革命の素顔』タイン・ティン(めこん)元ベトナム共産党幹部が隠された革命史上の事実を明かし、客観的に再考する。『ベトナム革命の内幕』の続編。
A『ベトナム革命の内幕』タイン・ティン(めこん)民主化を唱えて追われたベトナム共産党の元幹部らが自らの見聞に基づいて民族解放革命の再評価を試みる。
B『教科書に書かれなかった戦争』アジアの女たちの会(梨の木舎)
C『セミパラチンスク』森住卓(高文研)
D『イラク・湾岸戦争の子どもたち』森住卓(高文研)

●彦坂諦(ひこさか たい)作家、批評家
著書:『無能だって? それがどうした?!』(梨の木舎)、『男性神話』(径書房)、『総年表 ある無能兵士の軌跡 全9巻』(つげ書房新社、編著)ほか
@『女と男─のびやかに歩きだすために』彦坂諦(梨の木舎)「アジアの片隅日本からこのいまを問い直す」とサブタイトルがついたこの本、私自身の本で恐縮だが、「アジアと日本」を考える上でどうしても欠かせない視点と思うからだ。
A『Q&A女性国際戦犯法廷─―「慰安婦」をどう裁いたか』VAW-NET Japan編(明石書店)この法廷を知らずして現代を生きることは、もはや不可能だろう。この本が重要な知への手がかりを与えてくれる。
B『世界の動きの中でよむ日本の歴史教科書問題』三宅明正(梨の木舎)
C『加藤周一対話集別巻「過客問答」』加藤周一(かもがわ出版)
D『戦時・性暴力をどう裁くか』マクドゥーガル著、VAW-NET Japan編訳(凱風社)


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■年度版「私の選んだアジアの本

【2002年度】私の選んだアジアの本

●芦澤礼子(あしざわ れいこ)フリーライター
著書:『我愛成都』(高文研)
@『沖縄海上ヘリ基地 拒否と誘致に揺れる町』石川真生写真・文(高文研)米軍普天間基地の代替基地移設問題に翻弄され続ける名護に住む人々が、現地に住み込んで取材した石川真生さんの写真の中から熱く語りかけます。軍事基地の本質は何なのか、そして日米両政府が沖縄に押し付けてきたものは…。
A『中国抗日戦争史』石島紀之(青木書店)大学で中国史を専攻しようと決めたときに買い、常に身近に置いてある本。抗日戦争をコンパクトにまとめています。
B『中国をどう見るか――21世紀の日中関係と米中関係』浅井基文(高文研)
C『沖縄 近い昔の旅』森口豁(凱風社)
D『悪夢の遺産』尾崎祈美子(学陽書房)

●亜洲奈みづほ(あすな みづほ)作家
著書:『新しい台湾いろいろ事始め』(凱風社)、『ソウルはもう、お隣り気分』(大和出版)、『ダブル』(ベネッセ)、『大人へのメッセージ』(高麗書林、共著)ほか
@『韓国の小さな村で』神谷丹路(凱風社)民俗芸能という文化人類学的なテーマを、自然体でしなやかに表現した一冊。対象へのスタンスが真摯で魅力的。
A『バンコクのかぼちゃ−女ひとりタイで暮らせば』中川るな(めこん)女性のバンコク滞在記だが、私的な体験記にとどまらず、タイの生活文化が女性の肌身からたちあがる作品。
B『雲南の旅いろいろ事始め』福山陽子(凱風社)
C『まとわりつくタイの音楽』前川健一(めこん)
D『現代韓国を知るための55章』石坂浩一ほか(明石書店)

●池上正治(いけがみ しょうじ)作家・翻訳家
著書:『龍の百科』(新潮社)、『中国全紀行C華北』(平河出版社)ほか。翻訳:『パンチェンラマ伝』(平河出版社)、『中国養生術の神秘』(出帆新社)ほか
@『雲南・カイラス……4000キロ』鎌澤久也(平河出版社)常春の郷・雲南から、隔絶の地チベットまで、至難のコースを辿った希有の人の写真と文章に、深く感銘。
A『ジャムウ』高橋澄子(平河出版社)健康・美容・治療の効果を合わせ持つインドネシア秘伝薬を解明した高橋さん、天国の住み心地はどうですか?
B『越境する新疆・ウイグル アジア遊学@』勉誠出版編集部(勉誠出版)
C『安藤昌益−日本中国共同研究』農文協(農文協)
D『現代中国を知るための55章』高井潔司(明石書店)

●石原昌家(いしはら まさいえ)沖縄国際大学教授
著書:『空白の沖縄社会史−戦果と密貿易の時代』(晩聲社)
@『日本軍占領下のシンガポール』許雲樵・蔡史君編 田中宏・福永平和訳(青木書店)「検証」という史実を知らないでシンガポールを訪れる日本人は、「南京大虐殺」事件を知らずに中国を訪れるようなものであることを教えてくれる。
A『島の風景――少年の心に記憶されたもうひとつの沖縄戦』仲田精昌(晩聲社)少年の体験に基づき、アジア・太平洋戦争を半世紀後についに村落共同体社会レベルで総括した真に勇気ある書。
B『マラヤの日本軍』高嶋伸欣・林博史編(梨の木舎)
C『アジアから見た「大東亜共栄圏」』内海愛子・田辺寿夫編著(梨の木舎)
D『アジアの教科書に書かれた日本の戦争』越田稜編著(梨の木舎)

●遠藤康子(えんどう やすこ)パクパク・ナティン事務局
著書:『マニラ発 妻たちのピナトゥボ応援団』(明石書店)
@『ヤシの実のアジア学』鶴見良行・宮内泰介編著(コモンズ)カップめんやスナック菓子、石けん、タワシ、そして水道水まで、私たちの日常生活を支える膨大な量のヤシの実。アジアを<歩く>市民のヤシ調査研究は、「知ること」の喜びや驚きを与えてくれた。装丁も美しい一冊。
A『現代フィリピンを知るための60章』大野拓司・寺田勇文編著(明石書店)60のキーワードで解説したフィリピン研究の入門書。興味あるところから読み進むうちにはまってまう。文献紹介も役に立つ。
B『学び・未来・NGO――GOに携わるとは何か』若井晋・三好亜矢子・生江明・池住義憲編(新評論)
C『ハポン――フィリピン日系人の長い戦後』大野俊(第三書館)
D『フィリピン家庭料理入門』原田瑠美(農文協)

●小倉貞男(おぐら さだお)中部大学国際関係学部教授
著書:『ヴェトナム戦争全史』『ポル・ポト派とは?』(ともに岩波書店)、『朱印船時代の日本人』(中公新書)ほか
@『アンコール遺跡の考古学』片桐正夫編(連合出版)石澤良昭上智大学教授の呼びかけで1980年から進められてきた国際調査団の成果を世に問う解明シリーズ四部作。他は地質学・建築学・社会文化発展。技術の粋を集めたアンコール水利都市が明快に浮かび上がる。
A『禁じられた稲』清野真巳子(連合出版)伝統的稲作を禁じ、無謀な水路網建設に住民を駆りたて死に追いやった――「浮き稲」に焦点を絞り、クメール・ルージュの矛盾を突く迫真のルポルタージュ。
B『人間の大地・上下』プラムディヤ・アナンタ・トゥール(めこん)
C『カルティニの風景』土屋健治(めこん)
D『カンボジアと日本』今川幸雄(連合出版)

●鎌田 文彦(かまた ふみひこ)国立国会図書館調査員
訳書:『晏陽初――その平民教育と郷村建設』宋恩栄編著/鎌田文彦訳(農文協)
@『晏陽初――その平民教育と郷村建設』宋恩栄編著/鎌田文彦訳(農文協)識字運動から農民教育・農村建設へ、中国からアジア・世界へと飛躍した教育者・晏陽初の生涯と思想を描く。
A『郷村建設理論』梁漱溟著/アジア問題研究会編/池田篤紀、長谷部茂訳(農文協)1930年代前後の中国で共に郷村建設運動を推進した晏陽初と梁漱溟だが、二人の思想的基盤は異なっていた。
B『中国黄土高原―砂漠化する大地と人びと』橋本紘二(東方出版)
C『一人っ子たちのつぶやき』陳丹燕著/中由美子訳(てらいんく)
D『中国史のなかの日本像』王勇(農文協)

●小滝透(こたき とおる)作家
著書:『神の世界史イスラーム教・キリスト教・ユダヤ教』三部作(河出書房新社)、『ヒトはなぜ立って歩けるのか』(第三書館)ほか
@『イスラーム・ドルーズ派』宇野昌樹(第三書館)ドルーズ派は、ファーティマ朝カリフ=ハーキムがいつかこの世に救世主として降臨してくるとの教えを持つイスラームセクトであるが、その内実が紹介されることはほとんどなかった。その意味でも、日本においてドルーズ派の実態が明らかにされたことはまことに意義深いものである。
A『イラン・イラク戦争』鳥井順(第三書館)
B『シク教徒の教えと文化』保坂俊司(平河出版社)
C『音の神秘』ハズラト・イナーヤト・ハーン(平河出版社)
D『タイ仏教入門』石井米雄(めこん)

●佐伯奈津子(さえき なつこ)インドネシア民主化支援ネットワーク事務局
著書:『インドネシア−スハルト以後』(岩波書店)、『スハルト・ファミリーの蓄財』(コモンズ)ともに共著
@『安ければ、それでいいのか!?』山下惣一編著(コモンズ)安全の問題から地域社会の崩壊まで、安さの陰には矛盾が潜むことを気づかされる。グローバル化、規制緩和―デフレ時代のいま、私たちはどこに向かっているのだろう。
A『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)……エビという一つのモノを通すことで、日本=アジア関係が、流通システム、環境、労働など多くの問題を抱えていると明らかになる。著者たちが、自分たちで歩き、見聞きした分、説得力もあるし、共感も覚える。
B『アジアを食べる日本のネコ』(梨の木舎)
C『日本人の暮らしのためだったODA』(コモンズ)
D『インドネシアの先住民族と人権問題』(明石書店)

●崔愛子(チェ・エジャ)会議通訳者
著書:『韓国語通訳・ことばと心のハーモニー』(東方出版)
@『朝鮮の子どもの遊び博物館』韓丘庸(東方出版)「ふーん、そうか。朝鮮にも凧上げがあるんだ」。朝鮮のこどもと日本の子どもの遊びには意外と共通点が多い。楽しいイラスト付きで解説している。
A『いのちの近代史』藤野豊(かもがわ出版)ハンセン病患者たちに政府が、医者が、学者たちが何をしたのか。人間が人間に何をしたのか。知ること、記憶すること、それらを伝えることが大切である。ハンセン病の歴史を知る貴重な一冊といえる。
B『アイヌの食事』萩中美枝他(農文協)
C『海を越える済州島の海女』李善愛(明石書店)
D『子供たちとの対話』J・クリシュナムルティ(平河出版社)

●寺園敦史(てらぞの あつし)ジャーナリスト
著書:『同和利権の真相』共著(宝島社)、『「同和」中毒都市』、『だれも書かなかった「部落」』(ともに、かもがわ出版)
@『「いのち」の近代史』藤野豊(かもがわ出版)国内のハンセン病政策は断罪されたが、日本の旧植民地、占領地での犯罪はまだ裁かれていない。
A『現代アラビア語小辞典』池田修(第三書館)昨年ダマスカス滞在中重宝しました。でもいまだ本格的なアラ・日辞典が存在しないのは大いなる問題だな。
B『奄美の四季』原井一朗(農文協)
C『過客問答』加藤周一(かもがわ出版)
D『検証・ニッポンのODA』村井吉敬編著(コモンズ)

●寺田勇文(てらだ たけふみ)上智大学教員
著書:『現代フィリピンを知るための60章』共編(明石書店)、『日本占領下のフィリピン』共著(岩波書店)
@『東南アジアのキリスト教』寺田勇文編(めこん)フィールドワークや現地での史料調査をもとに、10人がフィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ビルマ、カンボジア、ベトナムのキリスト教について書いています。
A『漂海民バジャウの物語:人類学者が暮らしたフィリピン・スルー諸島』H・アルロ・ニモ著、西重人訳(現代書館)フィリピン、スルー海の海の民を長く研究したきたアメリカ人人類学者によるエスノグラフィー。読みやすい翻訳です。
B『フィリピンの歴史・文化・社会』D・J・スタインバーグ著、堀芳江ほか訳(明石書店)
C『コモンズの海』中村尚司・鶴見良行編(学陽書房)
D『カルティニの風景』土屋健治(めこん)

