【2000年度】私の選んだアジアの本
●池住義憲(いけずみ
よしのり)国際民衆保健協議会(IPHC)日本連絡事務所代表
著書:『バナナから人権へ』(同文舘出版)、『いのち・開発・NGO』監訳(新評論)ほか
@『地球村の行方』片岡幸彦編(新評論)グローバル化がもたらしている地域社会の課題を学際的に解明。各地域の具体的取組みも示唆に富んでいる
A『NGO大国インド』斎藤千宏編(明石書店)とくに第2章から5章に記されている女性のエンパワーメントに関する部分が具体的。一読を。
B『人類・開発・NGO』片岡幸彦編(新評論)
C『戦時・性暴力をどう裁くか』VAWW‐NET
JAPAN編訳(凱風社)
D『フェア・トレード』M.B.バラット(新評論)
●石澤良昭(いしざわ よしあき)上智大学教授
著書:『アンコール・ワット』講談社、『東南アジアの伝統と発展』(中央公論社)ほか
@『福岡アジア文化賞の人々』福岡アジア文化賞委員会編(連合出版)1990年に福岡市が創設した文化賞を受賞した三十余氏が語る体験的アジア文化論。そこには、21世紀に向けた指針が示されている
A『西欧が見たアンコール』B・P・グロリエ著(連合出版)アンコール・ワットで知られるアンコール朝の崩壊(15世紀半ば)後に来航した西欧人がアンコールの驚異と不思議を語り、王朝の繁栄と没落の謎に迫る名著。
B『サシとアジアと海世界』村井吉敬(コモンズ)
C『チャンパ』桃木至朗ほか(めこん)
D『時間の旅・空間の旅』加藤剛(めこん)
●井上礼子(いのうえ
れいこ)アジア太平洋資料センター共同代表
著書:『IMFがやってきた アジアの経済危機と人々のオルタナティブ』共著(アジア太平洋資料センター発行)
@『スハルト・ファミリーの蓄財』村井吉敬他(コモンズ)スハルトの腐敗ぶりは知ってはいても改めて唖然となる。日本の政治家や商社も登場。スハルトの蓄財過程がそのままインドネシアと日本の歴史と重なるところが恐ろしい。
A『コモンズの海』中村尚司・鶴見良行編(学陽書房)サバ、スリランカ、タイ東部、九州。互いに出会ったこともない人々が海を介してひとつの世界を織り成す。たくましく生きる女たちの姿が描かれていることが嬉しい。
B『文化・開発・NGO』T・ヴェルヘルスト(新評論)
C『ビートルズを知らなかった紅衛兵』唐亜明(岩波書店)
D『日本人の暮らしのためだったODA』福家洋介・藤林 泰編(コモンズ)
●鎌澤久也(かまざわ
きゅうや)日本写真家協会会員
著書:『雲南』『藍の里』『南詔往郷』『雲南・カイラス…4000 キロ』(以上、平河出版社)ほか
@『風景のない国・チャンパ王国』樋口英夫(平河出版社)インドシナ半島南東部に、2世紀末に建てられたチャンパ王国が、遺跡として多く残っている。その遺跡とからめ、チャンパの末裔たちが散り散りになって生活する現在にスポットをあて、精力的に取材したもの。アンコールに隠れたチャンパの歴史が見えてくる。
A『メコン』石井米雄(めこん)
B『知られざる祈り
中国の民族問題』加々美光行(新評論)
C『片思いのシャッター』松村久美(現代書館)
D『ベトナム熱射病』瀬尾里枝(連合出版)
●川合宣雄(かわい のりお)旅好家
著書:『ほんとはコワーイ海外旅行』『中国超級旅游術』(第三書館)、『中南米ひとり旅』(連合出版)ほか
@『モンゴル悠游旅行術』川合宣雄(第三書館)広大なモンゴルをひとり旅、現地の若者と仲良くなって 家に泊めてもらったり、星降る草原で野宿したり、アルヒをしこたま飲んで歌ったりのエピソードのなかに、モンゴルを旅行するために必要な情報がきっちりと入っている。
A『ゴーゴー・アジア』蔵前仁一(凱風社)
B『アジア自転車の旅』渋谷義人(連合出版)
C『アジア民俗写真叢書14ミャンマー憧憬』(平河出版社)
D『バンコク・自分探しのリング』吉川秀樹(めこん)
●金京子(きむ