●中由美子(なか ゆみこ)中国児童文学翻訳
著書:『ある15歳の死』(ベネッセ)、『小学生になった恐竜』(文研出版)、『カラバンの少年』、『一人っ子たちのつぶやき』(ともに、てらいんく)、『よあけまで』(童心社)ほか
@『いちじくの木がたおれぼくの村が消えた』(梨の木舎)幼い子どもまでも否応なく巻き込まれる戦争。イラク北部に住むクルドの少年の短い一生を描いた心打たれる作品。
A『大地は生きている』(てらいんく)中国人の現代の生活の中にも深く根づいている風水の思想を、文化人類学者の目から見ているのがおもしろい。
B『植民地台湾からの児童文化』(明石書店)
C『子どもの本から「戦争とアジア」がみえる』(梨の木舎)
D『わら屋根のある村』(てらいんく)

●中上紀(なかがみ のり)作家
著書『イラクジの赤い花』、『彼女のプレンカ』(ともに集英社)、『パラダイス』(恒文社21)
@『タイ人たち』ラーオ・カムホーム(めこん)人びとのどん底の生き方が鋭い皮肉を交えて語られる。彼らの叫びや息づかいがすぐそばに聞こえる気がする。
A『漂海民バジャウの物語:人類学者が暮らしたフィリピン・スルー諸島』H・アルロ・ニモ著、西重人訳(現代書館)海と共に暮らすバジャウの世界が目の前に広がる。夢か天国か、人類学者の見た物語が歌のように波間に響く。
B『宇宙樹の森』吉田敏浩(現代書館)
C『7人の女の物語』ロキア・R・カビール(連合出版)
D『カルティニの風景』土屋健治(めこん)

●中村尚司(なかむら ひさし)龍谷大学教授、アジア太平洋資料センター共同代表
著書:『人びとのアジア』(岩波書店)、『地域自立の経済学』(日本評論社)ほか
@『いつかロロサエの森で−東ティモール・ゼロからの出発』南風島渉(コモンズ)インドネシアから分離独立した東ティモールの課題を知ろう。日本軍による占領の歴史も忘れてはならない。
A『フィリピン・幸せの島サマール』北上田毅 (明石書店)極貧の島と呼ばれるサマール島で、ODA資金を使わずに行なった技術協力と日本軍政の傷痕の記録として貴重。
B『学び・未来・NGO−NGOに携わるとは何か』若井晋・三好亜矢子・生江明・池住義憲編(新評論)
C『福沢諭吉のアジア認識』安川寿之輔 (高文研)
D『アジアの多文化社会と国民国家』西川長夫・山口幸二・渡辺公三編 (人文書院)

●西川潤(にしかわ じゅん)早稲田大学教授
著書:『仏教・開発・NGO』共編著(新評論)、『アジアの内発的発展』編著(藤原書店)ほか
@『マネジメント・開発・NGO』C・ラヴェル(新評論)第三世界最大のNGOであるバングラデシュのBRAC(旧称バングラデシュ農村振興委員会)の密着取材。NGOの実態がよく判る。
A『地球村の思想』片岡幸彦編(新評論)南と北双方を結ぶオルタナティブ思想の万華鏡。地球市民への一歩は身の回りの変化から始まる。
B『帝国という幻想』P・ドゥース(青木書店)
C『ダライ・ラマ、平和を語る』ルイ-ゼ・リンザー(人文書院)
D『近い昔の旅』(凱風社)、『観光コースでない』(高文研)、『旅行ガイドにないアジアを歩く』(梨の木舎)各シリーズ

●山口のり子(やまぐち のりこ)JABIP=ベター・パートナーシップ代表
著書:『元気のおすそわけ』太郎次郎社、『DVあなた自身を抱きしめて』梨の木舎
@『海外でつくった!人の輪・仕事の環』山口のり子(梨の木舎) 夫の転勤に伴って暮らした海外で、日系社会の女性差別と闘い、駐在員の妻たちをエンパワーする活動をし、バングラデシュの女性支援の店をつくるなど著者10年間の記録。
A『地球をめぐる女たちの反戦の声』松井やより編(明石書店)米国同時多発テロ後の報復戦争に対して、世界中の女性たちから送られてきた心に響く反戦の思いやメッセージ。
B『わたしは歌の旅人 ノレナグネ』戸田志香(梨の木舎)
C『マニラ発 妻たちのピナトゥボ応援団』佐藤育代、遠藤康子(明石書店)
D『タイからのたより』女性の人権カマラード(現代書館)

●吉原和男(よしはら かずお)慶應義塾大学文学部教授
共編著:『<血縁>の再構築――東アジアにおける父系出自と同姓結合』『アジア移民のエスニシティと宗教』(ともに風響社)
@『越境する家族――在日ベトナム系住民の生活世界』川上郁雄(明石書店)かつて難民として日本へ来た人びととその家族についての優れた研究書。日本とベトナムでのフィールドワークを行った気鋭の文化人類学者による。
A『アジアの多文化社会と国民国家』西川長夫・山口幸二・渡辺公三編(人文書院)歴史学・文化人類学・国際関係論などの専門家が東南アジアの歴史と現状を分析して未来を問う。シンポジウム記録がおもしろい。
B『華人宗教のネットワーク アジア遊学24』(勉誠出版)
C『泰山―中国人の信仰』シャヴァンヌ(勉誠出版)
D『環中国海の民俗と文化 1〜4巻』比嘉政夫・植松明石・三浦国雄・渡邊欣雄編著(凱風社)


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■年度版「私の選んだアジアの本

【2001年度】私の選んだアジアの本

●新井由己(あらい よしみ)ルポライター
著書:『とことんおでん紀行』(凱風社)
@『韓国 近い昔の旅――植民地時代をたどる』神谷丹路(凱風社)日韓の距離感に疑問を感じ、「植民地時代をたどる」旅を10年間繰り返した著者。韓国の文化や雰囲気、日本に対する意識、両国の歴史がよくわかる好著。
A『グッドモーニング路上動物――アジア旅游写真館』日比野宏(凱風社)旅先で犬や猫などの動物に出会うと心がなごむ。それは、異国での人間関係にちょっと疲れている表れなのかもしれない。路上の彼らは自由だ。
B『海が見えるアジア』門田修(めこん)
C『アジア定住――11カ国18人の日本人』野村進(めこん)
D『沖縄 近い昔の旅――非武の島の記憶』森口豁(凱風社)

●石山久男(いしやま ひさお)歴史教育者協議会事務局長
著書:『君たちは戦争で死ねるか』共著(大月書店)、『日の丸・君が代 国旗・国歌を考える』(学習の友社)ほか
@『満蒙開拓青少年義勇軍と信濃教育会』長野県歴史教育者協議会編(大月書店)中国侵略の先兵とされ、数々の悲劇を生んだ満蒙開拓青少年義勇軍の実態について、教育の戦争責任の視点から、地域の史料を掘り起こして明かにした。
A『福沢諭吉のアジア認識』安川寿之輔(高文研)
B『入門 韓国の歴史――国定韓国中学校国史教科書』石渡延男・三橋広夫訳(明石書店)  
C『韓国から見た日本の歴史教育』李元淳(青木書店)
D『ベトナム戦争の記録』編集委員会編(大月書店)

●今川幸雄(いまがわ ゆきお)関東学園大学教授、元カンボジア大使 
著書:『アンコールの遺跡』(ぱんたか)、『カンボジアと日本』(連合出版)
@『カンボジア・ゼロ年』F・ポンショー著(連合出版)狂気のポル・ポト政権下に血の海に溺れたカンボジアの実状を冷静に眺め、客観的に記述した歴史の証言。
A『7人の女の物語』R・カビール著/大岩豊訳(連合出版)イスラム、階級差別など外国人にはわかりにくいバングラデシュの貧困な農村問題を、7人の女の生き様を通してわかりやすく描く。
B『母なるメコン、その豊かさを蝕む開発』L・スルイター(めこん)
C『ウズベキスタン・シルクロードのオアシス』萩野矢慶記(東方出版)
D『白い杖のひとり旅――ニュージーランド手探り紀行』小寺洋一(連合出版)

●井本英一(いもと えいいち)日本オリエント学会理事、大阪外国語大学名誉教授
著書:『境界・祭祀空間』(平河出版社)、『夢の神話学』『聖なる伝承をめぐって』(ともに法政大学出版局)ほか
@『ゾロアスター教』岡田明憲(平河出版社)アジア思想史研究の基本となるゾロアスター教の基本文献。聖典『アヴェスタ』の翻訳付き。同氏の『ゾロアスター教の悪魔払い』(平河出版社)もある。
A『神々の原影』西田長男・三橋健(平河出版社) 仏教、キリスト教と同じように自らを殺し衆生を救済するという救世主の性格をもつ日本の神の姿を描く。
B『道教の神々』窪徳忠(平河出版社)
C『韓国の風水師たち』野崎充彦(人文書院)
D『聖なるものへの旅』立川武蔵(人文書院)

●漆畑文彦(うるしばた ふみひこ)ラーメン店店員
著書:『はじめての三線』(晩聲社)
@『沖縄家庭料理入門』編集室りっか・長嶺恵美子(農文協)沖縄の家庭料理を食べてから、沖縄を語れ! この本を片手に自分で作れ! できることなら、うまく作れ!
A『島の風景――少年の心に記録されたもうひとつの〈沖縄戦〉』仲田精昌(晩聲社)それぞれの島に沖縄戦がある。島にとっての「終戦」を考えさせられる本。冷静な文体が推理小説のようだ。
B『沖縄修学旅行[第2版]』新崎盛暉ほか(高文研)
C『沖縄を彫る』金城実(現代書館)
D『空白の沖縄社会史――戦果と密貿易の時代』石原昌家(晩聲社)

●大野拓司(おおの たくし)朝日新聞社記者
著書:『現代フィリピンを知るための60章』共編(明石書店)、『アジアの女性指導者たち』共編(筑摩書房)ほか
@『ブラザー・エネミー』ナヤン・チャンダ著/友田錫・滝上広水訳(めこん)ジャーナリストが追ったサイゴン陥落後のインドシナ。卓越した取材力で当事者たちの生の声に迫り、鋭い洞察力で錯綜した歴史の深層に切り込む。
A『僕は毛主席の紅小兵だった』安剣星(透土社)紅衛兵の陰で、その存在があまりに知られてなかった「紅 い小学生」たち。文革時代の裏面を伝える証言だ。
B『グローバル化した中国はどうなるか』国分良成ほか(新書館)
C『香料諸島綺談』Y・B・マングンウィジャヤ著/舟知恵訳(めこん)
D『現代フィリピンの政治と社会』ディビッド・フーフェル著/大野拓司訳(明石書店)

●奥村哲(おくむら さとし)東京都立大学教授
著書:『中国の現代史――戦争と社会主義』(青木書店)、『中国専制国家と社会統合』共著(文理閣)ほか
@『村から中国を読む――華北農村五十年史』三谷孝ほか(青木書店)日本の侵略下で調査がおこななわれた5つの農村を、50年後に訪問。村の様々な変容や農民たちの生きざまを示す。村から中国現代史を見直す。
A『日中戦争下中国における日本人の反戦活動』藤原彰・姫田光義編(青木書店)捕虜になった兵士や軍属による反戦活動を、兵士ら本人や中国側工作員へのインタビューと共同研究によって明らかにした、貴重な成果。
B『共同研究 中国戦後補償』奥田安弘ほか(明石書店)
C『アジアの中の日本軍』笠原十九司(大月書店)
D『穢れと規範』小谷汪之(明石書店)

●片倉佳史(かたくら よしふみ)在台湾ジャーナリスト
著書:『観光コースでない台湾』(高文研)、『旅の指さし会話帳8 台湾』(情報センター出版局)、『ワールドカルチャーガイド・台湾』共著(トラベルジャーナル)ほか
@『台湾先住民・山の女たちの「聖戦」』柳本通彦(現代書館)台湾の山地を舞台に繰り広げられた悲劇。当時、高砂族と呼ばれた少女たちにとっての「聖戦」とは何だったのか。衝撃的な証言の数々。
A『日本統治下台湾の「皇民化」教育』林景明(高文研)戦前の台湾における皇民化教育を自身の体験をもとに分析する。台湾における植民地支配の実態を知る好著。
B『東郷元帥は何をしたか』前田哲男(高文研)
C『植民地台湾の児童文化』游珮芸(明石書店)
D『バンコクの好奇心』前川健一(めこん)

●辻元清美(つじもと きよみ)衆院議員(社民党政審会長)
著書:『辻元清美の“今からでも変えられる”』『清美するで!』(いずれも第三書館)
@『7人の女の物語』R・カビール著/大岩豊訳(連合出版)ピースボートで地球を回っていて、いつもその地の女の生き方に注意して見てきました。バングラデシュのイスラム社会のなかにいきるこの本の女たちと、先進国といいながら国会での女性議席7%(86位)という日本の現状は、はっきりつながっています。
A『モンゴル ゲルのくにはっけん』柴達木柳(第三書館)
B『ひとの数だけ文化がある』楠瀬佳子編(第三書館)
C『女性に対する暴力』ラディスカ・クマラス(明石書店)
D『からゆきさんと経済進出』清水洋・平川均(コモンズ)

●寺園敦史(てらぞの あつし)フリーライター
著書:『だれも書かなかった部落』『同和中毒都市』(かもがわ出版)ほか
@『来て見てシリア』清水紘子(凱風社)中東について語るべきことはテロと石油だけではない。ダマスカス旧市街のフツーの人々の日常を伝えてくれる。
A『韓国の心を知る旅』佐藤光康(かもがわ出版)著者は山形の高校非常勤講師。旅することの魅力。著者の授業を受けた女子高生がソウルで流す涙がまぶしい。
B『アジアから読む日本国憲法』姜尚中(かもがわ出版)
C『イスラム社会のヤクザ』佐藤次高(第三書館)
D『豊かなアジア貧しい日本』中村尚司(学陽書房)

●仲村修(なかむら おさむ)韓国・朝鮮児童文学翻訳研究家 翻訳:『ヘラン江の流れる街』(新幹社)、『ユガンスン』(明石書店)、『韓国・朝鮮児童文学評論集』(明石書店)、『わら屋根のある村』(てらいんく)ほか
@『モンシル姉さん』権正生著/卞記子訳(てらいんく)南北朝鮮を相対化してみる民衆の視点から、「統一児童文学」を身をていして確立した童話作家・権正生は、韓国を代表する童話作家でもある。作品の背景には作家自身の分断と一家離散の個人史がある。それだけに激動のなかをいちずに生きる少女モンシルはかがやいている。
A『子どもの本から「戦争とアジア」がみえる』長谷川潮・きどのりこ編著(梨の木舎)新しい切り口で児童文学とアジアを結んだ視点はすばらしくかつ新鮮。
B『植民地台湾の児童文化』游珮芸(明石書店)
C『観光コースでない韓国』小林慶二(高文研)
D『ヒロシマを持ちかえった人々』市場淳子(凱風社)

●野崎充彦(のざき みつひこ)大阪市立大学助教授
著書:『朝鮮の物語』(大修館書店)、『韓国の風水師たち』(人文書院)など
@『韓国百科』秋月望・丹羽泉編著(大修館書店)異文化理解には、可能な限り多面的な視野が必要であり、その手始めとして手ごろな一冊。
A『在外朝鮮民族を考える』「ミレ(未来)」編集部編(東方出版)世界各地に散在する「ディアスポラ」としてのコリアは、新たな朝鮮認識をもたらす貴重な存在である。
B『朝鮮の科学と技術』任正赫編(明石書店)
C『韓国の風水思想』崔昌祚著/金在浩・渋谷鎮明訳 (人文書院)
D『アジア遊学(16)東アジアの道教と民間信仰』(勉誠出版)

●野村進(のむら すすむ)ノンフィクションライター著書:『アジア定住』(めこん)、『アジア 新しい物語』(文藝春秋)、『コリアン世界の旅』(講談社+アルファー文庫)他
@『北ビルマ、いのちの根をたずねて』吉田敏浩(めこん)『森の回廊』『宇宙樹の森』に続く、著者ならではのビルマ紀行。体験が熟成し、「生と死」をめぐる普遍化への志向はさらに色濃い。
A『スハルト・ファミリーの蓄財』村井吉敬他(コモンズ)混迷が続くインドネシアの現状ばかりでなく、KSD(中小企業経営者福祉事業団)の汚職事件の構造を理解するためにも、必読の一冊。
B『マルセ太郎 記憶は弱者にあり』森正編著(明石書店)先ごろ死去した在日二世のボードビリアンは、晩年その芸が開花し、死に近づくほどその存在が光り輝く希有な人物だった。
C『フィリピン国ボントック村』大崎正治(農文協)
D『サラワクの風』内田道雄(現代書館)

●朴福美(パク ポンミ)高崎経済大学非常勤講師
翻訳:『新女性を生きよ』朴婉緒著/朴福美訳(梨の木舎)
@『オビンの伝言』中村ふじゑ(梨の木舎)少しもの足りないかなと感じる会話などのなかに、純朴な人びとの姿が浮き出る。蛮族と呼ばれた人びとと、蛮族と呼んだ文化人を自認している人びとの姿がくっきり浮かび上がってくる。
A『新女性を生きよ』朴婉緒著/朴福美訳(梨の木舎)作中人物にぐいぐい引き込まれる。美しいと思うのは、真実の姿が描かれたためか。それとももっとも近い国のせいか。
B『梶村秀樹著作集』1〜6、別巻(明石書店)
C『戦時・性暴力をどう裁くか』VAWW―NET JAPAN編(凱風社)
D『花嫁を焼かないで』謝秀麗(明石書店)
●藤井省三(ふじい しょうぞう)東京大学文学部教授
著書:『魯迅「故郷」の読書史』(創文社)、『中国映画を読む本』(朝日新聞社)、『現代中国文学文化探検』(岩波新書) ほか
@『さよなら・再見』黄春明(めこん)台湾映画や文学に感動して、台湾旅行に出かけるいまの若い人には想像がつくまい。かつて70年代には、大勢の日本人が買春観光団を組んで台湾に出かけていたのだ。日本の植民地支配の陰を背負う世代の作家による、笑いのポスト・コロニアリズム文学の傑作である。
A『知られざる祈り』加々美光行(新評論)都市と農村、そして少数民族は中国理解の3つのキーワードだ。本書はトルキスタンや内モンゴル、チベットなどにおける少数民族独立運動の歴史と、漢族支配の現実とを深い共感をもって描き出した古典的名著である。
B『東西文化とその哲学』梁漱溟著/長谷部茂訳(農文協)
C『大地は生きている』聶莉莉ほか(てらいんく)
D『アジア遊学(13)中国人作家の"帝都"東京体験』(勉誠出版)

●宮内泰介(みやうち たいすけ)北海道大学助教授
著書:『コモンズの社会学』共編(新曜社)、『ヤシの実のアジア学』共編(コモンズ)、『日本人の暮らしのためだったODA』共著(コモンズ)ほか
@『スハルト・ファミリーの蓄財』村井吉敬ほか(コモンズ)いったいこいつらは何なんだ? 国家を私物にし、ため込んだ莫大なお金。それと密に結びつく日本政府・日本企業。ああ。
A『コモンズの海』中村尚司・鶴見良行編著(学陽書房)@が絶望の本だとすれば、こちらは希望の本。共有財産(コモンズ)としての海を、さまざまな担い手(農民、漁民、女性)から描く。
B『地域漁業の社会と生態――海域東南アジアの漁民像を求めて』北窓時男(コモンズ)
C『市民・政府・NGO』J.フリードマン(新評論)
D『空白の沖縄社会史』石原昌家(晩聲社)

●村井吉敬(むらい よしのり)上智大学教授、アジア太平洋資料センター共同代表
著書:『サシとアジアと海世界』(コモンズ)、『スハルト・ファミリーの蓄財』共著(コモンズ)ほか
@『ヤシの実のアジア学』鶴見良行・宮内泰介(コモンズ)鶴見のバナナに始まったアジア商品学は、エビ、ナマコを経てヤシに行き着いた。鶴見学の最後の仕事が、その後裔たちと書いたこの本。
A『いつかロロサエの森で』南風島渉(コモンズ)たった1年半前の東ティモールの惨劇はもう忘れ去られようとしている。世界最後の独立への闘いを忘れないためにもぜひ読みたい本だ。
B『日本人の暮らしのためだったODA』福家洋介・藤林泰 編著(コモンズ)
C『足跡』プラムディヤ・アナンタ・トゥール著(めこん)
D『ジャワで抑留されたオランダ人女性の記録』ネル・ファン・デ・グラーフ著/渡瀬勝、内海愛子訳(梨の木舎)

●柳本通彦(やなぎもと みちひこ)ノンフィクションライター
著書:『台湾先住民・山の女たちの聖戦』『台湾・霧社に生きる』(共に現代書館)、『台湾革命』(集英社新書)ほか
@『虐殺の島――皇軍と臣民の末路』石原昌家(晩聲社)ガマと呼ばれた洞窟に逃げ込んだ沖縄の民と日本軍兵士。極限状態でおこされた悲劇を精密に再現した労作。
A『台湾の大和魂』林えいだい(東方出版)少年兵から戦犯にいたるまで不合理な戦争に動員された台湾の人びとを訪ね歩いた著者の集大成。
B『宇宙樹の森』吉田敏浩(現代書館)
C『台湾 近い昔の旅』又吉盛清(凱風社)
D『悪夢の遺産』尾崎祈美子(学陽書房)

●若井晋(わかい すすむ)東京大学医学系大学院国際地域保健学教授 
著書:『過酷な世界の天使たち』(同朋舎)、『いのち・開発・NGO』共監訳(新評論)ほか
@『学び・未来・NGO――NGOに携わるとは何か』若井晋・三好亜矢子・生江明・池住義憲編(新評論)第一線のNGO関係者22名が自らの経験を問いつつ、次の世代に「NGOに携わるとは何か」を根元的に問う日本ではじめての書。編者による序章と終章の間に分担執筆者によるNGOの現在、課題、未来が語られる。
A『コミュニティと文明』湯浅赳男(新評論)グローバル化の暴走のなかで、もう一度市民社会の有りようを問い直し「人間性」を実現するために、何が求められているのかを、人類史を再点検するなかから探り出そうとする力作。
B『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行 編著(学陽書房)
C『日本統治下台湾の「皇民化」教育』林景明(高文研)
D『アンコール遺跡』ジョルジュ・セデス(連合出版)

●王勇(ワン ヨン)国文学研究資料館客員教授
著書:『聖徳太子時空超越』(大修館書店)、『唐から見た遣唐使』(講談社)、『中国史のなかの日本像』(農文協)ほか
@『日本の近代化と儒学』王家☆(農文協)50代でこの世を去った天才が最後に書き残した渾身の名著。
A『日中文化交流史叢書』(全十巻)中西進ほか監修(大修館書店)中日学界が総力を挙げた初の分野別交
流通史。 B『日本神道の現代的意義』王守華(農文協)
C『道教と日本文化』福永光司(人文書院)
D『日本近代思想のアジア的意義』卞崇道(農文協)


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■年度版「私の選んだアジアの本

【2000年度私の選んだアジアの本

●池住義憲(いけずみ よしのり)国際民衆保健協議会(IPHC)日本連絡事務所代表
著書:『バナナから人権へ』(同文舘出版)、『いのち・開発・NGO』監訳(新評論)ほか
@『地球村の行方』片岡幸彦編(新評論)グローバル化がもたらしている地域社会の課題を学際的に解明。各地域の具体的取組みも示唆に富んでいる
A『NGO大国インド』斎藤千宏編(明石書店)とくに第2章から5章に記されている女性のエンパワーメントに関する部分が具体的。一読を。
B『人類・開発・NGO』片岡幸彦編(新評論)
C『戦時・性暴力をどう裁くか』VAWW‐NET JAPAN編訳(凱風社)
D『フェア・トレード』M.B.バラット(新評論)