きょんじゃ)甲南大学非常勤講師
著書:『南坡朴賛翊伝記』共著(乙酉文化社)、『ナヌムの家のハルモニたち』共訳(人文書院)ほか
@『ナショナリズムと「慰安婦」問題』日本の戦争責任資 料センター編(青木書店)日本の戦争責任センター主催のシンポジウムの議論をまとめた本。「慰安婦」問題の解決のための「日本人の責任」を問いかける。
A『日本の文化
韓国の習俗――比較文化論』金両基(明石書店)韓国の文化や韓国人の習慣などを日本の文化と比較しながらわかりやすく、明瞭に分析した一冊。思わず膝を打つ。興味津々。
B『在日朝鮮人
第2版――歴史・現状・展望』朴鐘鳴編 (明石書店)
C『韓国の風水思想』崔昌祚(人文書院)
D『韓国
近い昔の旅――植民地をたどる』神谷丹路(凱風社)
●駒井洋(こまい
ひろし)筑波大学教授
著書:『日本の外国人移民』、『日本のエスニック社会』『自治体の外国人政策』共著、(以上、明石書店)ほか
@『語りはじめたタイの人びと』サニッスダー・エーカチャイ(明石書店)発展のもたらした陰の部分を、地方の底辺から照射する。人間の希望を象徴するポートレートがすばらしい。
A『タイ・インサイドレポート』プラウィット・ロチャナプルック(めこん)バブル崩壊後も含むタイ社会の状況を全体的に理解できる格好の書物。とくに首都の描写がなまなましい。
B『フィリピン女性エンターテイナーの世界』M・R・P.バレスカス著(明石書店)
C『夢破れる国日本』唐濤・高橋健・佐藤美穂子編訳著(農文協)
D『ポル・ポト伝』デービッド・P・チャンドラー著(めこん)
●佐藤光康(さとう
みつやす)高等学校・専門学校講師
著書:『韓国の心を知る旅』『尾崎豊を聞きながら』(ともにかもがわ出版)ほか
@『ものがたり朝鮮の歴史』池明観(明石書店)副題に「現在と過去との対話」とあるが、単なる通史ではない。著者の母国に対する深い洞察が貫かれている。
A『日本は危機か』ヨハン・ガルトゥング/安斎育郎(かもがわ出版)著者二人の知のぶつかりあいから、閉塞した時代を打ち破る多くの示唆を得ることができる。
B『南京事件と三光作戦』笠原十九司(大月書店)
C『教室から「自由主義史観」を批判する』藤野豊編(かもがわ出版)
D『君たちは戦争で死ねるか』大日方純夫ほか(大月書店)
●田中雅一(たなか
まさかず)京都大学助教授
編著:『暴力の文化人類学』(京都大学学術出版会)、『女神』(平凡社)ほか
@『アジアにおける宗教の再生』田辺繁治編(京都大学学術出版会)宗教を無視して現代アジア社会を語れない。1970年以後の経済発展と民主化運動の広がりを契機とするアジア社会の変化における宗教の役割をテーマとする注目の論文集。
A『アジアの環境・文明・人間』山折哲雄編(法藏館)国連大学のプログラムとして実施された環境観に関する国際共同研究の成果。比較文明論の視点からアジアの環境問題に答えようとする好著。
B『消されたポットゥ』田中典子(農文協)
C『都市の顔・インドの旅』坂田貞二ほか編(春秋社)
D『アジア家庭料理入門シリーズ』(農文協)
●田辺寿夫(たなべ ひさお)放送ジャーナリスト
著書:『ビルマ民主化運動1988』、『アジアからみた大東亜 共栄圏』共編(以上、梨の木舎)ほか
@『新女性を生きよ』朴好椀緒(梨の木舎)朝鮮・韓国というと構えてしまうくせがあったが、この女性作家の生立ちと成長を綴った文章は素直に読めた。みずみずしく、たおやかな感性と表現がたまらない。
A『ベトナムもうひとつの旅』宮島安世(明石書店)ベトナムの友人との付き合いを通して自分の生き方を探 る姿勢に感銘を受けた。
B『写真図説 日本の侵略』アジア民衆法延準備会編(大月書店)
C『ビルマの少数民族』M.スミス著、高橋雄一郎訳(明石書店)
D『シャムの日本人写真館』松本逸也(めこん)
●津田邦宏(つだ
くにひろ)朝日新聞記者