●石澤良昭(いしざわ よしあき)上智大学教授
著書:『アンコール・ワット』講談社、『東南アジアの伝統と発展』(中央公論社)ほか
@『福岡アジア文化賞の人々』福岡アジア文化賞委員会編(連合出版)1990年に福岡市が創設した文化賞を受賞した三十余氏が語る体験的アジア文化論。そこには、21世紀に向けた指針が示されている
A『西欧が見たアンコール』B・P・グロリエ著(連合出版)アンコール・ワットで知られるアンコール朝の崩壊(15世紀半ば)後に来航した西欧人がアンコールの驚異と不思議を語り、王朝の繁栄と没落の謎に迫る名著。
B『サシとアジアと海世界』村井吉敬(コモンズ)
C『チャンパ』桃木至朗ほか(めこん)
D『時間の旅・空間の旅』加藤剛(めこん)

●井上礼子(いのうえ れいこ)アジア太平洋資料センター共同代表
著書:『IMFがやってきた アジアの経済危機と人々のオルタナティブ』共著(アジア太平洋資料センター発行)
@『スハルト・ファミリーの蓄財』村井吉敬他(コモンズ)スハルトの腐敗ぶりは知ってはいても改めて唖然となる。日本の政治家や商社も登場。スハルトの蓄財過程がそのままインドネシアと日本の歴史と重なるところが恐ろしい。
A『コモンズの海』中村尚司・鶴見良行編(学陽書房)サバ、スリランカ、タイ東部、九州。互いに出会ったこともない人々が海を介してひとつの世界を織り成す。たくましく生きる女たちの姿が描かれていることが嬉しい。
B『文化・開発・NGO』T・ヴェルヘルスト(新評論)
C『ビートルズを知らなかった紅衛兵』唐亜明(岩波書店)
D『日本人の暮らしのためだったODA』福家洋介・藤林 泰編(コモンズ)

●鎌澤久也(かまざわ きゅうや)日本写真家協会会員
著書:『雲南』『藍の里』『南詔往郷』『雲南・カイラス…4000 キロ』(以上、平河出版社)ほか
@『風景のない国・チャンパ王国』樋口英夫(平河出版社)インドシナ半島南東部に、2世紀末に建てられたチャンパ王国が、遺跡として多く残っている。その遺跡とからめ、チャンパの末裔たちが散り散りになって生活する現在にスポットをあて、精力的に取材したもの。アンコールに隠れたチャンパの歴史が見えてくる。
A『メコン』石井米雄(めこん)
B『知られざる祈り 中国の民族問題』加々美光行(新評論)
C『片思いのシャッター』松村久美(現代書館)
D『ベトナム熱射病』瀬尾里枝(連合出版)

●川合宣雄(かわい のりお)旅好家
著書:『ほんとはコワーイ海外旅行』『中国超級旅游術』(第三書館)、『中南米ひとり旅』(連合出版)ほか
@『モンゴル悠游旅行術』川合宣雄(第三書館)広大なモンゴルをひとり旅、現地の若者と仲良くなって 家に泊めてもらったり、星降る草原で野宿したり、アルヒをしこたま飲んで歌ったりのエピソードのなかに、モンゴルを旅行するために必要な情報がきっちりと入っている。
A『ゴーゴー・アジア』蔵前仁一(凱風社)
B『アジア自転車の旅』渋谷義人(連合出版)
C『アジア民俗写真叢書14ミャンマー憧憬』(平河出版社)
D『バンコク・自分探しのリング』吉川秀樹(めこん)

●金京子(きむ きょんじゃ)甲南大学非常勤講師
著書:『南坡朴賛翊伝記』共著(乙酉文化社)、『ナヌムの家のハルモニたち』共訳(人文書院)ほか
@『ナショナリズムと「慰安婦」問題』日本の戦争責任資 料センター編(青木書店)日本の戦争責任センター主催のシンポジウムの議論をまとめた本。「慰安婦」問題の解決のための「日本人の責任」を問いかける。
A『日本の文化 韓国の習俗――比較文化論』金両基(明石書店)韓国の文化や韓国人の習慣などを日本の文化と比較しながらわかりやすく、明瞭に分析した一冊。思わず膝を打つ。興味津々。
B『在日朝鮮人 第2版――歴史・現状・展望』朴鐘鳴編 (明石書店)
C『韓国の風水思想』崔昌祚(人文書院)
D『韓国 近い昔の旅――植民地をたどる』神谷丹路(凱風社)

●駒井洋(こまい ひろし)筑波大学教授
著書:『日本の外国人移民』、『日本のエスニック社会』『自治体の外国人政策』共著、(以上、明石書店)ほか
@『語りはじめたタイの人びと』サニッスダー・エーカチャイ(明石書店)発展のもたらした陰の部分を、地方の底辺から照射する。人間の希望を象徴するポートレートがすばらしい。
A『タイ・インサイドレポート』プラウィット・ロチャナプルック(めこん)バブル崩壊後も含むタイ社会の状況を全体的に理解できる格好の書物。とくに首都の描写がなまなましい。
B『フィリピン女性エンターテイナーの世界』M・R・P.バレスカス著(明石書店)
C『夢破れる国日本』唐濤・高橋健・佐藤美穂子編訳著(農文協)
D『ポル・ポト伝』デービッド・P・チャンドラー著(めこん)

●佐藤光康(さとう みつやす)高等学校・専門学校講師
著書:『韓国の心を知る旅』『尾崎豊を聞きながら』(ともにかもがわ出版)ほか
@『ものがたり朝鮮の歴史』池明観(明石書店)副題に「現在と過去との対話」とあるが、単なる通史ではない。著者の母国に対する深い洞察が貫かれている。
A『日本は危機か』ヨハン・ガルトゥング/安斎育郎(かもがわ出版)著者二人の知のぶつかりあいから、閉塞した時代を打ち破る多くの示唆を得ることができる。
B『南京事件と三光作戦』笠原十九司(大月書店)
C『教室から「自由主義史観」を批判する』藤野豊編(かもがわ出版)
D『君たちは戦争で死ねるか』大日方純夫ほか(大月書店)

●田中雅一(たなか まさかず)京都大学助教授
編著:『暴力の文化人類学』(京都大学学術出版会)、『女神』(平凡社)ほか
@『アジアにおける宗教の再生』田辺繁治編(京都大学学術出版会)宗教を無視して現代アジア社会を語れない。1970年以後の経済発展と民主化運動の広がりを契機とするアジア社会の変化における宗教の役割をテーマとする注目の論文集。
A『アジアの環境・文明・人間』山折哲雄編(法藏館)国連大学のプログラムとして実施された環境観に関する国際共同研究の成果。比較文明論の視点からアジアの環境問題に答えようとする好著。
B『消されたポットゥ』田中典子(農文協)
C『都市の顔・インドの旅』坂田貞二ほか編(春秋社)
D『アジア家庭料理入門シリーズ』(農文協)

●田辺寿夫(たなべ ひさお)放送ジャーナリスト
著書:『ビルマ民主化運動1988』、『アジアからみた大東亜 共栄圏』共編(以上、梨の木舎)ほか
@『新女性を生きよ』朴好椀緒(梨の木舎)朝鮮・韓国というと構えてしまうくせがあったが、この女性作家の生立ちと成長を綴った文章は素直に読めた。みずみずしく、たおやかな感性と表現がたまらない。
A『ベトナムもうひとつの旅』宮島安世(明石書店)ベトナムの友人との付き合いを通して自分の生き方を探 る姿勢に感銘を受けた。
B『写真図説 日本の侵略』アジア民衆法延準備会編(大月書店)
C『ビルマの少数民族』M.スミス著、高橋雄一郎訳(明石書店)
D『シャムの日本人写真館』松本逸也(めこん)

●津田邦宏(つだ くにひろ)朝日新聞記者
著書:『観光コースでない香港』(高文研)、『屋久杉が消えた谷』(朝日新聞社)
@『観光コースでない沖縄』新崎盛暉ほか(高文研)日本がアジアの中で生きていくには、沖縄の人たちの生き方、考え方が大きな手がかりだ。沖縄を知る格好の本。
A『チャンパ遺跡』重枝豊ほか(連合出版)アジアにはまだまだ十分に知られていない文化が埋もれているのではないか、という思いを新たにさせてくれる。
B『日本統治下台湾の「皇民化」教育』林景明(高文研)
C『サシとアジアと海世界』村井吉敬(コモンズ)
D『あじあブックスB三星堆』徐朝龍(大修館書店)

●中野謙二(なかの けんじ)東海大学教授
著書:『中国概論<新版>』(有斐閣)、『中国の社会構造』(大修館書店)ほか
@『雲嶺之華――中国雲南省の25少数民族素描』雲嶺之華刊行会編(新評論) カラー写真と文章で、中国雲南省に住む25少数民族の服飾や住居など、生活を紹介。異文化の共生を知るのにいい。
A『漢詩名句辞典』鎌田正・米山寅太郎(大修館書店) 和漢の代表的漢詩から1100余の名句を選び、出典・解説を加えている。座右の書として便利。
B『十五年戦争小史・新版』江口圭一(青木書店)
C『東アジアにおける中国のイメージと影響力』松本三郎・川本邦衛(大修館書店)
D『大陸の花嫁――満州に送られた女たち』陳野守正(梨の木舎)

●永山利和(ながやま としかず)日本大学教授
著書:『成長するアジアと日本産業』(大月書店)、『アジアの人びとを知る本』(大月書店)ほか
@『グロ−バル・フェミニズム――女性・環境・持続可能な開発』ロッシ・ブライドッチほか(青木書店)開発・環境問題と現代フェミニズムとを切り結び、持続可能な社会をめざして多角的に挑戦する
A『池袋のアジア系外国人』奥田道大・田島淳子編(明石書店)「外国化」する東京・池袋におけるアジア系外国人に関する実態調査を通じて、日本の国際化を精査する。
B『アジアの社会変動とジェンダー』田村慶子・篠崎正美編(明石書店)
C『「慰安婦」問題Q&A』アジア女性資料センター編(明石書店)
D『近現代史の真実は何か』藤原彰・森田俊男編(大月書店)

●春田実(はるた みのる)『恋するアジア』編集長
著書:『月曜日のこない日曜日のように』(クックハウス)
@『タイ娼婦館 イサーンの女たち』富岡悠時(現代書館)タイを「研究」したり「旅」した本はつまらない。この本はタイの娼婦に「淫し」ていて、10年前の発刊だが ジアブームの去った今、ますます輝きを増す名著である。
A『バンコク・自分探しのリング』吉川秀樹(めこん)この本に登場する5人は、今の日本ではバカかもしれない。しかし、いつだってバカが次の時代をつくる。シャープな本。
B『奇妙な時間が流れる島 サハリン』田中水絵(凱風社)
C『台湾先住民・山の女たちの「聖戦」』柳本通彦(現代書館)
D『タクラマカン縦断紀行』生島佳代子(連合出版)

●日比野宏(ひびの ひろし)写真家・紀行作家
著書:『夢街道アジア』(講談社文庫)、『グッドモーニング 路上動物 アジア旅游写真館』(凱風社)ほか
@『ベトナムのこころ』皆川一夫(めこん)ベトナムという不可思議な世界に入りこんだ著者が、不可解なベトナム人のこころを紐といていく。
A『江南の庭――中国文人の心をたずねて』中村蘇人(新評論)中国庭園鑑賞のポイントは、まず「作者=文人」のメッセージを読みとることだという。異色の庭園ガイドブック。
B『子乞い 沖縄孤島の歳月』森口豁(凱風社)
C『〈南〉から見た世界2 東南アジア・南アジア』姫田光義編(大月書店)
D『来て見てトルコ』小林けい(凱風社)

●姫田光義(ひめた みつよし)中央大学教授
著書:『中国革命史私論』(桜井書店)、『中国20世紀史』共著(東京大学出版会)ほか
@『中国の現代史』奥村哲(青木書店)今日ともすれば軽視されがちな中国社会主義の成り立ちと特徴を、平易に簡潔に記した好著。
A『上海うら門通り』前田利昭(青木書店)上海を訪れる日本人は多いが、意外と見逃されている裏町と人々の交流の風景を暖かい眼差しでみつめ、軽妙なタッチで描いていて、読み飽きない。
B『文玉珠 ビルマ戦線楯師団の「慰安婦」だった私』文玉珠(梨の木舎)
C『中国の世紀』ジョナサン・スペンス、アンピン・チン、姫田光義監修(大月書店)
D『南京事件と三光作戦』笠原十九司(大月書店)

●藤林泰(ふじばやし やすし)埼玉大学助手
著書:『日本人の暮らしのためだったODA』共編(コモンズ)、『ゆたかな森と海のくらし』共編(岩崎書店)ほか
@『地域漁業の社会と生態――海域東南アジアの漁民像を求めて』北窓時男(コモンズ)東南アジア、とりわけ海の世界とそこに生きる人びとのワクワクする姿に迫る必読の一冊。漁民たちへの温かな眼差しと軽快なフットワークに裏付けられた作品。
A『日本人の植民地体験』柳沢遊(青木書店)豊富な資料を駆使して大連に居留した日本人商工業者の 生活と経済活動を再構成することで、日本の植民地支配の持つ意味と、侵略の具体像を考察する。
B『<日本人>の境界』小熊英二(新曜社)
C『スハルト・ファミリーの蓄財』村井吉敬他(コモンズ)
D『大航海時代の東南アジア――1450年〜1680年 T貿易風の下で』アンソニー・リード(法政大学出版局)

●前田憲二(まえだ けんじ)映画監督
著書:『日本のまつり――どろんこ取材記』(造形社)、『東アジアの神と祭り』共著(雄山閣)ほか
@ 『アジアの聖と賤』野間宏・沖浦和光(人文書院)二人の巨人というか怪物が、知の限りを尽くし奔放に語り合った魔手と憂悶の世界。
A『カレイスキー・旧ソ連の高麗人』鄭棟柱著、高賛侑訳(東方出版)朝鮮人流民がロシアの謀略により、いかに苛酷な生活を強いられたか、この本によって教えられた。
B『百萬人の身世打鈴――朝鮮人強制連行・強制労働の「恨」』前田憲二ほか編(東方出版)
C『沖縄のハルモニ――大日本売春史』山谷哲夫編(晩聲社)
D『新版 韓国・朝鮮を知るための55章』井上秀雄・鄭早苗(明石書店)

●諸星清佳(もろほし さやか)ジャーナリスト
著書:『沈黙の国の記者』(すずさわ書店)、『ルポ中国』(晩聲社)、『中国革命の夢が潰えたとき』(中公新書)
@『台湾独立運動私記』宗像隆幸(文藝春秋)台湾人の大多数がなぜ中国との統一を望まないのか理解できる。蒋介石統治下で軟禁状態だった彭明敏教授を筆者が亡命させるくだりは、スパイ小説を読むかのごとくスリリング。
A『ベトナム報道1300日』古森義久(講談社文庫)本多勝一流ベトナムルポ(解放戦線=善、南ベトナム政府=悪)に騙された人たちに対する一服の解毒剤。南ベトナム民衆の本音は「政府の腐敗にはウンザリだが、共産政権はもっと嫌だ」にあったことを記している。
B『完全版 三光』中国帰還者連絡会(晩聲社)
C『香港狂騒曲』上村幸治(岩波書店)
D『中国社会主義を検証する』丸山昇(大月書店)

●吉田敏浩(よしだ としひろ)ジャーナリスト
著書:『森の回廊』(NHK出版)、『宇宙樹の森』(現代書館)、『北ビルマ、いのちの根をたずねて』(めこん)
@『カンボジア・僕の戦場日記』後藤勝(めこん)戦乱の渦中の事実と人々の受苦を、自らのおののきとともに見つめた写真と文は、いま歴史の証言となった。
A『サラワクの風』内田道雄(現代書館)森林伐採と油ヤシ農園の乱開発に向き合う狩猟採集民や焼畑民の、森に寄せる心と苦悩の真実を伝える。
B『香料諸島綺談』Y.B.マングンウィジャヤ著、舟知恵訳(めこん)
C『台湾先住民・山の女たちの「聖戦」』柳本通彦(現代書館)
D『ブラザー・エネミー』ナヤン・チャンダ著、友田錫・滝上広水訳(め
こん)

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■年度版「私の選んだアジアの本

【1999年度】私の選んだアジアの本

●阿辻哲次(あつじ てつじ)京都大学助教授
著書:『図説 漢字の歴史』、『中国漢字紀行』(ともに大修館書店)
@『東洋学の系譜』江上波夫編(大修館書店)あらゆる個人が本を読み、知識を吸収し、思索した結果が一つの学問体系にまでまとめあげられるプロセスを見事に描ききっている。
A『中国古典を読むために』頼惟勤述(大修館書店)
B『漢字民族の決断』橋本萬太郎編(大修館書店)
C『北京四天主堂物語』矢沢利彦(平河出版社)
D『道のアジア史』鶴見良行・村井吉敬(同文舘出版)

●新崎盛暉(あらさき もりてる) 沖縄大学教授
著書:『新版・沖縄反戦地主』(高文研)、『沖縄現代史』(岩波新書)、『沖縄同時代史』(凱風社、現在7集まで刊行)ほか
「アジアの本の会」のリストは、アジアという広大な地域に住む、多様な人々の息遣いから、この地域を覆うアメリカの世界戦略(さらには日米同盟)の黒い影までを伝える数多い本があることを改めて確認させられる。その中から、多少古くはなってもまだ読まれる価値を持っていると思われるものから、最新のものまで五点を挙げてみた。
@『さよなら再現』黄春明(めこん)
A『微熱の島 台湾』岸本葉子(凱風社)
B『駐韓米軍犯罪白書』徐勝監訳(青木書店)
C『情報公開法でとらえた在日米軍』梅林宏道(高文研)
D『ゆがむ世界 ゆらぐ地球』アースデイ日本(学陽書房)

●五十嵐勉(いがらし つとむ)作家・「アジアウェーブ」「アジア文学」編集長
著書:『流謫(るたく)の島』(講談社)、『微笑みの国 タイ』編著(アジア文化社
) @『宇宙樹の森』吉田敏浩(現代書館)北ビルマのカチン州の自然と人々の暮らしをつぶさに描きながら人間の生死を宇宙観にまで高めた気鋭の書。
A『メコンに死す』ピリヤ・パナースワン(めこん)ベトナム戦争に巻き込まれたラオスのモン族の悲劇を描く傑作長編小説。
B『タイの財閥』末廣昭(同文舘出版)
C『台湾・霧社に生きる』柳本通彦(現代書館)
D『暁を見ずに』S・ハヴェリャーナ(勁草書房)

●石山久男(いしやま ひさお)歴史教育者協議会事務局長
著書:『近現代史と教科書問題』(新興出版社)
@『知っておきたい中国@AB』歴史教育者協議会編(青木書店)前近代、近現代、香港・マカオ・台湾の3巻構成で、周辺地域にも目配りされており、中国についての基礎知識を得るのによい。
A『アジアの教科書に書かれた日本の戦争(東アジア編・東 南アジア編)』越田稜編(梨の木舎)アジアの子どもたちはどんな教科書で戦争の歴史を学んでいるのかを知るための基本資料として役立つ。
B『従軍慰安婦資料集』吉見義明編(大月書店)
C『新版 沖縄・反戦地主』新崎盛暉著(高文研)
D『大陸侵略は避け難い道だったのか』岩井忠熊著(かもがわ出版)

●伊藤伸平(いとう しんぺい)トラベルライター
著書:『マレー鉄道で朝食を』、『スチームボート シンガポール』、『旅大陸オーストラリア』(ともに凱風社)
@『人間の大地』プラムディヤ・アナンタ・トゥール/押川典昭訳(めこん)オランダ植民地支配下のインドネシアで、民族が覚醒し、そして確立していく戦いの様子を描いた名著。
A『シンガポール 近い昔の話 1942〜1945』シンガポール・ヘリテージ・ソサエティ編(凱風社)日本軍占領下のシンガポール「昭南島」。当時のシンガポール人の苦痛と屈辱の日々が衝撃的に綴られている。
B『アジア大道曼陀羅』アジアプレス・インターナショナル(現代書館)
C『残夜行』苗秀/福永平和・陳俊勲訳(めこん)
D『バハラナ フィリピン街道T マニラ編』日比野宏(凱風社) 

●内海愛子(うつみ あいこ)恵泉女学園大学教授
著書:『語られなかったアジアの戦後』編著(梨の木舎)、『講座 世界史8 戦争と民衆』共著(東大出版会)
@『からゆきさんと経済進出』平川均・清水洋(コモンズ)明治以降、日本人は東南アジアとどうかかわってきたのか。豊富な史料と緻密な実証に基づく研究書。先人の足跡を知るためにぜひ読んでほしい。
A『越境する民』杉原達(新幹社)大阪の朝鮮人史の研究を越境する文化交流論の視点でとらえようとする意欲的作品。杉原氏の著作は、私の鈍った頭をいつも刺激してくれる。
B『豊かなアジア 貧しい日本』中村尚司(学陽書房)
C『忘れられた人びと』シャ−リ−・F・ヒューイ著、伊吹由歌子ほか訳(梨の木舎)
D『戦時・性暴力をどう裁くか――国連マクドゥーガル報告書』VAWW−NET Japan編訳(凱風社)

●海原峻(うみはら しゅん)欧州問題研究所所長
著書:『ヨーロッパがみた日本・アジア・アフリカ』(梨の木舎)、『フランス人民戦線』(中公新書)
@『アジアの聖と賤』野間宏・沖浦和光(人文書院)「聖」と「賤」は、一つの社会の最も象徴的な部分を示す。著者はアジアのこうした問題を極めて多角的な角度からとらえた、数少ない存在である。
A『旅行ガイドにないアジアを歩く――韓国』君島和彦・坂井俊樹・鄭在貞(梨の木舎)韓国、朝鮮は我々にとって特別な存在である。日本列島の住民は朝鮮半島を通して大陸と向あってきたからだ。この本はその隠された部分を明らかにする。
B『客家見聞録』緒方修(現代書館)
C『朝鮮の西学史』姜在彦(明石書店)
D『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)

●小田切秀雄(おだぎり ひでお)文芸評論家
著書:『日本文学の百年』(東京新聞出版局)、『文学近見と遠見と』(集英社)
@『ヨーロッパがみた日本・アジア・アフリカ』海原峻(梨の木舎)私たちは、自分の負っている原罪の一つ植民地主義につい鈍感だが、この著者は知悉するフランスの歴史からそれを鋭く照らしだす.私には衝撃だった。
A『現代史に見る沖縄の自我像』岡本恵徳著(高文研)現在では、ひとり沖縄文学だけが日本文学中で美的にまた生活・社会への批評として生動している.全容を琉大の現代史学研究の中心だった岡本が語る。
B『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)
C『金日成神話の歴史的検証』姜在彦(明石書店)
D『観光コースでない沖縄』新崎盛暉(高文研)

●加藤敬(かとう たかし) 元毎日新聞社写真記者。フリージャーナリスト
著書:『万神』、『韓国の家具装飾』、『マンダラ群舞』(ともに平河出版社)ほか
@『キャンパスに見る異文化』真鍋祐子(平河出版社)韓国巫俗の研究者である著者はソウルの大学院に留学、その後二年間地方の大学で日本語教師として韓国で暮らしただけに、韓国人の気質や若者の素顔がムーダンの世界や学生との葛藤を通して良く見える
A『黄金の三角地帯』竹田遼(めこん)
B『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)
C『アジア大道曼陀羅』アジアプレス・インターナショナル(現代書館)
D『観光コースでない韓国』小林慶二(高文研)

●金文学(きん ぶんがく)作家・比較文化研究者
著書:『裸の三国志』(東方出版)、『日本文化の謎』(宇石出版)ほか
@『国際化時代の民族教育――子どもたちは虹の橋をかける』高賛侑(東方出版)民族教育の現場から、日本の在日外国人の民族教育政策の歪んだ姿を照明し、国際化の中で日本の民族教育制度を改革するための重要な報告書。
A『恨の人類学』崔吉城(平河出版社)はじめて韓国人の「恨文化」を明らかにした、韓国文化の原色と深層の理解に絶対欠かせない労作。
B『多文化主義と多文化教育』広田康生編(明石書店)
C『氷晶のマンチュリア』河内美穂(現代書館)
D『写真ルポ 中国の朝鮮族』山本將文(東方出版)