著書:『観光コースでない香港』(高文研)、『屋久杉が消えた谷』(朝日新聞社)
@『観光コースでない沖縄』新崎盛暉ほか(高文研)日本がアジアの中で生きていくには、沖縄の人たちの生き方、考え方が大きな手がかりだ。沖縄を知る格好の本。
A『チャンパ遺跡』重枝豊ほか(連合出版)アジアにはまだまだ十分に知られていない文化が埋もれているのではないか、という思いを新たにさせてくれる。
B『日本統治下台湾の「皇民化」教育』林景明(高文研)
C『サシとアジアと海世界』村井吉敬(コモンズ)
D『あじあブックスB三星堆』徐朝龍(大修館書店)
●中野謙二(なかの
けんじ)東海大学教授
著書:『中国概論<新版>』(有斐閣)、『中国の社会構造』(大修館書店)ほか
@『雲嶺之華――中国雲南省の25少数民族素描』雲嶺之華刊行会編(新評論)
カラー写真と文章で、中国雲南省に住む25少数民族の服飾や住居など、生活を紹介。異文化の共生を知るのにいい。
A『漢詩名句辞典』鎌田正・米山寅太郎(大修館書店)
和漢の代表的漢詩から1100余の名句を選び、出典・解説を加えている。座右の書として便利。
B『十五年戦争小史・新版』江口圭一(青木書店)
C『東アジアにおける中国のイメージと影響力』松本三郎・川本邦衛(大修館書店)
D『大陸の花嫁――満州に送られた女たち』陳野守正(梨の木舎)
●永山利和(ながやま
としかず)日本大学教授
著書:『成長するアジアと日本産業』(大月書店)、『アジアの人びとを知る本』(大月書店)ほか
@『グロ−バル・フェミニズム――女性・環境・持続可能な開発』ロッシ・ブライドッチほか(青木書店)開発・環境問題と現代フェミニズムとを切り結び、持続可能な社会をめざして多角的に挑戦する
A『池袋のアジア系外国人』奥田道大・田島淳子編(明石書店)「外国化」する東京・池袋におけるアジア系外国人に関する実態調査を通じて、日本の国際化を精査する。
B『アジアの社会変動とジェンダー』田村慶子・篠崎正美編(明石書店)
C『「慰安婦」問題Q&A』アジア女性資料センター編(明石書店)
D『近現代史の真実は何か』藤原彰・森田俊男編(大月書店)
●春田実(はるた みのる)『恋するアジア』編集長
著書:『月曜日のこない日曜日のように』(クックハウス)
@『タイ娼婦館
イサーンの女たち』富岡悠時(現代書館)タイを「研究」したり「旅」した本はつまらない。この本はタイの娼婦に「淫し」ていて、10年前の発刊だが ジアブームの去った今、ますます輝きを増す名著である。
A『バンコク・自分探しのリング』吉川秀樹(めこん)この本に登場する5人は、今の日本ではバカかもしれない。しかし、いつだってバカが次の時代をつくる。シャープな本。
B『奇妙な時間が流れる島
サハリン』田中水絵(凱風社)
C『台湾先住民・山の女たちの「聖戦」』柳本通彦(現代書館)
D『タクラマカン縦断紀行』生島佳代子(連合出版)
●日比野宏(ひびの
ひろし)写真家・紀行作家
著書:『夢街道アジア』(講談社文庫)、『グッドモーニング 路上動物 アジア旅游写真館』(凱風社)ほか
@『ベトナムのこころ』皆川一夫(めこん)ベトナムという不可思議な世界に入りこんだ著者が、不可解なベトナム人のこころを紐といていく。
A『江南の庭――中国文人の心をたずねて』中村蘇人(新評論)中国庭園鑑賞のポイントは、まず「作者=文人」のメッセージを読みとることだという。異色の庭園ガイドブック。
B『子乞い
沖縄孤島の歳月』森口豁(凱風社)
C『〈南〉から見た世界2 東南アジア・南アジア』姫田光義編(大月書店)
D『来て見てトルコ』小林けい(凱風社)
●姫田光義(ひめた みつよし)中央大学教授
著書:『中国革命史私論』(桜井書店)、『中国20世紀史』共著(東京大学出版会)ほか
@『中国の現代史』奥村哲(青木書店)今日ともすれば軽視されがちな中国社会主義の成り立ちと特徴を、平易に簡潔に記した好著。