●佐竹眞明(さたけ まさあき)四国学院大学教授
著書:『フィリピンの地場産業ともう一つの発展論――鍛冶屋と魚醤』(明石書店)
@『フィリピン・インサイド・レポート』ローレン・レガルダ(めこん)現代フィリピンが見えてくる格好の報告書。女性である著者は元ジャーナリストで、現上院議員。
A『物語フィリピンの歴史』鈴木静夫(中公新書)民族主義史観に基づき、読みやすい。
B『ヤシの実のアジア学』鶴見良行・宮内泰介編(コモンズ)
C『新版・東南アジア研究入門』上智大学アジア文化研究所(めこん)
D『アジアの交差点−在日外国人と地域社会』会沢勲編(社会評論社)

●重枝豊(しげえだ ゆたか)日本大学理工学部助手(アジア建築史)
著書:『チャンパ遺跡』共著(連合出版)、『アンコール・ワットの魅力』(彰国社)ほか
@『タイ仏教入門』石井米雄(めこん)出版後にはじめて読んだときに較べて、ベトナムの仏教建築に興味を持って改めて読み直してみると、平易な言葉を使いながらの深い洞察力をしみじみと感じました。
A『緑色の野帖』桜井由躬雄(めこん)『ハノイの憂鬱』に続く、ベトナム研究者の研究調査にかかわるエッセイ。著者のアジアにかける熱く強い想い(片思い)がひしひしと感じられる。
B『おもしろアジア考古学』石澤良昭編(連合出版)
C『西欧が見たアンコール』グロリエ(連合出版)
D『ベトナム家庭科理入門』三浦行儀・大野尚子(農文協)

●中村尚司(なかむら ひさし)龍谷大学経済学部教授
著書:「共同体の経済構造」(新評論)、「地域自立の経済学」(日本評論社)、「人びとのアジア」(岩波書店)ほか
@『いのち・開発・NGO』D.ワーナー&D.サンダース/池住・若井監訳(新評論)民衆保健活動に長年携わる著訳者が、第三世界で子どもたちの健康を蝕んでいるグローバリゼーションにメスを入れ、「地域」の重みを伝えてくれる.子どものいのちを奪う今日のグローバル化社会を痛烈に批判する。
A『サシとアジアと海世界』村井吉敬(コモンズ)東南アジアの海辺を歩く村井吉敬と鶴見良行のまなざしは、西欧近代の所産である。市民社会や国民国家とまったく無縁な、漁村や農村の民衆の暮らしに向けられる。
B『バナナ』鶴見良行著作集 第6巻(みすず書房)
C『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)
D『生きる歓び』ヴァンダナ・シヴァ(築地書館) 

●野村進(のむら すすむ)ノンフィクション・ライター
著書:『アジア定住』(めこん)、『アジア 新しい物語』(文藝春秋)、『コリアン世界の旅』(講談社)ほか
@『バンコク・自分探しのリング』吉川秀樹(めこん)写真・文章とも新しい感性の登場を告げる好著.登場人物たちに現代日本の青春像が鮮やかに投影されている
A『台湾 近い昔の旅・台北編』又吉盛清(凱風社)これまでにあまりにも知られてこなかった、台湾と日本(とりわけ沖縄)との交流史が、明らかにされている
B『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)
C『日本定住コリアンの日常と生活』原尻英樹(明石書店)
D『入門東南アジア研究』上智大学アジア文化研究所編(めこん)

●広河隆一(ひろかわ りゅういち) 写真家・国際ジャーナリスト
著書:『パレスチナ』(岩波新書)、『戦火の4都市(写真集)』(第三書館)ほか
@『忘れられた人々』(第三書館)中国人写真家による、見事な人間ドキュメンタリー写真集。
A『裁かれた七三一部隊』(晩聲社)
B『インティファーダ・石の革命』(第三書館)
C『イスラエル・運命の刻』(第三書館)
D『光州80年5月』(すずさわ書房)

●藤野豊(ふじの ゆたか)日本近現代史研究者
著書:『日本ファシズムと医療』(岩波書店)、『日本ファシズムと優生思想』(かもがわ出版)ほか
@『黒部・底方(そこい)の声−黒三ダムと朝鮮人−』内田すえの・此川純子・堀江節子(桂書房)富山の朝鮮人強制連行を解明し、『富山県史』を根底から覆す労作。
A『旅行ガイドにないアジアを歩く 香港』和仁廉夫(梨の木舎)日本占領時代の香港の歴史を足で実証する快著
B『「同和」中毒都市 だれも書かなかった「部落」2』寺園敦史(かもがわ出版)
C『満州国−「民族協和」の実像−』塚瀬進(吉川弘文館)
D『満州に連れ出された女学生』浜田孝志(かもがわ出版)

●古田元夫(ふるた もとお)東京大学教授(ベトナム現代史)
著書:『歴史としてのベトナム戦争』、『ベトナム戦争の記録』(ともに大月書店)、『ベトナムの世界史』(東京大学出版会)ほか
@『フォトドキュメント 中国の世紀』ジョナサン・スペンス/アンピン・チン編(大月書店)全世界から収集した写真によって中国の20世紀を描いた本。釣りをする袁世凱の写真に妙に感動した。写真の歴史にとっての意味も考えさせられる。
A『国民国家を問う』歴史学研究会編(青木書店)狭い意味のアジアを対象とした本ではないが、アジア現代史の理解にも不可欠な国民国家をめぐる歴史的問題を検討した好著。
B『緑色の野帖』桜井由躬雄著(めこん)
C『第四世代工業化の政治経済学』佐藤元彦・平川均(新評論)
D『海を越えてくるアジアの人たち』岡部義秀(大月書店)

●前川健一(まえかわ けんいち)作家
著書:『まとわりつくタイの音楽』、『タイ・ベトナム枝葉末節旅行』(ともに、めこん)ほか
@『マンゴーが空から降ってくる』 水野潮(めこん)旅行者には分からないタイ農村の日常生活を、住人ではあるが外国人である著者が綴ったエッセー.味わい深く、あたたかい。
A『タイ日大辞典』冨田竹二郎編(めこん)空前絶後の大百科事典。日本にこの辞書があることは、日本人タイ語学習者の喜びであり、誇りである.ありがたい。
B『アジア厠考』大野盛雄・小島麗逸(勁草書房)
C『発展途上国の市場とくらし』鳥居高編(明石書店)
D『アジア・映画の都』松岡環(めこん)

●村井吉敬(むらい  よしのり)上智大学教授
著音:『サシとアジアと海世界』(コモンズ)、『インドネシア・スハルト以後』共著(岩波ブックレット)ほか 
@『NGOが変える南アジア』斎藤千宏(コモンズ)「アジアの元気」は東から南へ移っているようだ。インドはしたたかである。市民パワー、NGOパワーがすさまじい。それがにじみ出てくる本だ。
A『ヤシの実のアジア学』鶴見良行・宮内泰介編著(コモンズ)鶴見良行の最後の共同研究。最晩年の迫力が感じられる。鶴見が最後に行きついたココス島への道もわかる。題も装丁も優れた本である。   
B『フィリピンの地場産業ともう一つの発展論』佐竹眞明(明石書店)
C『足跡』プラムディア・アナンタ・トゥール著、押川典沼訳(めこん)
D『アジアの新しい物語』野村進(文藝春秋)  

●ロイチョウドゥーリ邦子(ろいちょうどぅーり くにこ)インド家庭科理研究家
著書:『インド家庭科理入門』(農文協)、『インド料理ダイエット・レシピ集』(スパイク)
@『インドの生命科学 アーユルヴェーダ』上馬場和夫・西川眞知子(農文協)アーユルヴェーダを日常生活に取り入れやすいように、生活術だけでなく、生命観、死生観に至る奥深い解説で、心身ともに癒される一冊。
A『観光コースでない沖縄』新崎盛暉(高文研)美しい観光地からは決して見ることのできない、歴史とさまざまな問題を抱える沖縄の素顔に迫る。写真から人々の叫びが聞こえてくるようだ。
B『ウパニシャッド』佐保田鶴治(平河出版社)
C『インド入門』辛島昇(東大出版会)
D『外国人は住民です』江橋祟(学陽書房)


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■年度版「私の選んだアジアの本

【1998年度】私の選んだアジアの本

●安斎育郎(あんざい いくろう)立命館大学国際平和ミュージアム館長
著書:『科学と非科学の間(はざま)』(かもがわ出版)、『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞社)
@『大陸侵略は避け難い道だったのか』岩井忠熊(かもがわ出版)「自由主義史観」の立場からの平和博物館攻撃がなされている今、近代史研究の成果を正確に踏まえた論議が不可欠だ。岩井氏の筋金が頼もしい。
A『茶の間で語りあう新ガイドライン』浅井基文(かもがわ出版)「安保は憲法をインポにする」と青年団員が言った。憲法の上にある安保条約をさらに自動参戦装置にまで高めるガイドライン。浅井氏の解説は小気味よい。
B『「自由主義史観」の病理」松島栄一・城丸章夫編(大月書店)
C『教科書から消せない戦争の真実――歴史を歪める藤岡信勝氏らへの批判』家永三郎監修(青木書店)
D『「慰安婦」問題Q&A』アジア女性資料センター(明石書店)

●伊藤千尋(いとう ちひろ)朝日新聞記者
著書:『観光コースでないベトナム』(高文研)、『太陽の汗、月の涙』(すずさわ書店)ほか
@『文玉珠 ビルマ戦線楯師団の「慰安婦」だった私」森川万智子(梨の木舎)韓国から遠くビルマまで転々とさせられた苦痛の聞き書き。
A『観光コースでないマレーシア・シンガポール』陸培春(高文研)日本通のジャーナリストが祖国の現場を再三踏んで著した力作
B『地雷リポート』神保哲生(築地書館)
C『観光コースでないフィリピン』大野俊(高文研)
D『観光コースでない韓国』小林慶二(高文研)

●上杉聴(うえすぎ さとし)日本の戦争責任資料センター事務局長
著書:『脱ゴーマニズム宣言』(東方出版)、『天皇制と部落差別』(三一書房)ほか
@『従軍慰安婦資料集』吉見義明(大月書店)慰安婦問題を根本から自分の頭と目で考察してみたいと考えるならばここから始まりここに返ってくる。これを超えるものは当分出ません
A『私は「慰安婦」ではない』戦争犠牲者を心に刻む会(東方出版)「慰安婦」問題の理解はやはり被害者の声に耳を傾けるところから。
B『十五年戦争史・新版』江口圭一(青木書店)
C『「従軍慰安婦」をめぐる30のウソと真実』吉見義明・川田文子(大月書店)
D『War Victimization and Japan』国際公聴会実行委員会(東方出版)

●岡田明憲(おかだ あきのり)和光大学講師(アジア文化論)
著書:『ゾロアスター教――神々への賛歌』『ゾロアスター教の悪魔払い』(平河出版社)、『ゾロアスターの神秘思想』(講談社現代新書)ほか
@『境界・祭祀空間』井本英一(平河出版社)現代の南方熊楠と称せられる博覧強記の著者が、ユーラシアの民俗を独自の視点で解説する。アジア的文化の普遍性に目を開かせてくれる好著。
A『雲南・カイラス……四〇〇〇キロ』鎌澤久也(平河出版社)近年ブームのチベットも、こんなコースで訪ねたら、また新しい発見があることを教えられた。写真も文も一味ちがう。
B『旋盤ひとつでアジアが見える』森清(学陽書房)
C『インドのジェンダー・カースト・階級』J・リドル、R・ジョーン(明石書店)
D『イスラム社会のヤクザ』佐藤次高(第三書館)

●金子民雄(かねこ たみお)中央アジア史研究家
著書:『ヘディン伝』(中公文庫)、『アフガンの光と影』(北宋社)ほか
@『おもしろアジア考古学』石澤良昭編(連合出版)東南アジアの遺跡の数少ない探訪書。続刊が望まれる。
A『チャンパ遺跡』重枝豊ほか(連合出版)謎の王国チャンパと海のシルクロードの夢を再現してくれる得難い入門書。
B『三峡ダム』戴晴編(築地書館)
C『将軍と新聞』ウー・タウン(新評論)
D『アジアの奥地へ 上・下』N・レーリヒ(連合出版)

●神谷丹路(かみや にじ)日韓近代史探索家
著書:『韓国 近い昔の旅』、『韓国の小さな村で』(ともに凱風社)ほか
@『東京の中の朝鮮』在日朝鮮人生徒の教育を考える会(明石書店)内なる韓国・朝鮮を「発見」することから相互理解ははじまる。休日に家族づれで散策できるコース案内もついている好ガイド書。
A『シンガポール 近い昔の旅』越田稜・新田準訳(凱風社)つとめて冷静に語られるシンガポールで繰り広げられた日本軍の残虐行為.。3年8カ月間の淡路島ほどの小島に残された傷の深さに戦慄する。
B『旅行ガイドにないアジアを歩く:韓国』君島和彦ほか(梨の木舎)
C『台湾 近い昔の旅<台北編>』又吉盛清(凱風社)
D『ジュニア版・写真でみる日本の侵略』アジア民衆法廷準備会・編(大月書店)

●河部利夫(かわべ としお)東京外国語大学名誉教授(異文化研究方法論・東南アジア研究)
著書:『タイのこころ』、『タイ国理解のキーワード』(ともに勁草書房)
@『ベトナムのこころ』皆川一夫(めこん)異文化社会のベトナムを生き生きと描述し、案内書としてみごとに成功している
A『尖閣列島 釣魚諸島の史的理解』井上清(第三書館)戦後の領土問題として北方四島(対ロシア)、竹島(対韓国)とともに考えさせられる。
B『メコン河開発』松本悟(築地書館)
C『辺境学ノート』鶴見良行(めこん)
D『北東アジア経済圏の形成』本多健吉(新評論)

●きどのりこ 児童文学作家・評論家
著書:『子どもの本から「戦争とアジア」がみえる』(梨の木舎)、『ハンネリおじさん』(日本基督教団出版局)ほか
@『アジアの教科書に書かれた日本の戦争』(東アジア編・東南アジア編)越田稜編著(梨の木舎)アジア各国・諸地域の教科書に日本の戦争がこれほど鮮烈に詳しく描かれていたとは! 訳文と解説、教育事情や日本との比較も含めた労作。
A『日本が消したパプアニューギニアの森』清水靖子(明石書店)パプアニューギニアの豊かな森を日本企業がどんどん伐採していく。その構造の鋭い告発とともに、森と人びとの暮らしへの愛を感じさせる本。
B『文玉珠・ビルマ戦線楯師団の慰安婦だった私』森川万智子(梨の木舎)
C『ジュニア版・写真でみる日本の侵略』アジア民衆法廷準備会・編(大月書店)
D『世界の子どもの本から「核と戦争」がみえる』長谷川潮・きどのりこ編著(梨の木舎)

●君島和彦(きみじま かずひこ)東京学芸大学教授(東アジア近代史)
著書:『教科書の思想』(すずさわ書店)、『朝鮮・韓国は日本の教科書にどう書かれているか』(梨の木舎)ほか
@『歴史の偽造をただす』中塚明(高文研)日本軍が日清戦争開戦時に最初に行った朝鮮王宮占領事件を明らかにしたものだが、その事実が日本政府による「歴史の偽造」によってまったく嘘の「作り話」に変えられ伝えられたことを明らかにした意味は重い。
A『韓国・朝鮮と近現代史教育』坂井俊樹(大月書店)アジアの人々との共生・共存のあり方を、著者の幅広い問題関心を基礎に、いろいろな具体例を取り上げて提示しており、極めて示唆に富んでいる。
B『韓国から見た日本の歴史教育』李元淳(青木書店)
C『韓国の歴史――国定韓国高等学校歴史教科書』曹昌淳・宋蓮玉訳(明石書店)
D『光州80年5月――つかの間の春の虐殺』猪狩章(すずさわ書店)

●小松光一(こまつ こういち)茨城大学非常勤講師(環境社会学)
著書:『進化に向かう日本農業』(家の光協会)、『おもしろ農民への招待状』(農文協)、『いのちの風 農のこころ』(学陽書房)ほか
@『フィリピン国ボントク村』大崎正治(農文協)WTO体制下(自由貿易体制)に入ったとたん、アジアの国々の経済社会が崩壊しているとき、この本を読んでいい。
A『カルティニの風景』土屋健治(めこん)静かな語りくちのまっとうな女性の人生について、私は、バリの「マンダラ・バンガロー」で読んだ。
B『タマネギ畑で涙して』山下惣一(農文協)
C『豊かなアジア・貧しい日本』中村尚司(学陽書房)
D『ベトナムの世界史』古田元夫(東京大学出版会)

●斎藤千宏(さいとう ちひろ)日本福祉大学助教授・シャプラニール代表
著書:『NGOが変える南アジア 経済成長から社会発展へ』コモンズ、『NGO大国インド』明石書店ほか
@『人類・開発・NGO』片岡幸彦・編(新評論)匡際NGOの開発協力実践家と日本の宗教学・農村社会学・政治経済学等の研究者が「脱開発」の思想をキーワードに発展の在りようを考える、いま最も必要な議論。
A『インド家庭料理人門』ロイ・チョウドリー、ジョイ邦子(農文協)「スパイスの多量使用がエスニック」という誤解に気づかされる、まずは一品覚えて。
B『日本は環境に優しいのか』諏訪雄三(新評論)
C『メコン河開発』松本悟(築地書館)
D『新来・定住外国人がわかる事典』駒井洋・編(明石書店)

●斉藤弘子(さいとう ひろこ)ノンフィクション・ライター
著書:『Q&A外国人との恋愛・結婚・生活ガイド』(明石書店)、『私が決める死の迎え方』(保健同人社)ほか
@『多文化主義と多文化教育』駒井洋・監修、広田康生・編(明石書店)『講座・外国人定住問題』全4巻の1冊.多エスニック国家への道を歩みつつある日本社会の今後は……新しい時代のあり方を考える視点を提供してくれる。
A『観光コースでない沖縄』大城将保・高嶺朝一ほか(高文研)歴史・基地・文化……さまざまな面から沖縄の素顔を伝える。企画が生まれた背景を述べた「あとがき」も見逃せない本文の一部になっている。
B『多文化共生をめざす地域づくり』沼尾実・編(明石書店)
C『ガラスの番人 韓国女性作家短編集』朴花城ほか(凱風社)
D『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)

●神保哲生(じんぼう てつお)ビデオジャーナリスト
著書:『地雷リポート』(築地書館)、『ビデオジャーナリストの挑戦』(ほんの木)
@『[争論]東京裁判とは何だったのか』五十嵐武士・北岡伸一(築地書館)蒼々たる覿ぶれの研究者・論客達が、イデオロギーの壁を越えて多様な意見を戦わせる、比類なき良書である。
A『三峡ダム』戴晴(築地書館)著者が身の危険を冒してまで明らかにした三峡ダムの大罪をあますところなく明らかにする。日本のダム行政にも通じるところは多い。
B『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)
C『情報公開法でとらえた沖縄の米軍』梅林宏道(高文研)
D『メコン河開発』松本悟(築地書館)

●末廣昭(すえひろ あきら)東京大学教授(タイ経済社会史・アジア工業化論)
著書:『タイの財閥』(同文舘出版)、『タイ 開発と民主主義』(岩波新書)
@『太平洋戦争とアジア外交』波多野澄雄(東京大学出版会)今またアジアとの関係が問われている。太平洋戦争に先立つ日本の対アジア認識や、理念と実態の乖離を示す歴史書。
A『東南アジアの危機の構造(新版)』鈴木佑二(勁草書房)東南アジアの政治危機に関する論稿。発表は20年前であるが、年中間層、民主化など今の経済危機を考えるうえでも示唆に富む本。
B『ジャワの音風景』風間純子(めこん)
C『近代アジアの日本人経済団体』波形昭一(同文舘出版)
D『ASEAN』山影進(東京大学出版会)

●諏訪勝(すわ まさる)ルポライター
著書:『破壊 ニッポンODA40年のツメ跡』(青木書店)、『これでいいのか、ODA!』(三「書房)ほか
@『三峡ダム 建設の是非をめぐっての論争』載晴ほか(築地書館)“世紀の愚挙”三峡ダム建設が進行中。だがアジア通貨危機の影響は必至。
A『アジアの新工業化と日本』中村雅秀(青木書店)開発すなわち資本主義の発展という“普遍状況”のアジア浸食の構造解明。
B『開発の政治経済学』絵所秀紀(日本評論社)
C『アジアの経済発展と政府の役割』長谷川啓之(文真堂)
D『現代中国の経済』小島麗逸(岩波書店)

●高嶋伸欣(たかしま のぶよし)琉球大学教授
著書:『教科書はこう書き直された』(講談社)、『教育勅語と学校教育』(岩波書店)
@『自由主義史観の病理 続・近現代史の真実は何か』松島栄一ほか編著(大月書店)明治以後の日本近現代史を明るく誇りをもてるものとして描こうとする自由主義史観が、アジア侵略の歴史的事実を歪曲し、逆に誇りを奪っていることを明確に指摘。
A『観光コースでないマレーシア・シンガポール』陸陪春(高文研)祖父を日本軍に殺害された経験がありながら日本に留学し、日本で家族を得ている著者が日本人の良心を信じて出版した日本軍告発の書。読みやすい。
B『従軍慰安婦をめぐる30のウソと真実』吉見義明はか編著(大月書店)
C『日本の近代化と戦争責任=わだつみ学徒兵と大学の戦争責任を問う』安川寿之輔(明石書店)

●辻元清美(つじもと きよみ)衆議院議員
著者:『清美するで――ピースボートとアジア』『転職して国会議員になった』(ともに第三書館)
@『忘れられた人々――中国精神病人的生存状況』馬小虎(第三書館)もうひとつのアジアの最深部をのぞく写真集。
A『エビの向こうにアジアが見える』鶴見良行(学陽書房)
B『越南世界』土井九郎(第三書館)
C『海が見えるアジア』門田修(めこん)
D『ゴミと宝石』上田敏博(第三書館)

●寺田勇文(てらだ たけふみ)上智大学アジア文化研究所教授
著書『アジア読本 フィリピン』(河出書房新社)ほか
@『入門東南アジア研究』上智大学アジア文化研究所編(めこん)東南アジアについて「いろは」から勉強してみようという人に最適の入門書。みんながかくれて読んでいるベストセラーです。
A『道のアジア史』鶴見良行・村井吉敬編(同文舘出版)真珠、スパイス、エビ、巡礼者、出稼ぎ労働者たちのたどる道を通して、アジアの昔と現在を考える好著。
B『現代フィリピンの政治と社会』D.ワーフェル(明石書店)
C『ナガ族の闘いの物語(アジアの現代文学14)』レンドラ(めこん)
D『緑色の野帖〜東南アジアの歴史を歩く』桜井由躬雄(めこん)

●吉田敏浩(よしだ としひろ)ジャーナリスト
著書:『森の回廊』(NHK出版)、『宇宙樹の森』(現代書館)ほか
@『黄金の三角地帯』竹川遼(めこん)ビルマの民族問題とシャン州の辺境に生き、闘う人びとの真実を日本で初めて記録した記念碑的作品。
A『台湾・霧社に生きる』柳本通彦(現代書館)かつて高砂族と呼ばれた台湾原住民族の人びとと日本の植民地支配にまつわる歴史を掘り起こし、愛惜に満ちた目で人間の尊厳とは何かを問う。
B『東北タイの子』カムプン・ブンタヴィー(勁草書房)
C『難民キャンプのパントマイム』矢野和貴(めこん)
D『アジア大道曼荼羅』アジアプレス・インタナショナル(現代書館