A『上海うら門通り』前田利昭(青木書店)上海を訪れる日本人は多いが、意外と見逃されている裏町と人々の交流の風景を暖かい眼差しでみつめ、軽妙なタッチで描いていて、読み飽きない。
B『文玉珠 ビルマ戦線楯師団の「慰安婦」だった私』文玉珠(梨の木舎)
C『中国の世紀』ジョナサン・スペンス、アンピン・チン、姫田光義監修(大月書店)
D『南京事件と三光作戦』笠原十九司(大月書店)
●藤林泰(ふじばやし
やすし)埼玉大学助手
著書:『日本人の暮らしのためだったODA』共編(コモンズ)、『ゆたかな森と海のくらし』共編(岩崎書店)ほか
@『地域漁業の社会と生態――海域東南アジアの漁民像を求めて』北窓時男(コモンズ)東南アジア、とりわけ海の世界とそこに生きる人びとのワクワクする姿に迫る必読の一冊。漁民たちへの温かな眼差しと軽快なフットワークに裏付けられた作品。
A『日本人の植民地体験』柳沢遊(青木書店)豊富な資料を駆使して大連に居留した日本人商工業者の 生活と経済活動を再構成することで、日本の植民地支配の持つ意味と、侵略の具体像を考察する。
B『<日本人>の境界』小熊英二(新曜社)
C『スハルト・ファミリーの蓄財』村井吉敬他(コモンズ)
D『大航海時代の東南アジア――1450年〜1680年 T貿易風の下で』アンソニー・リード(法政大学出版局)
●前田憲二(まえだ けんじ)映画監督
著書:『日本のまつり――どろんこ取材記』(造形社)、『東アジアの神と祭り』共著(雄山閣)ほか
@
『アジアの聖と賤』野間宏・沖浦和光(人文書院)二人の巨人というか怪物が、知の限りを尽くし奔放に語り合った魔手と憂悶の世界。
A『カレイスキー・旧ソ連の高麗人』鄭棟柱著、高賛侑訳(東方出版)朝鮮人流民がロシアの謀略により、いかに苛酷な生活を強いられたか、この本によって教えられた。
B『百萬人の身世打鈴――朝鮮人強制連行・強制労働の「恨」』前田憲二ほか編(東方出版)
C『沖縄のハルモニ――大日本売春史』山谷哲夫編(晩聲社)
D『新版
韓国・朝鮮を知るための55章』井上秀雄・鄭早苗(明石書店)
●諸星清佳(もろほし
さやか)ジャーナリスト
著書:『沈黙の国の記者』(すずさわ書店)、『ルポ中国』(晩聲社)、『中国革命の夢が潰えたとき』(中公新書)
@『台湾独立運動私記』宗像隆幸(文藝春秋)台湾人の大多数がなぜ中国との統一を望まないのか理解できる。蒋介石統治下で軟禁状態だった彭明敏教授を筆者が亡命させるくだりは、スパイ小説を読むかのごとくスリリング。
A『ベトナム報道1300日』古森義久(講談社文庫)本多勝一流ベトナムルポ(解放戦線=善、南ベトナム政府=悪)に騙された人たちに対する一服の解毒剤。南ベトナム民衆の本音は「政府の腐敗にはウンザリだが、共産政権はもっと嫌だ」にあったことを記している。
B『完全版
三光』中国帰還者連絡会(晩聲社)
C『香港狂騒曲』上村幸治(岩波書店)
D『中国社会主義を検証する』丸山昇(大月書店)
●吉田敏浩(よしだ
としひろ)ジャーナリスト
著書:『森の回廊』(NHK出版)、『宇宙樹の森』(現代書館)、『北ビルマ、いのちの根をたずねて』(めこん)
@『カンボジア・僕の戦場日記』後藤勝(めこん)戦乱の渦中の事実と人々の受苦を、自らのおののきとともに見つめた写真と文は、いま歴史の証言となった。
A『サラワクの風』内田道雄(現代書館)森林伐採と油ヤシ農園の乱開発に向き合う狩猟採集民や焼畑民の、森に寄せる心と苦悩の真実を伝える。
B『香料諸島綺談』Y.B.マングンウィジャヤ著、舟知恵訳(めこん)
C『台湾先住民・山の女たちの「聖戦」』柳本通彦(現代書館)
D『ブラザー・エネミー』ナヤン・チャンダ著、友田錫・滝上広水訳(めこん)
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