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■年度版「私の選んだアジアの本

【1997年度私の選んだアジアの本

●足立倫行(あだち りんこう)ノンフィクション・ライター
著書:『アジア海道紀行』(文春文庫)、『日本海のイカ』(情報センター出版局)ほか。
@『人間の大地 上・下』プラムディヤ・アナンタトゥール(めこん)インドネシア人の民族的覚醒を描いた壮大なスケールの歴史小説。面白い。
A『コモンズの海』鶴見良行・中村尚司編著(学陽書房)東南アジア世界を知るためには、海の果たしている役割を理解しなければならない。この本はそのための良書。
B『さよなら・再見』黄春明(めこん)
C『民衆 上下』F・ショニール・ホセ(めこん)
D『在日朝鮮人 歴史・現状・展望』朴全鳴編(明石書店)

●井川一久(いかわ かずひさ)元朝日新聞編集委員
著書:『カンボジア黙示録』(田畑書店)、『カンボジアの戦慄』(朝日新聞社)ほか
@『べトナムの世界史』古田元夫(東京大学出版会)ベトナムを「正しく」理解するための数少ない人門書の一つ。
A『アジア・美の様式』オフィス・ド・リーブル編(連合出版)文化は様式である。それを豊富な図版で示した「目で見るアジア文化」
B『メコン]石井米雄・横山良一(めこん)国際河川の持つ複雑な問題や東南アジアの現況を知るのに大いに役立つ。
C『タイ家庭料理人門』安武律(農文協)魚醤油ナンプラーを基本調味料とする庶民料理を通じて学ぶタイの生活文化。
5『熱帯雨林の動物たち』安間繁樹(築地書館)「世界一の木食い虫」日本人にとって、この生態系の危機は他人事ではすまされぬ。

●笠原十九司(かさはら とくし)宇都宮大学教授(東アジア近現代史)
著書:『アジアの中の日本軍』(大月書店)、『南京難民区の百日』(岩波書店)ほか
@『南京大虐殺を記録した皇軍兵士たち』小野賢二ほか編(大月書店)「南京大虐殺の嘘」へ痛撃を与えた日本軍将兵の陣中日記に見る虐殺加害の内面記録。
A『教科書の思想――日本と韓国の近現代史』君島和彦(すずさわ書店)
B『家永・教科書裁判 南京大虐殺・朝鮮人民の抵抗・731部隊』教科書検定訴訟を支援する全国連絡会編(民衆社)
C『講座世界史8 戦争と民衆――第ニ次世界大戦』歴史学研究会編(東京大学出版会)
D『黒船と日清戟争――歴史認識をめぐる対話』比較史・比較歴史教育研究会編(未来社)

●岸本葉子(きしもと ようこ)エッセイスト
著書:『よい旅を、アジア』(講談社文庫)、『夕方、ハルビン駅で』(NTT出版)
@『台湾 近い昔の旅]又吉盛清(凱風社)急速に変わる台湾に植民地時代の史跡をたどる。ノスタルジーを超えて過去と向き合う旅のための好ガイド。
A『越南世界』土井九郎(第三書館)寡黙だが力強く語りかけるベトナムの風景をとらえた写真集。ひと目見たら誰もがかの国のとりこになる?
B『タイ人たち』ラーオ・カムホーム(めこん)
C『サラワク 精霊の森』A・リンクレー夕ー(凱風社)
D『中国年鑑』中国研究所(新評論)

●蔵前仁一(くらまえ じんいち)「旅行人」編集長
著書:『ゴーゴー・アジア』(凱風社)、『インドは今日も雨だった』(世界文化社)、『沈没日記』(旅行人)ほか
@『海が見えるアジア』門田修(めこん)アジアの海域を全て網羅した力作。海と海の暮らしからアジア像が生き生きと見えてくる。
A『タイ・べトナム枝葉末節紀行』(めこん)旅先で疑問に思った枝葉末節なことを細かく調べて明らかにしてくれる痛快蘊蓄本。著者得意のスタイルで話はベトナムへ。
B『スチームボート・シンガポール』伊藤伸平(凱風社)
C『人間の大地』プラムディヤ・アナンタトゥール
D『カンボジアはどうなっているのか?」本多勝一(すずさわ書店)

●末廣昭(すえひろ あきら)東京大学教授(タイ社会経済史、アジア工業化論)
著書:『タイの財閥』(同文舘出版)、『タイ 開発と民主主義』(岩波書店)ほか
@『メコン』石井米雄・横山良一(めこん)歴史学者と写真家が協力して作り上げた歴史紀行文。
A『カルティニの風景』土屋健治(めこん)日本の東南アジア研究、地域研究に新しい地平を拓く。
B『タイの財閥――ファミリービジネスと経営改革』末廣昭ほか(同文舘出版)
C『フィリピン民衆の歴史 TUV』レナート・コンスタンティーノほか(勁草書房)
D『アジアから考える5 近代化像』溝口雄三(東京大学出版会)

●関本照夫(せきもと てるお)東京大学教授(文化人類学、インドネシア研究)
著書:『国民文化が生まれる時』(リブロポート)ほか。
@『人間の大地』プラムディヤ・アナンタトゥール(めこん)20世紀文学の傑作
A『カルティニの風景』土屋健治(めこん)アジアの近代化を日常の情景から活写。
B『創氏改名』宮田節子ほか(明石書店)
C『フィリピン革命とカトリシズム』池端雪浦(勁草書房)
D『旋盤ひとつでアジアが見える』森清(学陽書房)

●西野瑠美子(にしの るみこ)ルポライター
著書:『従軍慰安婦と15年戟争』(明石書店)、『薬害エイズを生きる』(明石書店)ほか
@『教科書の思想――日本と韓国の近現代史』君島和彦(すずさわ書店)日韓歴史教科書研究会に参加し、両国の歴史教科書を体系的に検討してきた著者の緻密な研究と検討は、教科書論争に貴重な視点を与えてくれる。
A『細菌戦部隊』七三一研究会編(晩聲社)七三一部隊をはじめ細菌戦部隊の隊員だった人々が、重い口を開いた。50年の沈黙を破り語った真実、語り継ぎたい歴史の一つである。
B『「慰安婦」問題Q&A』アジア女性資料センター編(明石書店)中学の歴史教科書から「従軍慰安婦」の記述を削除せよと主張する人々の事実認識の誤りと曲解を、女性の視点から実に明快に反論している。
C『シンガポール 近い昔の話』シンガポール・ヘリティジ・ソサエティ編(凱風社)「昭南島」時代、日本軍はシンガポールで何をしたのか、日本軍占領下を生きたシンガポールの人々が語るその事実こそ日本人の記憶に残したい歴史である。
D『文玉珠 ビルマ戦線楯師団の「慰安婦」だった私』森川万智子(梨の木舎)「従軍慰安婦」にされた韓国女性文玉珠さんがかたる記憶を丹念に聞き取り、その実態と実像をみごとに描き出している。

●日比野宏(ひびの ひろし)カメラマン/ライター
著書:『快!潔アジアひとり旅』(新評論)、『フィリピン街道/V』(凱風社)、『アジア亜細亜/U』(講談社文庫)ほか
@『タイのチャイナマン――かき混ぜてドリンアン色の夢』友田博(新評論)私自身タイには何度も行き、かなりのタイ通になったつもりだったが、この本に教えられるところは多かった。
A『微熱の島 台湾』岸本葉子(凱風社)台湾の人々、風物にそそがれる著者のまなざしの確かさに感動。
B『将軍と新聞――ビルマ長期軍事政権に抗して』ネ・タウン(新評論)新聞にはほとんど登場しないネ・ウィン将軍が、なぜいまも恐怖政治の中心にいるかがよく分かる。

●福島瑞穂(ふくしま みずほ)弁護士
著書:『若い女性の法律ガイド』(有斐闇)、『楽しくやろう夫婦別姓』(明石書店)、『ラブ・チャイルド』(亜紀書房)ほか
@『従軍慰安婦資料集』吉見義明(大月書店)資料集なので全部読む必要はないが、一つひとつの資料が逆に従軍慰安婦問題とは何かを問いかけてくる。
A『証言――強制連行された朝鮮人軍慰安婦たち』韓国挺身隊問題対策協議会(明石書店)一人ひとりの人生の重みを感じる本。なぜ告発したのかが伝わってくる。
B『たみちゃんと南の人びと』神奈川県渉外部国際交流課(明石書店)
C『エビの向こうにアジアが見える』村井吉敬・鶴見良行(学陽書房)
D『花嫁を焼かないで』謝秀麗(明石書店)

●前川健一(まえかわ けんいち)フリー・ライター
著書:『タイ・べトナム枝葉末節紀行』(めこん)、『バンコクの好奇心』(めこん)ほか
@『海が見えるアジア』門田修(めこん)アジアの海で生きる人々を描いた名文。
A『回想のタイ 回想の生涯』ブラヤー・アヌマーン・ラーチャトン(勁草書房)タイ雑学の宝庫。学術的よた話集。
B『アジア・映画の都』松岡環(めこん)
C『フィリピン家庭科理入門』原田瑠美(農文協)
D『森の食べ方』内堀基光(東京大学出版会)

●松井やより(まつい やより)アジア女性資料センター代表、元朝日新聞編集委員
著書:『女たちのアジア』(岩波新書)、『アジアの観光開発と日本』(新幹杜)、『アジアに生きる子どもたち』(労働旬報杜)ほか
@『アジアの民主化と女たち』伊従直子(明石書店)アジアの民主化を考える時、忘れてならないのは女性の視点。
A『女性の人権 アジア法廷』「女性の人権」委員会(明石書店)人身売買、慰安婦、基地売春の被害者たちの痛みを力にする証言に心うたれる。
B『アジアを食べる日本のネコ』上智大学世界食糧デーグルーブ(梨の木舎)
C『生きる歓び』ヴァンダナ・シヴァ(築地書館)
D『語りはじめたタイの人びと』サニッスダー・エーカチャイ(明石書店)

●村井吉敬(むらい よしのり)上智大学教授(東南アジア社会経済論)
著書:『エビと日本人』(岩波新書)、『検証 日本のODA』(学陽書房)
@『人間の大地 上・下』プラムディヤ・アナンタトゥール(めこん)雄大なスケールで描く東南アジア屈指の歴史大河小説。
A『文化・開発・NGO――ルーツなくしては人も花も生きられない』ティエリ・ヴュルヘルスト(新詳論)本当の国際協力は文化の理解なくしてはできないことを説く好著である。
B『コモンズの海』鶴見良行・中村尚司編著(学陽書房)
C『朝鮮人BC級戦犯の記録』内海愛子(勁草書房)
D『華僑虐殺――目本軍支配下のマレー半島』林博史(すずさわ書店)

●門田修(もんでん おさむ)フォト・ジャーナリスト
著書:『海が見えるアジア』(めこん)、『新装版 漂海民』(河出書房新社)ほか
@『道のアジア史』鶴見良行ほか(同文舘出版)海の道の歴史は冒険談のようで、事実のもつおもしろさがある。
A『香料諸島綺談』マングンウィジャヤ(めこん)西洋の横暴と自民族の愚かさを語る、強烈な歴史小説。
B『アジアから考える2 地域システム』溝口雄三編(東京大学出版会)
C『フカヒレも空を飛ぶ』鈴木隆史(梨の木舎)
D『国家のなかの民族』綾部恒雄編(明石書店)

●吉田裕(よしだ ゆたか)一橋大学教授(日本近現代史)
著書:『昭和天皇の終戦史』(岩波書店)、『日本人の戦争観』(岩波書店)ほか
@『東京裁判ハンドブック』ハンドブック編集委員会編(青木書店)東京裁判の全体像を多面的に解明した好著。
A『共同研究 日本軍慰安婦』吉見義明編(大月書店)
B『生きて再び逢ふ日のありや』高崎隆治(梨の木舎)
C『聞き書きフィリピン占領』上田敏明(勁草書房)

D『日本文学報国会』櫻本吉雄(青木書店)

●陸培春(ル・ペイチュン)シンガポール『聯合早報』コラムニスト
著書:『観光コースでないマレーシア・シンガポール』(高文研)、『豊かで貧困なニッポン人へ』(梨の木舎)
@『アジアから日本を見つめて』黄彬華(高文研)「戦後」50年は終わったけど、平和と未来のために、もっと戦争による被害状況とアジアのココロを知ってほしい。
A『観光コースでない韓国』小林慶二(高文研)
B『観光コースでないベトナム』伊藤千尋(高文研)


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